クラウドサービスへのシングルサインオン提供のHENNGE(へんげ)、月次解約率は0.16%!

 Microsoft365やGoogle Workspace、奉行クラウド(会計ソフト)などのクラウドサービスのシングルサインオン(ID管理サービス)を提供するHENNGE(へんげ)。主力のサービスはHENNGE Oneで月次解約率はたった0.16%のサブスクリプション型のサービスを提供している。HENNGE Oneは1ユーザあたり月額400円~750円でサービスを提供しており、約65%の市場シェアをもっている。いま注目されているクラウドサービスの行方と今後の株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2020年12月29日時点)

  • 株価:8,180円
  • 時価総額:1,309億円
  • 予想PER:678.2倍
  • PBR:71.86倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:43.0%
  • 会計基準:日本基準

■HENNGEの業績は?

 HENNGEの2020年9月期の売上高は41.5億円(前年比+21.2%増)、営業利益は5.4億円(前年比+187.7%増)と増収増益となった。次の2021年9月期は増収を計画しているものの、成長投資のため営業利益は3.1億円(2020年9月期は5.4億円)と減収を計画している。

 HENNGEはフリーやマネーフォワード、ラクス、Sansanなどと同様のクラウドサービスのため、高い売上総利益率が特徴だ。HENNGEの売上総利益率は82%前後となっており、売上高を伸ばすことで爆発的に営業利益が増えるビジネス構造となっている。現在の予想PERは600倍を超えており、数年後の高い成長性を株価が織り込んだ形になっている。

 ただし、現在の株式市場は世界的な金融緩和の影響で、企業のファンダメンタルズや成長性を単純に考えて株価が付いているのではなく、テーマとなっている銘柄群については高値でも買われつづける傾向があるので、どこかで急落が起こるリスクがあるので注意が必要だ。

■HENNGEのビジネスは?

 HENNGEはどのようなビジネスを行っているのだろうか?HENNGEは企業の従業員が使用するパソコンなどの端末のアクセス権をコントロールするシングルサインオンというサービスを提供している。HENNGE Oneというサービスで、このクラウドサービスを入れることで、アクセス権やインターネット上でのダウンロード、ID管理、セキュリティ管理などを行うことができる。企業が従業員のパソコンなどの端末をまとめて管理するための機能を提供している。よって、個人のユーザにはそれほど身近なサービスではないかもしれない。

■HENNGEの売上総利益、高い利益率!

 HENNGEは売上総利益を重視している。ほかのクラウドサービスと同様に、顧客が増えても売上原価がほとんど変わらないため、いかに売上高を増やし、売上総利益額を稼ぐかが重要な経営ポイントになっている。

■HENNGEの営業費用の中身は?

 HENNGEの売上原価はたった17.7%と低い。売上総利益額で販売管理費をカバーしているため、会計クラウドサービスのフリーやマネーフォワードと異なり営業黒字を維持している。HENNGEで心配されるのは、目指す市場規模がどのくらいあるのか見えない点だ。現在、HENNGE Oneは1,667社で使用されており、契約ユーザ数は194.8万人となっている。

 仮に契約ユーザ数がいまの5倍にあたる1,000万人になった場合、売上総利益額は約170億円となる。HENNGEの販売管理費が現在の2倍の約60億円(現在は29億円)の伸びで抑えた場合、営業利益は110億円(営業利益率53%)と試算できる。予想PERを20倍と考えると、時価総額は約2,000億円となる。現在の時価総額が約1,300億円のため、この成長ストーリー(かなり順調な成長)をみて、いまの株価を割安か割高かどう判断するかにつきる。

■順調に増える契約ユーザ数!

 HENNGEの売上高のうち、約87%はHENNGE Oneが占めている。HENNGE Oneの契約企業数と契約ユーザ数は右肩あがりで増えている。契約企業数は1,667社、契約ユーザ数は195万人まで到達している。約2年間で400社増加、ユーザ数は50万人増えている。さまざまなクラウドサービスが企業のなかで使用され、従業員のIDや権限を管理したい企業はまだまだ増えてくるはず。使用しているパソコンなどのセキュリティ更新や指定ソフトの一括導入などニーズは高い。

■とにかく解約率が低い!

 HENNGE Oneの月次解約率は0.16%と低い。会計ソフトなどシステム関係については、いったん導入すると、なかなか他社の製品に切り替えがしにくい。HENNGE Oneはトップシェアを持っており、これが大きな参入障壁になる。ここがクラウドサービス企業の株価が高く評価されている点でもある。

■HENNGEの株価推移と今後の行方は?

 HENNGEにかぎらず、クラウドサービスを提供している企業の株価は右肩あがりがつづいている。フリー、マネーフォワード、ラクス、Sansan、サイボウズなど時価総額は1,000億円以上となり、高い成長期待が株価に織り込まれている。現在の業績を考えると「割高」であるものの、世界的な金融緩和の影響で通貨の価値が下落し、世界的な株高につながっている。なかでもIT関連企業への資金流入が著しい。

 日本でもクラウドサービス活用の方向性は当面、変わることはないものの、株価がどこで天井をつけるかはわからない。HENNGEの成長性と収益力をみると、いまの業績では時価総額700億円でも高くみえる。ただし、バブル相場のなかでは時価総額2,000億円~2,500億円をつける可能性はあるものの、ここから株価が半値になるリスクがあることを忘れてはならない。

(画像7)HENNGEの株価推移

以 上

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