印刷プラットフォームの「ラクスル」をはじめ、広告の「ノバセル」、物流の「ハコベル」を展開しているラクスル(RakSul)。テレビCMが印象的な成長企業だ。ラクスルで気になるのはクラウドIT企業(フリー、マネーフォワード、ラクス、Sansan等)やヘルスケアIT企業(エムスリー、メドピア、ケアネット等)と異なり、売上高総利益率30%未満とそれほど高くない点だ。売上高は順調に拡大しても利益率の低い事業モデルになってしまう可能性が高い。今後のラクスルの業績と株価はどうなるのか?
印刷、広告、物流のプラットフォーム構築のラクスル(4384)、今後の業績と株価の行方は?(2020年12月12日投稿)
■基本情報(2021年3月12日時点)
- 株価:4,490円(10年来高値:5,550円)
- 時価総額:1,281億円
- 予想PER:未定
- PBR:17.41倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:35.4%
- 会計基準:日本基準
■ラクスルの業績は?
ラクスルの2021年7月期の第二四半期の売上高は134億円(前年同期比+19.8%増)、営業利益は2.1億円(前年同期は△2.6億円の赤字)と増収黒字転換となった。ラクスルの売上総利益率は+24.4%(前年同期は+21.7%)となっている。ラクスルの決算説明資料は基本的にnon-GAAPという会社独自の指標で営業利益が記載されている。日本基準とラクスルのnon-GAAPとの差異は株式報酬費用の取り扱いの違いだ。
■ラクスルで重要な売上総利益率は?
ラクスルで注目している指標は売上総利益率だ。ラクスルはECとプラットフォームをあわせた新しいビジネスをしているものの、売上総利益率が低い。印刷の「ラクスル」事業は+27.1%、広告の「ノバセル」は+16.5%、物流の「ハコベル」は+14.2%となっており、全社で+23.7%となっている。ラクスルとして、売上総利益と営業利益との間の販管費を考慮すると、営業利益率が+20%を超えることは、現状のままでは難しいことが容易に予想できる。
■ラクスルの売上総利益率推移は?
ラクスルの売上総利益率は25%前後で推移している。売上規模は堅調に推移しているものの、グロース企業として株式市場で評価されるには収益性の改善が求められる。「ラクスル」よりも利益率の低い、「ノバセル」と「ハコベル」の売上高比率が増えてくると、ラクスル全体の売上総利益率を引き下げる方向になる。どのような対策が打てるのか?
■ラクスルの株価推移は?
ラクスルの時価総額は約1,300億円。現在の収益性から考えると、過大評価されている。将来的な成長を織り込んだ株価であるものの、期待が過大に織り込まれている可能性があり個人投資家は注意が必要だ。ラクスルは2020年9月にホームページ作成サービスのペライチに出資、2020年11月にダンボールワンの49%を取得した結果、関係会社株式が約34億円増加している。ペライチについては、ホームページ無料作成サービスのBASEと事業内容は重複する点が気になる。
2021年2月には大株主だったデジタルホールディングスが約283万株(約125億円)の持分を海外投資家に譲渡しており、これからの株式の需給悪化に注意が必要だ。ラクスルにかぎらず、米ドルの長期金利上昇は日米金利差の拡大により、円から米ドルに資金が流れ、結果として円安方向に動く可能性が高い。円安になると、海外投資家にとっては資産の目減りとなるため相応の対応が起こるリスクに注意が必要だ。
以 上