物流サービスの関通(KANTSU)、2024年問題と株価の行方は?

 物流サービスと物流オペレーションのサービスを提供している関通(KANTSU)。1986年4月設立、従業員数は2023年2月時点で882名。東証グロースに上場している。関西、関東を中心に物流センターを構築しており、総床面積は約67,200坪。たんなるトラック輸送サービスだけでなく、冷凍冷蔵配送センター、倉庫管理システムなど幅広く、倉庫ではロボットとの共存として物流ロボットを積極的に活用している。

■基本情報(2023年9月29日時点)

  • 株価:724円(10年来高値:1,583円)
  • 時価総額:75億円
  • 予想PER:18.7倍
  • PBR:2.4倍
  • 予想配当利回り:1.38%
  • 自己資本比率:32.7%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:3,656人(2023年2月末時点)

■関通の業績は?

 関通の2024年2月期の第一四半期の売上高は27.8億円(前年比+7.9%増)、営業利益は60百万円(前年比△54.4%減)の増収減益となった。関通の売上総利益率は+12.2%(前年は+14.3%)、営業利益率は+2.1%(前年は+5.1%)と悪化傾向となっている。

 今期の利益悪化の要因は新物流センターのフリーレント期間(契約後、数カ月間は賃借料が無料という契約期間)が終了し、家賃負担増が減益要因、としている。言い換えると、物流センター増による効果が刈り取れておらず、固定費増の売上高の値上げが適切にできていないと言えるだろう。

■関通の事業内容は?

 関通の事業は物流サービス事業が約95%を占めている。しかしながら、利益面で見ると、残りの5%のITオートメーションというSaaS利用料などが稼いでおり、物流サービス事業の低収益が目立つ。

 関通の物流サービス事業の基本は、物流のアウトソーシング。メーカーや商社などの物流作業をアウトソーシングで請け負うことで稼ぐビジネスモデル。自社で物流センター(東西で20か所)を持ち、トラック配送を実施する。なお、関通は関西のほうが物流センターの規模は大きい。Eコマースや通販などにも対応する、細かい物流サービスが特徴だ。

 取り扱っている商材は、美容・化粧品、アパレル、印刷物、日用品・雑貨、冷蔵・冷凍食品、家具など幅広い。

 2023年11月に関西新物流センター(兵庫県尼崎市)にオープン、2024年12月に関東新物流センター(埼玉県所沢市)にオープンする予定だ。

■物流の2024年問題への対応は?

 物流業界には2024年問題が叫ばれている。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働は960時間(月平均80時間)が上限規制となる。つまり、輸送能力が確実に減り、モノが運べなくなる可能性がある。

 そもそも、物流業界は人手不足となっており、すでにギリギリの人手で事業をしている。求人はたくさんあるものの、進んで物流業界で働きたい人が少ない状況だ。

 これから起こることは、トラックドライバーの賃金の上昇(人手を確保するために)、そのために配送料の値上げ、が確実に起こるだろう。また、生産性向上のため、物流ロボットへの投資などは確実に進んでいくだろう。関通にとっては、業績を大きく改善するチャンスである。

■関通の財務諸表は?

 関通の2023年5月31日時点の財務諸表をみると、現預金は22.8億円、有形固定資産は25.1億円、敷金・保証金が12.1億円となっている。負債をみると、有利子負債が約32億円と大きい。利益剰余金は16億円となっている。

 関通は2020年3月に東証マザーズに上場。上場時の初値ベースの時価総額は29.7億円。上場に伴い、約3億円の資金調達をしている。

■関通の株価推移は?

 関通の時価総額は約75億円。物流の2024年問題もあり、ここ最近は株価は大きく上昇している。関通の株価を指標で考えると、2024年2月期の業績予想の一株当たりの純利益(EPS)は37円。予想PER20~30倍で考えると、予想株価は740円~1,100円くらい。現在の株価724円であり、株価は高くはないものの、大きく伸びるとも言えない。

 将来的にEPSは50円~60円くらいになることを考えると、予想株価は1,000円~1,200円くらいが期待できる。関通はそもそも粗利が低く、営業利益率が10%を超えることはまずない。いかに規模を拡大するかが課題であるものの、世の中にトラック会社が多数あり、安値競争が起こりやすい構造のため、なかなか収益性の改善もむずかしい。トラック運転手の賃上げは必ずやる必要もある。

 関通の株価が今の半値だった半年くらい前は投資のリスクが低く、大きなリターンが期待できたものの、すでに株価が上昇しているのが難点だ。もちろん、この業界にマネーが流入し、高値でも株価が上がり続けることもありえる。そもそも、物流の2024年問題は数年前から言われており、関通の株価もすでに一度、あがったとも考えることができる。

(画像1)関通の株価推移

以 上

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