ソニー(39%出資)とZホールディングス(22%出資)が主要株主であるAIサービスと不動産テック事業を行うSREホールディングス。2014年4月にソニー不動産として設立され、当初は不動産仲介の片手取引(売手・買手の片方側のサービスしかしない取引形態)をメインとした新しい手法で事業を拡大。2015年7月にヤフーと資本・業務提携をしてからはAIを活用した不動産評価などAI分野に事業展開。2019年12月に東証マザーズ上場し、2020年12月に東証一部に変更。設立から10年足らずで株式上場まで果たし、現在の時価総額は1,000億円を突破。SREホールディングスの業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2021年6月18日時点)
- 株価:6,590円(10年来高値:7,030円)
- 時価総額:1,023億円
- 予想PER:122.4倍
- PBR:13.04倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:63.5%
- 会計基準:日本基準
■SREホールディングスの業績は?
SREホールディングスの2021年3月期の売上高は73.4億円(前年比+90.6%増)、営業利益10.6億円(前年比+41.5%増)と大幅な増収増益となった。SREホールディングスの売上総利益率は+41.2%(前年は+65.7%)、営業利益率は+14.4%(前年は+19.4%)と利益率は悪化している。
SREホールディングスの売上構成は、AI関連が11.3億円(前年比+42%増)、不動産テックが65.1億円(前年比+103%増)と不動産テックの売上高の伸びが業績を引っ張っている。いっぽう、セグメント別損益を見ると、AI関連が+7.3億円、不動産テックは+3.8億円と不動産テックの利益率は低い。SREホールディングスのAI関連と不動産テックとは具体的にどのような事業をしているのか?
■SREホールディングスの事業内容は?
SREホールディングスのAI関連は、不動産仲介事業者や金融機関向けにパッケージ化した業務支援型のクラウドツール(SaaS)を提供している。たとえば、AIによる売却マンションの適正価格の算出など従来は人手をかけて試算していたことを提供できるサービスだ。SREホールディングスはソニー不動産をベースにしているものの、実態はIT企業の部分が存在している。また、AI関連事業はサブスクリプション型ビジネスでストック型で売上高を積み上げることが可能で利益率が高い。
もうひとつの不動産テックは、祖業の不動産売買仲介事業とIoT技術を活用したスマートホームの「AIFLAT」というマンションシリーズを提供している。2021年3月期において、大きく売上高を伸ばした要因は「AIFLAT」の売却が大きい。具体的な数値は公表していないものの、2021年3月に私募ファンド(オフバランスビークル)に参画し、SREホールディングス開発物件をオフバランス(売却)を進めたと記載がある。それでも、2021年3月末時点で棚卸資産に72.7億円が計上されており、開発中の「AIFLAT」が残っていることに留意が必要だ。不動産テックの利益率を見ると、「AIFLAT」の売却はそれほど利益がでるものではない。
■IT企業?それとも不動産企業?
SREホールディングスのAI関連は利益率が高いものの、売上規模は年間10億円程度。SREホールディングスが大きく成長しているように見えるのは、「AIFLAT」の売却額の影響が大きいからだ。株式市場では不動産企業の時価総額はたとえ高い利益率であっても低くなることが多いが、SREホールディングスはAI関連とミックスされて、非常に高く評価されている。
もし、AI関連を単体でみた場合、売上高11.4億円、営業利益7.3億円で予想PER100倍と考えると、時価総額は500億円前後ではないか。いっぽう、不動産テックは売上高65億円、営業利益3.8億円で予想PER15倍とすると時価総額は45億円前後。本来であれば、時価総額は高くても500~600億円前後のところ、AI関連に引っ張られて企業価値が高く評価されている可能性がある。
■SREホールディングスの株価の行方は?
SREホールディングスの時価総額は約1,000億円。不動産テックという新しいIT分野のように思えるが、AI関連を除くと、実態は不動産企業そのもの。2020年3月のコロナショックで最安値をつけてから、1年半で株価は5倍近くまで上昇している。株価指標的には割高感あるが、SaaS関連に資金が集まっているため、更なる高値を目指す可能性はありえる。ただし、ここから新規で購入する場合は、高値掴みになる可能性があるので注意が必要だ。
以 上