SBIインシュアランスグループ!損保、生保、少額短期保険のネット保険会社!

 SBIグループで損害保険、生命保険、少額短期保険の子会社を取りまとめるSBIインシュアランスグループ(以下、SBI保険)。上場以来、SBI保険の株価はなかなか浮上しない。インターネットを中心に保険を販売するビジネスモデルであるものの、営業利益率は3%程度。売上高は前年比で6%ほど伸びているものの、「儲かる」ビジネスモデルと認識されず、株価は低迷中。さまざまな保険を取りあつかうSBI保険に明るい未来はあるのか?

■基本情報(2020年6月26日時点)

  • 株価:948円
  • 時価総額:235億円
  • 予想PER:-(未定)
  • PBR:0.56倍
  • 予想配当利回り:-(未定、2019年度はゼロ)
  • 自己資本比率:23.5%

■SBI保険は儲かるのか?営業利益率と事業規模の差!

 SBI保険は損害保険、生命保険、少額短期保険の大きく3つの事業をおこなっている。上場している損保、生保である東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループ、第一生命、ソニーフィナンシャルなどの大手とくらべるとSBI保険の事業規模は小さいものの、それでも売上高は700億円を超える規模。しかしながら、時価総額をみると、大手損保、生保は時価総額1兆円を超えているものの、SBI保険はたった200億円程度。その大きな違いはどこからくるのか?

 SBI保険の2020年3月期の売上高は705億円(前年比+6.1%)、営業利益は23.6億円(前年比+10.7%)。やはり気になるのは営業利益率が3%程度と低い点だ。東京海上は営業利益率6.7%、第一生命は3.1%、ソニーフィナンシャルは6.3%。大手損保の東京海上、大手複合保険会社のソニーフィナンシャルとくらべると、SBI保険の利益率は半分程度。第一生命とくらべると、営業利益率は同じレベルであるものの、第一生命の売上高は7兆円を超えていて、時価総額は1.6兆円。単純に事業規模に100倍の差があるので、その差が時価総額に反映されている。

 SBI保険が時価総額を拡大するためには、事業規模の拡大と営業利益率の改善が必要だ。インターネットを中心に販売しているSBI保険は、イメージ的には利益率が高いビジネスモデルを想定していたものの、実態はまだまだ「稼げる」ビジネスモデルに育っていない状況だ。前年比での成長も1ケタ(+6.1%)のため、期待先行で株価があがる状況では「今」はない。

■SBI保険の事業状況は?なぜ営業利益が低い?

 SBI保険の売上高をみると、損害保険4割、生命保険3割、少額短期保険3割という割合。いっぽう、セグメント利益をみると、損害保険は△1.1億円の赤字、生命保険は+25.5億円の黒字、少額短期保険は+5.7億円の黒字で、生命保険が業績を引っ張っている構造だ。

 SBI保険の生命保険事業は主に団体信用生命保険(以下、団信)、定期保険、個人年金保険。団信は住宅ローン専用の生命保険で、住信SBIネット銀行とタッグを組んで取り組んでいる生命保険。住信SBIネット銀行の住宅ローン残高はすでに4兆円を突破。言い換えると、ここからSBI保険の団信が急激に伸びていくのか慎重に見極める必要がある。

 損保事業は△1.1億円の赤字。損保事業の売上高287億円に対して、支払保険金は192億円、損害調査費36億円と合計すると228億円のコスト。さらに、営業費などで75億円が発生している。

 生保事業は売上高205億円のうち、保険料収入は122億円、資産運用収益が32億円、その他で51億円となっている。保険料収入が122億円に対して、保険金等の支払は124億円。さらに事業費が36億円ある。生保事業としては保険料の資産運用などでなんとか利益を出している構造だ。

■保険料で稼ぐのではなく、資産運用で稼ぐビジネスモデル!

 SBI保険は2020年3月期の保険料収入599億円(損保:268億円、生保:122億円、少額短期保険:209億円)に対して、保険金の支払いは460億円。さらに事業費や営業費のコスト194億円が発生する。単純に計算すると、保険料収入599億円から保険金と事業費等の654億円を差し引くと、△55億円の赤字。

 SBI保険が収支プラスになる要因は、これまでの保険料収入による資産運用益+50億円が大きく影響している(その他利益も数億円ある)。SBI保険のB/S(バランスシート)をみると、資産の部に有価証券が1,179億円あり、これが資産運用益の源泉だ。SBI保険は有価証券の具体的な中身を公表していないため、詳細はわからないが、この有価証券の価値の変動によっては減損リスクがあるので注意が必要だ。

 独立系のネット生保であるライフネット生命をみると、保険料等収入は165億円、保険金の支払いは38億円、単純に計算すると収支は+127億円となっている。ライフネット生命は資産運用でリスクをできるだけ取らない方針のため、資産運用収益はたった3億円と利回りはSBI保険に劣る(有価証券は321億円のため、年率1%程度の運用益)。

■SBI保険の株価推移は?

 SBI保険は上場時に最高値2,169円をつけて、そこからずっと低迷している。現在の時価総額は200億円を超える程度で、割高さは小さい。なにかポジティブなサプライズがあれば上昇トレンドに転じる可能性は十分ある。もう少し、業績の改善を見届ける必要がありそうだ。

以 上

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