大幅減益のダブル・スコープ、電気自動車のテーマ性の剥落が株価下落の要因か?

 電気自動車に必須のリチウムイオン二次電池の中核部材であるセパレータの開発、生産、販売をしているダブル・スコープ(W-SCOPE、以下、ダブルスコープ)。2024年3月14日に2023年度の決算を発表し、増収減益となった。2024年度も厳しい業績見通しを開示したため、翌営業日はストップ安となった。期待される電気自動車(EV)のリチウムイオン電池の材料メーカーであり、今後の業績をどう考えればよいのだろうか?

電気自動車(EV)関連のダブル・スコープ、リチウムイオン電池のセパレータ開発!(2023年8月18日投稿)

■基本情報(2024年3月15日時点)

  • 株価:578円(10年来高値:3,675円)
  • 時価総額:319億円
  • 予想PER:63.5倍
  • PBR:0.59倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:31.3%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:34,134人(2022年12月31日時点)

■ダブルスコープの業績は?

 ダブルスコープの2024年1月期の売上高は480億円(前年比+6.5%増)、営業利益38.7億円(前年比△50.6%減)の増収減益となった。ダブルスコープの売上総利益率は+13.2%(前年は+21.9%)、営業利益率は+8.0%(前年は+17.4%)。

 ダブルスコープの売上総利益は前年の99億円→63億円と△36億円の減少、販管費は前年の20億円→25億円と+5億円となり、営業利益は約41億円の悪化となった。設備投資の負担が重く、減価償却費が大きく増えていることが売上総利益の減少の要因と思われる。

■損益をどう見るか?

 ダブルスコープの損益は前年比で大きく悪化しているのは事実。しかしながら、サムスン向けの売上高が9割を超えており、特殊なビジネスモデルと言えるだろう。サムスンのリチウムイオン二次電池にダブルスコープのセパレータが組み込まれており、それを必死に生産している状況だ。

 ダブルスコープは償却費負担が大きいため、営業利益とEBITDA(営業利益+償却費)で損益を見る必要がある。営業利益率は+8.0%(昨年は+17.4%)と大きく悪化しているものの、EBITDAは+23.9%(前年は+33.1%)と比較的高い水準になっている。おそらく、償却期間は5年くらいと想定すると、ゆくゆく売上規模が維持されるのであれば利益が大きく出てくる。

■巨額の設備投資!

 ダブルスコープの2023年度の設備投資額は505億円(前年は282億円)と大きく増えている。自社の売上高以上に積極的に投資をしている。現在は韓国とハンガリーに大きく投資をしている。ハンガリーには900億円を投資している。このハンガリー工場が稼働すると、業績は一気に上昇していくのではないだろうか。

 なお、ダブルスコープの2023年度の地域別売上高は、ハンガリーが259億円(前年は126億円)、韓国が134億円(前年は88億円)、中国28億円(前年は66億円)となっている。ハンガリーに大きく投資している一方で、中国が苦戦している。

■ダブルスコープの財務状況は?

 ダブルスコープの2024年1月末時点の財務諸表をみると、現預金は120億円、棚卸資産は117億円、有形固定資産は1,298億円。負債は、有利子負債が約340億円と大きい。財務的には、かなり積極投資しており、負債が大きいことが分かる。なお、ハンガリー工場向けの設備投資資金として、約600億円を段階的に調達する予定だ。

 心配なのは、設備資金目的で増資をすること。世界中で金利水準があがっており、増資による資金調達を検討するのは一般的だ。なお、支払利息が年間32億円発生することを想定している。

■ダブルスコープの株価推移は?

 ダブルスコープの時価総額は約320億円。株価はかなり下落したものの、コロナ時の暴落水準にはまだ達していない。電気自動車の需要は間違いなく増えるので、2024年度はハンガリーの新しいラインが立ち上がるまでは、それほど良いニュースは飛び込んでこないかもしれない。

 ダブルスコープは株主数が3万人を超える会社。おそらく、EV特需を期待した株主が数多く保有しているものの、含み損で苦しんでいることが予想できる。粘り強く待つことが重要かもしれない。

(画像1)ダブルスコープの株価推移

以 上

 

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする