ホテル、旅館、民泊向けに宿泊予約サイトの一元管理サービスを提供している手間いらず。売上高は20億円弱であるものの、営業利益率が70%ちかい収益力で、時価総額は約300億円。新型コロナウイルスの影響で、予約の変動部分の手数料は落ちこむと思われる。しかしながら、固定料金の部分は堅調だ。宿泊施設にとっては自社サイト含め、複数の予約サイトに登録するのは時代の流れのため、手間いらずは欠かすことができない存在。手間いらずの株価はどのように動いていくのか?
■基本情報(2020年6月12日時点)
- 株価:4,965円
- 時価総額:322億円
- 予想PER:42.3倍
- PBR:8.7倍
- 予想配当利回り:0.53%
■業績は好調、心配は将来の成長性か!?
手間いらずの2020年6月期の第三四半期の売上高は12.7億円(前年同期比+27.8%)、営業利益8.9億円(前年同期比+39.5%)と好調だ。とくに注目するべきは営業利益率の高さ。営業利益率が70%ちかいため、売上高の伸びとともに加速度的に営業利益が増える構造だ。そうなると心配してしまうのは、将来のどこかで売上高の伸び率が鈍化してしまう可能性。
たとえば、不動産投資サイトを運営しているファーストロジックの2019年7月度の業績は、売上高17億円、営業利益8.7億円、営業利益率50%超と、手間いらずと同じような規模。そのファーストロジックの現在の時価総額は約70億円。ファーストロジックの株価ピーク時の時価総額は約280億円。もちろん、手間いらずは現在も前年比+25%ほどで成長をつづけており、ファーストロジックと単純に比較はできない。宿泊サイトの一元管理というサービスの市場規模がどれほど大きいのか疑問(心配)がのこる。
■手間いらずの事業内容は?
手間いらずの事業内容はどのようなものか?手間いらずは、アプリケーションサービス事業とインターネットメディア事業の2つを柱に事業を展開しているが、売上高の約97%は宿泊サイト一元管理サービスのアプリケーションサービス事業がメインだ。 手間いらずは、この宿泊サイト一元管理サービスを「宿泊予約サイトコントローラー」と呼んでいる。
「宿泊予約サイトコントローラー」は、有名どころの予約サイトを網羅していて、たとえば、楽天トラベル、じゃらん、一休.comなどの国内予約サイト。そのほかでは、海外予約サイトのagoda(アゴダ)、Booking.com、エクスペディア(Expedia)などとも連携しており、ホテル、旅館などの事業者には便利なサービスとなっている。宿泊サイト一元管理サービスについては心配無用といったところだ。
もうひとつのインターネットメディア事業は売上高は約30百万円という事業規模。比較ドットコムという比較サイトを運営していて、PC・スマホ、家電、ペット用品、ファッション、食品などさまざまなモノの価格を比較できるサイトだ。ただし、実際に比較ドットコムを使用してみると使いづらい。やはりカカクコムの比較サイトには負けているというのが正直なところ。
■手間いらずの強みは?
手間いらずは社員数が約40名と小規模。この規模感が強みだ。宿泊サイト一元管理のサービスや比較サイトなどのビジネスモデルを構築して、少人数で事業を回している会社。東証マザーズから東証一部に市場変更しても、会社の人員数では小規模なまま。
もし上場していない一般企業であれば、収益性の高い、すばらしい会社と評価されるものの、成長を期待したい上場企業としては、投資する面からは物足りなさが残る。ちょっと気になったのは、手間いらずの平均年収。平均年収が432万円、平均年齢33.1歳。月収では額面30万円(手取りなら25万円ほど)、賞与が年2回で合計80万円というレベル。東証一部上場で、収益性が高い企業としては少なすぎる。
■手間いらずの株価推移は?
手間いらずは上場時の高値が異常にたかく評価された会社。現在の時価総額320億円の株価でも、上場時には倍以上の評価がされていた。ここ数年、手間いらずの株価は右肩あがりであるものの、リーマンショック以後からずっと保有している個人株主はそれほど多くないかもしれない。
今後の株価の行方は、どこまで成長性を維持できるかにかかっているといえる。新規事業に参入する兆しがまったく見えないのが、積極的に投資できない理由のひとつ。現在の企業規模で満足しているか、それとも新たなチャレンジをおこなうか、今後の動向を様子見したい。
以 上