新卒ダイレクトリクルーティング「Offer Box」のi-plug(アイプラグ)、収益性が課題か?

 新卒採用のダイレクトリクルーティングサービスである「Offer Box」を提供しているi-plug(アイプラグ、以下、i-plug)。リクナビなどの「エントリー型」では企業の知名度に応募が大きく左右されるため、最近では新卒採用でもダイレクトリクルーティングが浸透している。その代表的なサービス「Offer Box」を提供しているのがi-plug。i-plugの業績と株価の行方は?なお、ダイレクトリクルーティングとは、応募を待つのではなく、企業から応募者に採用アプローチを投げかけるもの。スカウト型採用、逆求人などとも言われる。

■基本情報(2023年7月21日時点)

  • 株価:1,806円(10年来高値:8,110円)
  • 時価総額:71億円
  • 予想PER:792倍
  • PBR:7.42倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:27.5%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:1,605人(2023年3月31日時点)

■i-plugの業績は?

 i-plugの2023年3月期の売上高は37.4億円(前年比+23.0%増)、営業損益△4.1億円(前年は+3.7億円)と増収赤字転落となった。i-plugの売上総利益率は+87.2%(前年は+88.5%)と高く、コストのほとんどが販管費に計上される利益モデル。

 i-plugの売上総利益は前年の26.9億円→32.6億円と+5.7億円のプラス、販管費は23.2億円→36.8億円と+13.6億円の増加となり、差し引きで△7.9億円のマイナスとなり、営業利益は3.7億円→△4.1億円と大きく悪化した。

 販管費増の理由をみると、Paceboxという20代~30代向けの転職サイトへの投資がかさんでいる。また、HR関連の既存事業への投資などの費用が大きく増えた影響で営業利益は赤字となった。登録企業は前年同期比で+31.5%増となり、1.4万社まで増加と堅調。

■i-plugの事業内容は?

 i-plugは新卒採用と20代~30代の若手世代への転職支援をしている会社だ。メインはOfferBoxという新卒採用のダイレクトリクルーティングサービスを提供している。従来のエントリー型の新卒採用では、知名度の低い企業の新卒採用が苦戦する。そこにOfferBoxが企業と一緒になってサービスを提供して新卒採用をサポートするもの。

 学生のOfferBoxへの登録数も順調に増えている。2023年卒の4Q末時点の決定人数は6,422人、前年は5,027人で大きく増加している。現在は新卒の応募者の3人に1人がダイレクトリクルーティングサービスに登録している状況だ。

 OfferBoxのプランは、早期定額型と成功報酬型の2つがある。早期定額型は利用料が設定されており、たとえば、3名採用予定で75万円だ。また、1名採用につき38万円の成功報酬となっている。一般的な中途採用の仲介手数料が年収の30%前後と言われており、年収600万円の人材で180万円くらいかかることを考えると割安だ。

■競合他社は?

 新卒向けのダイレクトリクルーティングの競合他社は少なくない。i-plugのOfferBoxのほか、キミスカ(グローアップ)、アカリク(アカリク)、TECH OFFER(テックオーシャン)、キャリアチケットスカウト(レバレジーズ)など数多くある。ダイレクトリクルーティングのサポートをする仲介企業も存在する。

■i-plugの財務状況は?

 i-plugの2023年3月末時点の財務諸表をみると、現預金は23.8億円、有形固定資産はほとんどない、のれん等の無形固定資産は5.0億円となっている。負債をみると、借入金が約10億円となっている。現状、利益剰余金は△2.3億円で累積利益はマイナスの状況だ。たしかに成長性に期待は感じるものの、激しい市場シェアの争いの真っ最中というところ。

■i-plugの株価推移は?

 i-plugの時価総額は約70億円。業績や株価指標をみると割高な株価となっている。いっぽうで、成長性という点では新しい分野である新卒ダイレクトリクルーティングというのは期待が持てる領域であることは確かだ。ダイレクトリクルーティングというと、ビズリーチのビジョナルが驚異的な業績を上げており、新卒向けのダイレクトリクルーティングサービスも同じような市場に育つ期待感はある。

前年比+40%超の成長のビジョナル、「ビズリーチ」が好調!(2022年1月30日投稿

 i-plugはPaceBoxという20代~30代向けの転職サービスも立ち上げており、今後の成長への期待感があり、時価総額70億円を保っている状況だ。ただ、成長性が鈍化したり、止まってしまうと時価総額は30~40億円くらいまで下落する可能性がある点に留意が必要だ。

(画像1)i-plugの株価推移

以 上

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする