電気自動車に必須のリチウムイオン二次電池の中核部材であるセパレータの開発、生産、販売をしているダブル・スコープ(W-SCOPE、以下、ダブルスコープ)。2005年10月設立、従業員数は1,391名(2022年12月末時点)。本社は日本にあるものの、生産工場などは韓国、中国などにあり、子会社の1社は韓国のKOSDAQに2022年9月に上場。ダブルスコープの業績と株価は?
■基本情報(2023年8月18日時点)
- 株価:1,113円(10年来高値:3,675円)
- 時価総額:615億円
- 予想PER:38.9倍
- PBR:1.13倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:33.9%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:34,134人(2022年12月31日時点)
■ダブルスコープの業績は?
ダブルスコープの2024年1月期の第二四半期の売上高は235億円(前年比+16.5%増)、営業利益27.3億円(前年比△0.9%減)の増収減益。ダブルスコープの売上総利益率は+16.2%(前年は+18.7%)、営業利益率は+11.6%(前年は+13.6%)と若干悪化している。
ダブルスコープの売上総利益は前年の37.7億円→38.1億円と+0.4億円の増加、販管費は前年の10.2億円→10.8億円と+0.6億円の増加となり、差し引きで営業利益は△0.2億円の影響となった。営業利益は前年の27.6億円→27.3億円と△0.3億円の悪化。
■ダブルスコープの事業内容は?
ダブルスコープはリチウムイオン電池用のセパレータと呼ばれる部品を開発、生産している。リチウムイオン電池はスマートフォン、PC、カメラなどで使用されている。また、ダブルスコープが注目されているのは、このリチウムイオン電池は電気自動車(EV)向けにも生産されているからだ。
その他の分野では、メンブレンフィルムという膜の技術によりイオン交換膜、水処理フィルタ、空気のフィルタ、レドックスフロー電池などでも使用している。ダブルスコープの2021年の市場シェアは約6.0%。電気自動車はリチウムイオン電池が必須であり、今後、この領域での成長は間違いないため、ダブルスコープが注目されている。
■韓国人社長のダブルスコープ
ダブルスコープの社長は韓国人の崔氏。サムスン出身だ。2005年当時は電池と言えば、三洋電機が世界シェアトップであり、韓国よりも日本が電池に強い状況だった。リチウムイン電池材料の技術開発に優れた企業が日本に数多くあったことも理由の1つ。
崔社長は韓国で当初、創業したものの、ベンチャーキャピタルなどに見向きもされず、結局、ソニー系のベンチャーキャピタルのTNPパートナーズなどに出資してもらっている。そのときの出資条件として、日本企業としてスタートすることが条件だったと言われる。
なお、TNPパートナーズ以外では、ニッセイキャピタル、ジャフコ、三井ベンチャーズ、SMBCキャピタルなどが投資している。
■ダブルスコープの財務状況は?
ダブルスコープの2023年6月30日時点の財務諸表をみると、現預金は204億円、棚卸資産は111億円、有形固定資産は1,074億円(特に建設仮勘定が569億円と大きい)、繰延税金資産が27億円。負債をみると、有利子負債は約200億円、未払金90億円。財務的にはそれほど安心感はないものの、有形固定資産に投資していることから財務的な危機感はそれほど感じない。利益剰余金は累損として119億円のマイナスとなっている。
ダブルスコープのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+51億円、投資CFは△207億円、財務CFは+13億円となり、現預金は328億円→204億円と減っている。かなり生産拠点の強化に投資していることが分かる。
■ダブルスコープの株価推移は?
ダブルスコープの時価総額は約610億円。将来的に電気自動車が発展していく未来を想像すると、ダブルスコープの業績はこれからどんどん成長していくことが期待できる。ただし、現時点では少し割高感は感じる。ヨーロッパを中心に電気自動車の発展を考えると、将来性に投資する価値はあるかもしれない。
電気自動車向けのリチウムイオン電池の材料としては、新日本電工のリチウムイオン電池正極材なども注目されている。しかしながら、新日本電工は合金鉄が事業の7割を占めており、リチウムイオン電池関連の投資は2割くらいに留まる。ダブルスコープはリチウムイオン電池100%の事業をしており、リスクがあるものの、将来の電気自動車関連に投資するにはうってつけの銘柄かもしれない。
リチウムイオン電池正極材の新日本電工、電気自動車の将来需要に期待!?(2023年8月18日投稿)
以 上