電子書籍レンタル「Renta!」のパピレス(3641)、巣ごもり特需で業績好調!

 新型コロナウイルスの影響による「巣ごもり消費」の特需により、電子コミック業界の業績は好調がつづいている。電子書籍レンタルサイトを展開するパピレスも大幅な増収増益。電子書籍の市場はこの10年で大きく拡大。2017年~2018年は「漫画村」などの違法サイト(海賊版サイト)の影響で一時的に落ち込んだものの、2019年からは業績、株価ともに上昇トレンドに転じている。1995年から電子書籍を手掛ける老舗のパピレス、今後の株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2020年8月28日時点)

  • 株価:2,681円
  • 時価総額:277億円
  • 予想PER:21.5倍
  • PBR:3.38倍
  • 予想配当利回り:0.37%
  • 自己資本比率:56.0%
  • 会計基準:日本基準

■業績好調のパピレス!「巣ごもり消費」の特需

 電子書籍レンタルサイト「Renta!」などを展開しているパピレス。2021年3月期の第一四半期の売上高は67.2億円(前年同月比+20.9%)、営業利益6.6億円(前年同月比+108.7%)と大幅な増収増益となった。新型コロナウイルスの影響による「巣ごもり消費」の影響により、パピレスが運営する「Renta!」「犬耳書店」はもちろん、競合他社が運営する「めちゃコミック」「まんが王国」「マンガBANG!」「マンガボックス」など、どこも好調な業績を公表している。

■パピレスの事業内容は?

 「Renta!」の会員数は600万人を突破。「Renta!」は48時間の限定レンタルを約100円で提供しているのが特徴だ。マンガ(コミック)の電子書籍化率は約60%と言われており、「紙から電子書籍へ」の流れのなか、電子書籍アプリ(とくにマンガ関連)を運営する企業すべてが社会の変化の恩恵を受けているのが現在の状況だ。スマートフォンで簡単に書籍を読める手軽さが広がっている。

 パピレスの特徴は、スマートフォンに最適化した「タテコミ」という方式の作品を増やしている点だ。電子コミック(漫画)の市場は、急速に拡大しているものの、競争激化により、どこかで激しい値下げ競争になることが予想される。そのときに、他社とどのように差別化できるか今からしっかり準備しておかないと、ユーザーが一気に離れていくリスクはある。個人投資家としては、企業の見極めが必要な段階だ。

■海外電子コミック市場の拡大を計画するパピレス!

 パピレスは海外への電子コミックの拡大を視野にいれて準備をすすめている。現在、日本国内は30万冊(約2,000億円)の市場で、多言語された作品は約2万冊。米国は110億円、中国150億円という市場規模であり、パピレスは海外市場の開拓を意識して準備をすすめている。いまは英語版と中国語版(繁体字)の「Renta!」をお展開し、堅調に売上高を伸ばしている。

 2019年7月に海外取次会社AAG(アルド・エージェンシー・グローバル株式会社)をインフォコム子会社のアムタスと共同で設立し、国内出版社の海外配信にかかる手続きを代行していく方針だ。AAGの資本構成はパピレス66.6%、アムタス33.4%とパピレス主導の事業となっている。いち早く、海外市場の取り込みをはかるべく、先手を打っているのは将来性にプラスとなる。パピレスは2018年4月、香港に子会社を設立し、中国大陸向けの電子コミックの配信を準備中だ(中国大陸では出版関連の法規制がきびしいため、事業化は簡単にはいかない)。

■業績飛躍のカギは著作権料と広告宣伝費か?

 パピレスの損益計算書(P/L)を見ると、著作権料と広告宣伝費の負担が大きいことがわかる。電子コミック市場は急速に拡大しているものの、他社との競争ははげしくなっている。現在は他社含めて、広告宣伝合戦の様子がみられる。言い換えると、電子コミック市場で生き残る企業が見えてくれば、重い広告宣伝費の負担が軽減されると思われる。

■パピレスの株価の行方は?

 パピレスの現在の時価総額は約280億円。株式指標的には割高でも、割安でもない。電子コミック関連の銘柄はどこも同じような株価トレンドとなっている。インフォコム、ビーグリー、Amaziaなどの電子コミックを中心に展開している会社の株価はどこも同じトレンドを描いている。LINEやサイバーエージェント、DeNAなどのITベンチャー大手も電子コミック事業を展開しており、このままの競争はいつまで続くのだろうか。どこかで市場再編の動きがでるのではないかと予想している。

(画像5)上昇トレンドがつづくパピレスの株価推移

以 上

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