不動産テックのマーキュリーリアルテックイノベーター、マンション情報を売る!

 新築・中古マンションに関する情報を提供するデータビジネスを展開しているマーキュリーリアルテックイノベーター(以下、マーキュリーRI)。2023年2月期の売上高は14.7億円、営業利益2.2億円と小さいながら、ビッグデータを活用した不動産テックで存在感を出している。大手不動産会社を中心にサブスクリプション型でサービスを提供しており、事業自体は堅調だ。今後の株価と業績の行方は?

■基本情報(2022年9月22日時点)

  • 株価:1,151円(10年来高値:2,035円)
  • 時価総額:31.5億円
  • 予想PER:21.1倍
  • PBR:4.26倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:74.5%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:4,521人(2022年2月28日時点)

■マーキュリーRIの業績は?

 マーキュリーRIの2023年2月期の第一四半期の売上高は3.6億円(前年同期比+10%増)、営業利益43百万円(前年同期比+23%増)の増収増益。マーキュリーRIの売上総利益率は+49.3%、営業利益率は+12.1%。

 マーキュリーRIは規模が小さいものの、前年比+10%と成長性がもう少しほしいところ。事業領域的にはユーザの多い分野であるものの、競合他社の多い領域でもある。

 マーキュリーRIは従業員数52名、平均年齢39.4歳、平均給与は570万円。ベンチャー企業というには従業員の年齢は高い。

■マーキュリーRIの事業内容は?

 マーキュリーRIは大きく3つの事業領域にわかれている。プラットフォーム事業は全体の売上高の約65%。SaaS型のサービスを提供している。デジタルマーケティング事業は全体の売上高の約25%。デジタルマーケティングの代行をしている。残りは「マンションバリュー」などの事業で全体の約10%となっている。

 マーキュリーRIは、不動産情報プラットフォーム「Realnet」というものを構築しており、それが収益の源泉だ。新築マンションや中古マンションの物件概要情報、住戸価格データ、売れ行きデータ、物件パンフレットなどの情報とAI価格査定などのテクノロジーを組み合わせて、サービスを提供している。

 新築マンション領域であれば、不動産会社に地図型のマンション分布がみれるサービスを提供している。中古マンション領域では販売時の価格一覧、間取り図などを提供している。たとえば、所有者がマンションを売却するときに不動産仲介会社(住友不動産、野村不動産、大成有楽不動産販売、東急リバブルなど)が販売情報を作成する。その時などにマーキュリーRIのサービスを利用する。

 つまり、マーキュリーRIはマンションに関連するデータを集めて販売する情報事業を行っている。これがマーキュリーRIの収益の源泉だ。

■マーキュリーRIの売上内訳は?

 マーキュリーRIのプラットフォーム事業の売上高内訳をみると、新築マンション領域が2.1億円、中古マンション領域が22百万円と圧倒的に新築マンション領域の構成が高い。新築マンション領域の平均顧客数は260~270社でここ1年間で変化はないものの、平均顧客単価は22.7万円(前年は18.9万円/社)と改善している。SaaSの年間換算売上高は1.8億円となっており、まだまだ規模は小さい。

 中古マンション領域は顧客数は2,200社(前年は1,782社)と大きく増加しているものの、平均単価は3,283円と低い。これはデータダウンロードに伴うサービス利用にともなう売上だからだ。リカーリングビジネス的に顧客の数を増やすことと使用回数の増加が重要だ。

 いずれにしろ、マーキュリーRIは不動産市況の活発さに業績が左右される傾向にありそうだ。いまは住宅ローン金利も低く、住宅売買は比較的活発であるものの、世界的な利上げの波を前に、今後の行方はだれにもわからない状況だ。

■マーキュリーRIの財務状況は?

 マーキュリーRIの2022年5月31日時点の現預金は5億円、無形固定資産が1.1億円ある。有利子負債は約50百万円と大きくない。利益剰余金は2.9億円とそれほど過去からの利益の蓄積があるわけではない。

 マーキュリーRIは2022年2月25日に東証マザーズに上場し、公募増資で3.9億円を調達。初値(株価)は1,355円と現在の1,151円(2022年9月22日時点)よりも高い。

■マーキュリーRIの株価推移は?

 マーキュリーRIの時価総額は約30億円。事業内容は面白いものの、爆発的な成長が期待できる事業ではない。不動産テックの領域では、資産管理のプロパティデータバンクや不動産コンサルティングのSRE(旧ソニー不動産)、ロボットホーム(旧インベスターズクラウド、TATERU)、GAテクノロジーズなどあり、分野が重ならないものの、不動産は競合他社が多い世界。

SREホールディングス(旧ソニー不動産)、AIと不動産テックで事業成長!(2021年6月20日投稿)

不動産テックのGAテクノロジーズ、投資・仲介「RENOSY(リノシ―)」攻める事業戦略!(2021年5月23日投稿)

不動産テックのプロパティデータバンク、ITで不動産・施設の資産管理を支援!(2021年4月4日投稿)

 マーキュリーRIがいかに利益のでる新事業を打ち立てれるかが重要になる。新規上場したばかりであり、規模も小さいため、株式市場の流れで時価総額100億円くらいまで上昇する可能性はありえるだろう。マーキュリーRIでイマイチ理解できないのは、2022年2月25日に上場し、2022年4月14日に自己株式の取得を発表して、4.5万株(約57百万円)の自社株買いを実施している。上場して資金調達して、また市場から株式を回収する違和感のある取引。何を期待していたのだろうか?

 期待感があるのは、Zホールディング、GAテクノロジーズ、アットホームなど不動産に関連する大手が投資している点。情報・データ事業の将来的な見通しが立てば、Zホールディングに買収される可能性もあるかもしれない。

(画像1)マーキュリーRIの株価推移

以 上

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