リチウムイオン電池正極材の新日本電工、電気自動車の将来需要に期待!?

 日本製鉄が20%を出資する合金鉄メーカーであり、リチウムイオン電池の正極材を提供しているメーカーである新日本電工。欧州金融引き締めによる欧米の景気後退懸念や中国経済の不安定さにより合金鉄(マンガン)市況が下落。将来的な電気自動車(EV)の期待感はあるものの、株価はイマイチ上昇しないジレンマにある新日本電工。今後の業績と株価の行方は?

日本製鉄系の新日本電工、EV向けリチウムイオン電池は?(2020年5月16日投稿)

■基本情報(2023年8月17日時点)

  • 株価:264円(10年来高値:545円)
  • 時価総額:362億円
  • 予想PER:12.0倍
  • PBR:0.53倍
  • 予想配当利回り:2.65%
  • 自己資本比率:67.7%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:29,981人(2022年12月31日時点)

■新日本電工の業績は?

 2023年12月期の第二四半期の売上高は394億円(前年比+2.6%増)、営業利益19.4億円(前年比△67.1%減)の増収減益。新日本電工の売上総利益は+13.4%(前年は+23.8%)、営業利益率は+4.9%(前年は+15.3%)と大きく悪化。

 新日本電工の売上総利益は前年の91億円→53億円と△38億円の減少、販管費は32億円→34億円と+2億円の増加となり、差し引きで営業利益に△40億円のマイナスとなった。結果、営業利益は59億円→19億円と△40億円のマイナス。

■新日本電工のセグメント別損益は?

 新日本電工の決算説明資料はわかりやすく、事業別の業績が見やすい。新日本電工の売上高を引っ張っているのは合金鉄事業で売上比率は全体の72%を占めている。その次にEV用のリチウムイオン電池の正極材を製造している機能材料が15.9%を占めている。正直、リチウムイオン電池の正極材の専用メーカーであれば、それだけで事業価値は300~500億円くらいの株式価値がついていてもおかしくない。

 セグメント損益に戻ると、合金鉄事業の売上高は285億円、経常利益は3億円、機能材料事業の売上高は63億円、経常利益は5億円だった。合金鉄は主要材料である高炭素フェロマンガンの市況が高値から一気に下落して、在庫評価の評価減の影響が大きい。この影響が32億円くらいある。言い換えると、新日本電工は合金鉄の市況に業績が大きく作用される事業構造となっているのが弱点だ。

■市況高騰でもうかった2年間

 振り返ってみると、コロナ禍の2021年~2022年、マンガンの市況が高騰し、その影響と需要で新日本電工は利益がかなり上がった。2015年~2022年までの経営指標推移をみると、売上規模はそれほど変わっていないものの、2017年、2021年、2022年と大きく利益がでている。いずれも高炭素フェロマンガンの市況による影響が大きい。

 新日本電工の利益があがるのは高炭素フェロマンガンの価格が落ち込んでいて、そこから急騰したときに在庫評価の利益がでるところが大きい。言い換えると、市況が高値から下がったときには在庫の評価損がでるため、株価が大きく下がることも多い。

■新日本電工の財務状況は?

 新日本電工の2023年6月30日時点の財務諸表をみると、現預金は79億円、在庫は326億円、有形固定資産は260億円、投資有価証券は127億円、長期貸付金は52億円となっている。負債は、有利子負債が170億円となっており、財務的には健全だ。

■新日本電工の株価推移は?

 新日本電工の時価総額は約360億円。将来的にリチウムイオン電池の正極材がどこまで成長するかがポイントになる。電気自動車の市場は広がっていくことは間違いなく、リチウムイオン電池の発展と拡大は見えている。ただ、新日本電工はリチウムイオン電池だけのメーカーではない。

 日本製鉄が20%出資しているものの、それほど出資比率が高くないのも特徴だ。可能性としては、日本製鉄による将来的なTOBなどは想定できる。いまは年初来安値を更新している状況であり、なかなか投資しにくいものの、成長性は期待できるのではないだろうか。

(画像1)新日本電工の株価推移

以 上

 

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