住宅ローン保証トップの全国保証(7164)、成長はいつまで続くのか?

 住宅ローン保証事業を展開している全国保証。昔は住宅ローンを組むには連帯保証人が必要だったものの、最近では住宅ローンの保証会社を活用するのが一般的だ。そのトップを走っているのが全国保証。全国の金融機関と提携し、住宅ローン契約時に全国保証の保証をつけることが多い。日本の住宅ローン残高は約170兆円。全国保証は約10%弱の13.5兆円を保証している。売上、営業利益ともに安定的に成長しているが、この成長はいつまで続くのか?

■基本情報(2020年7月17日時点)

  • 株価:3,980円
  • 時価総額:2,741億円
  • 予想PER:10.7倍
  • PBR:1.88倍
  • 予想配当利回り:2.78%
  • 自己資本比率:38.9%
  • 会計基準:日本基準

■全国保証の業績は?

 全国保証の2020年3月期の売上高は452億円(前年比+4.6%)、営業利益は354億円(前年比+3.4%)と増収増益。営業利益率はなんと78%。従業員数は約250名のため、一人当たり1億円を超える営業利益を稼いでいる計算だ。2020年3月末時点で手元の現預金は1,200億円を超えている。

■全国保証のビジネスモデル!事業内容は?

 全国保証は具体的にどのようなビジネスをしているのだろうか?たとえば、マンションや戸建てのマイホームを購入したい人は銀行に住宅ローンの申請をして契約をするのが一般的だ。そのとき、銀行は貸し倒れリスクを負担したくないため、昔は連帯保証人をつけていた。ところが、時代の変化があり、連帯保証人ではなく全国保証のような保証会社をつけるように変化してきた。全国保証は住宅ローンの契約時に住宅ローン保証をあわせて契約してもらい、保証料を徴収するというビジネスモデルを築いている。

 銀行は住宅ローンの貸し倒れリスクをさけるために、保証会社による住宅ローン保証をつけることが一般的になっている。ただし、住宅金融支援機構(フラット35)、住信SBIネット銀行、新生銀行、ソニー銀行、イオン銀行などは住宅ローン保証をつけずに自社で貸し倒れリスクを負担している金融機関もある(住宅ローン金利や手数料に実質、含まれていると考えることもできる)。

■全国保証の住宅ローンの貸し倒れ状況は?

 全国保証における保証実行(住宅ローンが払えずに保証するケース)はどのくらいあるのか?2020年3月期をみると、保証の実行にあたる代位弁済金額は約120億円。そのうち、住宅(住宅ローンの担保物件)を売却して回収した金額が85億円あったため、実質的な貸倒損失は△35億円ほどだ。全国保証の保証残高は13.5兆円あるため、約0.1%ほどの120億円ほどが代位弁済の対象になっている。だいたい1,000人に一人の割合で住宅ローンの返済ができなくなるという計算になるのか?

■全国保証の今後の行方は?

 アベノミクス以降は都心を中心に住宅価格は値上がり傾向。金融緩和による超低金利で住宅ローン金利も低下し、マイホーム需要の高まりにより住宅ローン残高が増え続ける傾向がつづいてきた。そのなかで発生したコロナショック。全国保証にとって心配されるのは、新型コロナウイルスの影響により住宅ローンを返せない人が増えること、また、住宅価格の高騰により1契約あたりのローン残高は増えているため、貸し倒れが急増すると金額的な影響は大きくなる。もっとも心配されるケースは、貸し倒れが増える中で、担保になっている住宅の相場が下落していくこと。

 全国保証の財務諸表(B/S)には顧客からの長期前受金(住宅ローン保証料)1,680億円が計上されているものの、将来の貸倒による引当金はあくまで現時点での見通しの△75億円のみ織り込まれている。経済状況の変化により、財務諸表に織り込まれていない△75億円を超える保証リスクが急増することには注意が必要だ。

■全国保証の株価推移は?

 全国保証の株価は堅調だ。予想PERや配当利回りをみても過熱感はまったくない。「住宅ローンを組んだら全国保証の住宅ローン保証をつけなければならない」というビジネスモデルを構築しているため、強固なビジネス基盤となっている。現在の時価総額は2,700億円。売上高の成長率が1ケタのため、成長企業として評価されるのはむずかしいが、安定企業の代表の1社だ。

以 上

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