ビジネスチャット「Chatwork」展開、SaaS型ビジネスで将来は明るい!?

 ビジネスチャット「Chatwork」を展開しているChatwork(チャットワーク)。中堅・中小企業を中心に日本国内では「Chatwork」が普及しているが、グローバルや大企業の視点でみるとTeams(マクロソフト)とSlack(スラック)のほうが一般的だ。「Chatwork」のポイントは今後の成長性に尽きる。Chatworkの業績と株価の行方は?

■基本情報(2022年10月7日時点)

  • 株価:345円(10年来高値:2,624円)
  • 時価総額:137億円
  • 予想PER:赤字予想
  • PBR:4.24倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:61.0%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:11,282人(2021年12月31日時点)

■Chatworkの業績は?

 Chatworkの2022年12月の第二四半期の売上高は21.5億円、営業損益△2.5億円。2Qだけを見ると、売上高は11.0億円(前年同期比+49.9%増)、営業損益は△1.1億円(前年同期も△1.1億円の赤字)。

 Chatworkの売上総利益率は+71.7%(前年同期も+71.7%)と高い。Chatworkの売上総利益は+15.4億円だったものの、販管費が17.9億円発生し、その差額の2.5億円が営業損失となった。Chatworkの有価証券報告書をみると販管費の内訳がわかり、主に人件費、広告宣伝費、業務委託料、支払手数料などが占めている。

 昨年の広告宣伝費は8.2億円。2021年度の売上高は33.7億円、営業損失△6.9億円のため、かりに広告宣伝費がゼロだった場合に営業利益はプラスとなっていた計算になる(もちろん、広告宣伝費をゼロにすると売上高の伸びを確保できないことは当然だ)。

■Chatworkの事業内容は?

 Chatworkの事業内容はシンプルで、ビジネスチャットツールである「Chatwork」をSaaS型(月額課金方式)でサービス提供している。いかにユーザ数を増やすかがKPIとなっている。現在の登録ID数は534万、課金ID数は59.1万となっている。「Chatwork」はフリーミアムモデルを採用しており、限定された機能で無料で利用可能。

 この登録ID数の534万をどうみるか?競合他社のTeamsやSlackを利用している対象者も多く、ここからどれだけ増やす余地があるか?正直、いまのChatworkは日本国内がメインのサービス。2024年に売上高100億円を目指しており、そうすると課金IDは少なくとも120万IDは必要になる。いまの倍だ。現在の成長率は前年比+40%を超えているものの、規模が大きくなってきたので、ここから成長性が鈍化してくると思われる。

■ChatworkのKPIを分析すると?

 Chatworkの当期の売上高は前年四半期に対して、+49.9%増と大幅増となっている。Chatworkだけを見ると、前年四半期比+53.7%増と伸びがより大きい。いっぽう、登録ID数は+18.0%、課金ID数は+21.5%と伸びが小さい。これは2021年7月以降の更新から料金体系を見直し(値上げ)した影響だ。

 言い換えると、売上高の伸びは単価増が大きく、数量(ID数)ベースでみると成長性が落ちている。値上げ幅も+20%ほど改定しており、これによる売上高の増加が大きい。今回の四半期までは価格改定の成長が考慮されていたが、2022年7月以降は段階的に価格改定差の薄れ、成長性が鈍化してくると思われる。

■Chatworkの財務状況は?

 Chatworkは2019年9月に東証マザーズに上場。従業員数は284名。上場時に公募増資と証券会社引受により約20億円の資金を調達。上場時の時価総額は541億円(現在の時価総額は137億円)。また、2021年12月に海外募集の公募増資を実施し、約19億円を調達している。

 2022年6月末時点の現預金は32億円、無形資産が約10億円計上されている。いっぽう、有利子負債は約7億円あり、財務状況は健全であるものの、累積の利益剰余金は△19億円と赤字が蓄積している。2021年12月の公募増資がなければ、財務的には厳しい状況でもあるのが現実だ。

■Chatworkの行方は?

 Chatworkの時価総額は約140億円。売上規模が50億円レベルで、広告宣伝費がそれほど計上されていないことを考えると、将来的に爆発的に利益がでるか見えない部分も大きい。いくつか気になる点としては、これから起こる成長性の鈍化。おそらく、成長性は50%→20%くらいに一気に落ちるのではないだろうか?そのときに、株式市場で大きく株価が売られる可能性がある点。

 従業員が284名と一定の規模となり、離職率が10%を超えている点が気になる。IT企業では転職や独立しやすい状況であるものの、採用コストが結構かかる。転職エージェント経由であると年収600万円で手数料は150~200万円くらい発生する。なお、Chatworkの平均年齢は33.8歳、平均年収は637万円と低くはないが、IT企業としては高くもない。

 SaaS型企業であれば、売上高100億円を目指すことができる事業かどうかが重要。ビジネスチャットは魅力的なツールであるものの、すでに大手企業では一般化しているし、中小企業にどこまで普及するか疑問点も残る。中小企業でそれほど大きな企業規模でなければ、メール・電話でとくに問題を感じないかもしれない(IT関係の企業は除く)。

(画像1)Chatworkの株価推移

以 上

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