電子コミック「ゼブラック」などのマンガ事業を中心にサーバープラットフォームサービスというデータ配信システムの技術を活用したビジネスを行っているLink-U(リンクユー)。2020年8月にHashpalette(ハッシュパレット)に50%出資し、2021年夏に国内初となるIEO(Initial Exchange Offering)の実現を進めている。従来のICO(Initial Coin Offering)と異なり、暗号資産取引所(今回はコインチェック)が主体となってトークンの承認を受けるモデル。Link-Uの株価の行方はどうなるのか?
マンガアプリ「ゼブラック」展開のLink-U(リンクユー)、海賊版の影響?マンガサービス不振!?(2021年3月14日投稿)
■基本情報(2021年6月18日投稿)
- 株価:1,291円(10年来高値:2,900円)
- 時価総額:182億円
- 予想PER:228倍
- PBR:8.69倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:82.4%
- 会計基準:日本基準
■Link-Uの業績は?
Link-Uの2021年7月期の第三四半期の売上高は11.8億円(前年同期比+26.1%増)、営業利益2.3億円(前年同期比△17.0%減)の増収減益となった。Link-Uの売上総利益率は+67.2%、営業利益率は+19.3%と高いものの、売上規模が10億円ちょっとと規模が小さい。
Link-Uは2021年3月12日に業績の下方修正を発表し、当初の予想から売上高4.6億円の減収に引き下げている。要因としては海賊版サイトによるマンガ事業の不振としている。マンガアプリは「めちゃコミック(アムタス)」「まんが王国(ビーグリー)」「LINEマンガ(LINE)」など上場企業が力をいれている分野であり、かなり過当競争となっている。
■Link-Uの暗号資産「PLT(パレットトークン)」とは?IEOとは?
Link-Uが最近注目されているのは、2021年夏に実施予定の国内初のIEO(initial Exchange Offering)への期待だ。ビットコイン以外の暗号資産であるアルトコインは、世界で1,500以上も発行されている。これまでのアルトコインのICO(Initial Coin Offering)で発行され、発行体がトークン(コイン)をダイレクトに投資家に販売してきた。しかしながら、アルトコインのなかには詐欺的なものも含まれており、信頼性に不透明な点があった。なお、時価総額が低いアルトコインを「草コイン」という。
Link-UがHashPortと50%ずつで出資したHashpalette(ハッシュパレット)という合弁企業を設立し、暗号資産取引所を運営するコインチェック(マネックスグループ)の承認を得るIEOでの暗号資産発行を目指している。Hashpaletteは、マンガ・アニメ・スポーツ・音楽などの日本の文化コンテンツのデジタル資産(NFT)の取引で使用される「PLT(パレットトークン)」の発行を進めている。
■Link-Uの暗号資産(仮想通貨)の仕組みは?
もう少しわかりやすく言うと、コインチェックはデジタル資産といわれるNFT(非代替性トークン)の取引所の開設を目指している。その取引所でNFTとして発行されたデジタル資産「マンガの限定読切閲覧権」や「スポーツゲームで使用できる試合限定記念写真」などの流通が行われ、その売買として「PLT(パレットトークン)」が使用される予定だ。
日本円や米ドルなどでなく暗号資産「PLT」を使用するメリットとしては、ブロックチェーン技術をつかってデジタル資産の所有権の移転が簡単に行えることが大きい。なお、「PLT」は暗号資産のイーサリアムブロックチェーン(ETH)の技術を使用している。
■NFTと暗号資産「PLT」は流行するのか?
デジタル資産の流通が一般的になるか今ところ誰にもわからない。ただし、NFTが流行し、コインチェック上でのデジタル資産の流通の主要決済として「PLT」が確立された場合、大きなポジションを取ることは間違いない。いっぽうで、NFTがそれほど流行せず、ほかの暗号資産が決済処理として乱立した場合は、ほぼ価値はないだろう。
Link-Uとしては「PLT」が主要決済のポジションを取り、「PLT」自身の市場価値(時価総額)が大きくなったとき、自社で保有する「PLT」の価値が大きく上昇することが予想される。なお、「PLT」は複数のコンテンツ企業が協力して共同事業体(コンソーシアム)をつくって発行することを目指している。
■Link-Uの株価の行方は?
Link-Uの時価総額は約180億円。これからNFTや暗号資産のテーマ化で株価は急騰する可能性は十分ありえるものの、NFT取引所がそれほど注目を集めなくなった場合、株価は大きく下落する可能性もある。Link-Uの業績はマンガ事業が支えているものの、暗号資産「PLT」を含めたNFT事業(ブロックチェーン事業)がうまくいかなかった場合、期待値が大きく剥落する可能性が高い。
ブロックチェーン事業で先行投資をしているゲーム企業のgumiの時価総額は約260億円。gumiの売上高は約180億円とLink-Uの10億円規模とは大きく異なる。Link-Uの時価総額には期待値が大きく加味されていることに留意が必要だ。
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個人的には世の中で暗号資産があふれており、暗号資産は資産価値の上昇を期待した投機目的の取引しか見られないと考えている。それぞれの暗号資産には発行時の目的があるものの、その目的を達成するための手段として使用されているケースはほとんどない。遅かれ早かれ、暗号資産のバブル崩壊が始まり、本当に社会に役立つ暗号資産だけが選別されるのではないか。
暗号資産「PLT」についても、イーサリアム(ETH)での代用はできないのか等、疑問点も少なくない。そもそも、暗号資産「PLT」の価値の裏付けがあるのか、ないのか自体も不明。観点に暗号資産を発行して資産価値を持つ場合、その目的のために暗号資産を発行する企業・団体が増え、供給過多により価値のバランスが崩れると考える。ただし、投機的な需要によりLink-Uの株価暴騰の可能性も十分ありえるが、予想は困難だ。
以 上