不動産テックのGAテクノロジーズ、投資・仲介「RENOSY(リノシ―)」攻める事業戦略!

 投資・仲介サービス「RENOSY(リノシ―)」や賃貸仲介サービス「OHEYGO(オヘヤゴー)」、クラウドサービスの「ITANDI BB」など不動産テック事業を展開しているGAテクノロジーズ(GA TECHNOLOGIES)。不動産業界の課題をDX(デジタルトランスフォーメーション)で解決し、不動産分野で新しい挑戦をつづけている新興企業。GAテクノロジーズの業績と株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2021年5月21日時点)

  • 株価:1,806円(10年来高値:3,995円)
  • 時価総額:622億円
  • 予想PER:62.1倍
  • PBR:3.34倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:66.6%
  • 会計基準:日本基準

■GAテクノロジーズの業績は?

 GAテクノロジーズの2021年10月期の第一四半期の売上高は121億円(前年同期比+22.8%増)、営業利益△6.4億円(前年同期は△46百万円の赤字)と増収であるものの営業赤字拡大となった。GAテクノロジーズの売上総利益率は+14.9%(前年同期は+17.2%)と悪化している。

 GAテクノロジーズの売上総利益額は2021年10月期の第一四半期は18.0億円、前年同期は16.9億円と売上高の伸びほど成長しておらず、粗利率はさがっている。GAテクノロジーズはセグメント別損益やサービス別の損益を開示していないため、具体的な粗利率悪化の要因はわからない。サービス構成比率の影響により、粗利率が低い事業の構成が高くなったことが要因だと思われる。

 クラウド会計のfreee(フリー)やマネーフォワード、ラクス、Sansanなどのクラウドサービスを展開している企業であれば、売上総利益率は変わらず、売上高の伸びとともに売上総利益額が増えていくことが一般的。GAテクノロジーズは自社で不動産の買取を行っていたりするため、不動産テックと言っても、システム会社(SaaS企業)とは大きく異なるビジネスモデルであることに留意が必要だ。

■GAテクノロジーズの事業内容は?

 GAテクノロジーズは、RENOSY(リノシ―)事業とITANDI(イタンジ)事業の大きく2つのサービスを展開している。RENOSY事業は「RENOSY iBuyer事業」というコンパクトマンションを中心とした投資用マンション事業の物件販売をおこなっている。GAテクノロジーズは首都圏、大阪、名古屋、福岡の築10年以内の投資用マンション(50㎡未満)をサラリーマン中心に販売している。「RENOSY」に賃貸管理を任せることもでき、賃貸保証のサブリース契約も用意している。

 RENOSY事業では、もうひとつ「RENOSY Living事業」をおこなっている。「RENOSY Living事業」は、住まいの賃貸と売買をネット仲介するサービスだ。東京23区、神奈川、千葉、埼玉を対象にサービスを展開している。実際に賃貸で検索してみると、いわゆる高級マンションを中心に物件一覧が表示される。ほかのサイトの「SUUMO」「HOMES」などとくらべると物件数はまだまだ少ない印象だ(モダンスタンダードという高級賃貸物件サイトを買収している)。

 最後に、ITANDI事業は、不動産賃貸向けのSaaS(クラウドサービス)事業となっている。物件の管理会社、仲介会社などに「nomad cloud」というシステムを提供したり、業者間リアルタイム物件データベースの「ITANDI BB」を展開している。賃貸物件を探している入居希望者には「OHEYA GO(オヘヤゴー)」という賃貸サイトを提供している。「OHEYA GO」の特徴としては、ウェブサイト内でセルフ内見できるという点だ。いまのところ、東京都内のみにサービスは限定されている。

■GAテクノロジーズの成長戦略は?

 新型コロナウイルスの影響により、どの業界もデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の風潮があり、ここ1年で生活やビジネスが大きく変化している。医療関連のヘルスケア関連ではエムスリー、メドピア、ケアネット、メドレーなどがヘルスケアITサービスとして、医療機関や製薬会社向けのDXが大きく進んでいる。

 不動産関連でのDX推進のプレイヤーとしてはGAテクノロジーズがその代表に該当するかもしれない。GAテクノロジーズの追い風としては、賃貸・売買の不動産取引においてのオンライン化への動きだ。現行法では賃貸・売買ともに重要事項説明書や契約書は対面である点や書面である点が義務付けられていた。政府のデジタル化推進の方針により、今後はオンラインによる締結や電子書面化が進む可能性が高い。

■GAテクノロジーズの懸念点は?

 GAテクノロジーズは2021年1月に約135億円の公募増資などを決定。株価に大きくマイナスとなったものの、財務体質は大きく改善されている。この135億円の使用用途としては、システム投資25億円、広告宣伝費40億円、採用・人件費10億円、「RENOSY iBuyer」の拡大(つまり、コンパクトマンションの取得費用)52億円などを計画している。

 GAテクノロジーズは売上高内訳を開示していないため、何で事業を支えているか見えないものの、おそらく「RENOSY iBuyer」が事業の柱と推測する。「RENOSY iBuyer」はいわゆる投資用マンション販売のため、成長期は大きく事業が成長しているように見えるものの、低迷するときも早い。しかも、サブリース契約(7年間)を提供しているため、将来的なリスク(入居率の悪化など)がどこまで含まれているか、現時点では見えない。ポイントサイトの「モッピー」や「ポイントインカム」などでは「RENOSY」の面談を受けると5万円相当のポイントがもらえることもあり、積極的な送客をおこなっている。どこまで「RENOSY iBuyer」に売上依存しているか開示を待ちたいところ。

■GAテクノロジーズの株価の行方は?

 GAテクノロジーズの時価総額は約620億円。不動産テックという最新のIT企業のイメージで考えた場合、freee(フリー)やラクス、Sansanなどのクラウドサービス企業とくらべると割安感を感じてしまう。しかしながら、GAテクノロジーズを不動産企業と考えた場合には、売上総利益率は15%程度で成長率は前年比+20%程度。その場合はには割高感を感じてしまう。注目すべきは売上総利益率の低さ。売上総利益率を急激に上昇させることは難しいため、普通の不動産企業と考えて投資するのが妥当ではないか。

そもそも、GAテクノロジーズはM&Aによる企業の集合体である点を忘れてはならない。ITANDIを2018年11月に買収し、高級マンション賃貸のモダンスタンダードを2019年12月に買収。それらのグループ会社のなかで、いかにシナジーを出せるか、これから引き続き注目が必要だ。

(画像1)GAテクノロジーズの株価推移

以 上

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