飲食店向けBtoBコマース「魚ポチ」のフーディソン、生鮮流通の変革を起こすか?

 中小飲食店向けの鮮魚を中心とした仕入サービス「魚ポチ」や鮮魚店「sakana bacca(サカナバッカ)」を展開しているフーディソン。2013年4月設立、従業員数224名の生鮮流通会社。人材紹介エージェントの「フード人材バンク」も運営している。フーディソンの創業者はエス・エム・エスの創業メンバ。社外取締役にはエムスリーの代表取締役の谷村氏も名を連ねる。

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■基本情報(2023年2月17日時点)

  • 株価:2,160円(10年来高値:3,440円)
  • 時価総額:95億円
  • 予想PER:121.2倍
  • PBR:4.93倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:61.1%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:上場後の株主数は未公開(現時点)

■フーディソンの業績は?

 フーディソンの2023年3月期の第三四半期の売上高は38.9億円(前年同期比+44.8%増)、営業利益1.2億円(前年同期は△0.5億円の赤字)と増収黒字転換。フーディソンの売上総利益率は+36.5%(前年同期は+38.9%)、営業利益率は+3.1%。

 フーディソンの売上総利益は14.2億円に対して、販管費が13.0億円となり、差額の+1.2億円が営業利益の黒字となった。

■フーディソンの事業内容は?

 フーディソンは大きく3つの事業を行っている。BtoBコマースの「魚ポチ」、BtoCコマースの「サカナバッカ」、HRとして「フード人材バンク」の3つ。

 BtoBコマースの「魚ポチ」の売上高が約7割、「サカナバッカ」が約2割、「フード人材バンク」が約1割という売上高比率になっている。「魚ポチ」は新型コロナウイルスによる飲食店の営業が完全にオープンになり、売上高は順調に伸びている。

 「サカナバッカ」は伸びているものの伸び率が低い。HRはエス・エム・エスの経験を生かした事業領域であるものの、売上高は横ばいがつづく。「サカナバッカ」の店舗数は東京都内の8店舗(グランスタ東京店、新橋、豪徳寺、五反田、中延、都立大学、中目黒、エキュート品川店)。

 飲食店向けの人材サービスは、リクルートキャリア、パソナ、エンエージェントなど多数の競合がいるため、なかなか伸ばすのが難しいと思われる。決算説明資料を見るかぎり、どの事業で利益を上げているかわかりにくい。

■「魚ポチ」とは?

 「魚ポチ」のビジネスモデルがわかりにくい。鮮魚のBtoB向けのEコマースであることはわかるものの、在庫のリスクや手数料形態などが開示されていない。取引高に対してマージンを取っているのであれば、フーディソンのリスクは低いものの、フーディソンが買い取る事業モデルであれば在庫リスクが残る。

 「魚ポチ」の登録店舗は2.5万店舗を突破(ただし、アクティブユーザー数は3,601ユーザーと決算説明資料に記載)。全体の約40%は和食居酒屋が利用、20%は魚介・海鮮居酒屋だ。ほかには、懐石・割烹料理屋、イタリアン、寿司屋、フレンチなどと飲食店がつづく。基本的に中小飲食店向けのEコマースだ。毎日15:30~3:00までの注文で翌日に商品を届けることができる。

■フーディソンの財務状況は?

 フーディソンは2022年12月16日に東証グロースに上場。上場時に約16億円の資金を調達(売出を入れると28億円)。フーディソンの2022年12月末の財務諸表をみると、現預金は18.6億円、商品は約1億円。有利子負債は約6億円。上場時の16億円の調達がないと厳しい状態であるものの、現時点では資金は豊富。

 フーディソンの利益剰余金は△5.2億円のマイナス。これまでは成長を重視しており、それほど利益がでる状態ではなかったと思われる。

■フーディソンの株価推移は?

 フーディソンの時価総額は約100億円。2023年2月13日に決算発表と業績予想の上方修正をしたものの、株価は一気に下落。そもそも、株価はファンダメンタルズにくらべて割高だ。業務用食品卸のECサイトを運営するミクリード(時価総額:約20億円)と事業規模は変わらないものの、フーディソンは5倍の時価総額と評価されている。

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 売上総利益率もほぼ33%前後と似ており、フーディソンの株価が高過ぎることがわかる。フーディソンは3Qに売上高のピークを迎え、4Qは売上高が大きく下がる傾向がある。正直、ここから時価総額は半値の50億円くらいまで下がってもおかしくない。プロ向けの中小飲食店がここから店舗数が3倍、4倍に伸びることがなく、フーディソンの目指すマーケットの規模をどこまでと考えることができるか。それほど大きな市場ではないのではないか?

(画像1)フーディソンの株価推移

以 上

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