電気自動車に必須のリチウムイオン二次電池の中核部材であるセパレータの開発、生産、販売をしているダブル・スコープ(W-SCOPE、以下、ダブルスコープ)。セパレータ事業はハンガリー工場を建設中で2025年稼働予定だ。現在は北米工場の進出も検討している。もうひとつ、イオン交換膜事業も検討しており、電池材料や水フィルターの用途で使用可能。
大幅減益のダブル・スコープ、電気自動車のテーマ性の剥落が株価下落の要因か?(2024年3月17日投稿)
■基本情報(2024年6月14日時点)
- 株価:571円(10年来高値:3,675円)
- 時価総額:315億円
- 予想PER:62.7倍
- PBR:0.56倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:30.0%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:30,672人(2024年1月31日時点)
- 事業価値:1,450億円
■ダブルスコープの業績は?
ダブルスコープの2025年1月期の第一四半期の売上高は144億円(前年比+25.6%増)、営業利益は5.5億円(前年同期は12.6億円)と増収減益となった。ダブルスコープの売上総利益率は+8.9%(前年は+15.8%)、営業利益率は+3.8%(+10.9%)と悪化している。
ダブルスコープの売上総利益は前年の18.2億円→12.8億円と△5.4億円の悪化、販管費は前年の5.6億円→7.3億円と+1.7億円の増加となり、合計すると営業利益は△7.1億円の悪化となった。
営業利益の悪化の要因をみると、原材料費の増加、人件費の増加など複合要因であるものの、実態がよくわからない。売上高は計画以上に伸びているものの、粗利がぜんぜん向上していない。
■ダブルスコープの財務状況は?
ダブルスコープの2024年4月30日時点の財務諸表をみると、現預金は44億円、在庫が110億円、有形固定資産が1,497億円(そのうち、建設仮勘定が936億円)となっている。負債をみると、有利子負債は456億円となっている。ダブルスコープの現状をみると、ハンガリー工場がうまく立ち上がり、利益をしっかり稼いでくれるかにかかっている。
■ダブルスコープの株価推移は?
ダブルスコープの時価総額は約300億円。しかしながら、財務諸表をよく読むと、非支配株主持分が約730億円計上されており、韓国に上場している子会社のWSKが大きく影響していると考えられる。ダブルスコープとWSKは一体で事業をしており、連結ベースで決算をしている。
関係としては、以前のパソナグループとベネフィット・ワンの関係と同じ。上場子会社のほうが時価総額が大きい。WSKが実態のビジネスをしており、稼いだ利益を韓国の株主で分配する構造になる。そうなると、ダブルスコープは実態としては単なる持ち株会社という位置づけだ。WSKの株式をもっているだけの会社というもの。このような持ち株会社は、WSKの株価が上昇するかどうか次第で時価総額が動くだけと実態は言えるのではないだろうか。
以 上