プレスリリース大手のPR TIMES(PRタイムス)。利用企業数は7.6万社を突破し、国内上場企業の利用率は52.2%。かなり情報インフラとして普及が進んでいる。SaaS型(サブスクリプションモデル)の事業モデル。今期は将来の更なる成長のために広告宣伝費を中心に成長投資をしており、増収減益の計画だ。今後のPR TIMESの業績と株価の行方は?
プレスリリース(企業PR)のPR TIMES(PRタイムス)、サブスク型の強いビジネスモデル!(2021年2月7日投稿)
■基本情報(2023年1月27日時点)
- 株価:1,820円(10年来高値:4,815円)
- 時価総額:245億円
- 予想PER:22.0倍
- PBR:5.54倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:86.2%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:4,067人(2022年2月28日時点)
■PR TIMESの業績は?
PR TIMESの2023年2月期の第三四半期の売上高は43.1億円(前年同期比+19.5%増)、営業利益11.0億円(前年同期比△27.8%減)の増収減益。PR TIMESの売上総利益率は+89.3%(前年は+88.7%)、営業利益率は+25.5%(前年は+42.1%)。
PR TIMESの売上総利益額は38.5億円(前年は32.0億円)と前年比で増加。いっぽう、販管費は27.5億円と前年の16.8億円から+10.7億円の増加となった。売上総利益から販管費をマイナスすると、営業利益は11.0億円と前年の15.2億円から大きくさがることとなった。
販管費増の要因は、広告宣伝費の増加と人件費の増加だ。広告宣伝費はテレビCMを放映した影響が大きく、前年の7倍の水準だ。人員も2020年度は48名、2021年は80名、2022年度の今回は105名と2年間で倍増させている。
■PR TIMESの事業内容は?
PR TIMESは、プレスリリース事業、Jooto(タスク管理ツール)、Tayori(カスタマーサポートツール)の3つの事業を行っている。しかしながら、3つの事業の売上内訳は公表されていないものの、ほぼプレスリリース事業と思われる。
プレスリリース事業の利用者企業数は7.6万社を突破。年間でだいたい1.5万社増えている計算になる。国内の上場企業の利用割合は50%を突破しており、現在は52.2%まで上昇。上場企業のなかにはプレスリリースに消極的な企業があると考えると、どこまで上昇できるかがポイントになる。
プレスリリースの利用企業者数は増加しているものの、年間のプレスリリース件数は8.9万件と前年の8.3万件から伸び率がそれほど高くない。以前の伸び率と比較すると鈍化している。最近ではプレスリリースの動画も増えているものの、こちらも増加率が鈍化傾向だ。
プレスリリースについては収益性の高い事業であり、先駆者としての利益を確保できている。いっぽう、導入企業数には限界が見えており、新規事業など事業領域の拡大が必要と思われる。そのためにJootoやTayoriを強化しているように見える。
■Jooto(ジョートー)とは?
Jooto(ジョートー)とは、タスク管理ツールである。チームメンバの未着手、進行中、完了などタスク状況を共有ツールで、業務やプロジェクトを効率的に進めるツールだ。競合ツールとしては、slacks、Chatwork(チャットワーク)、Teamsなどのグループツールや専用の他のツールも多い。
Jootoの有料利用の企業社数は1,908社と伸び率は鈍化している。1社あたりの平均単価は4,110円とのことで、この利用単価が月額単価であれば年間売上高は約94百万円となる。競合を意識してか、平均利用単価が低すぎるように思う。
■Tayoriとは?
Tayoriは、問い合わせフォーム、FAQ、アンケート、チャットの4つの機能を備えたカスタマーサポートツールだ。社内、顧客とのコミュニケーションで必要になるツールを備えている。競合のITツールも多く、マイクロソフトのOffice365のFormsなども競合になる。その他にもEasy Mail、Formrun、Formmailer、formzuなど多数の競合サービスがある。
Tayoriの料金プランは、プロフェッショナルプラン(月額)7,400円、スタータープラン(月額)3,400円と割安だ。Tayoriの有料アカウント数は832件と現在はそれほど多くない。なお、平均利用単価は6,015円だ。
■PR TIMESの財務状況は?
PR TIMESの2022年11月30日時点の財務諸表をみると、現預金は35.2億円と多く、目立った固定資産の金額は計上されていない。また、有利子負債はゼロと財務的には超優良企業だ。
■PR TIMESの株価の状況は?
PR TIMESの時価総額は約250億円。コロナ禍に株価は大きく上昇し、一時は時価総額500億円を超えていたものの、現在は半値以下まで下落。株価が上昇しない理由は成長性の鈍化に尽きる。プレスリリース事業も国内に限定されるため、将来的な事業拡大の目途が見えない。
現在のPR TIMESの事業規模は約60億円であることを考えると、将来的には売上高100億円がいまの延長線上では限界ではないだろうか。営業利益率40%で考えると、時価総額は400~500億円くらいが限界のように見える。今後はいかに事業領域を拡大できるかに期待したい。
以 上