家事代行マッチングのCaSy(カジー)、成長が期待できる事業モデルか!?

 家事代行のマッチングプラットフォームサービスを提供しているCaSy(カジー)。2014年1月設立、従業員数45名。お掃除代行、お料理代行のサービスを提供している。共働き世帯を中心に家事代行のニーズは高まっていくと思われるものの、ベビーシッターなどの本当に必要とされるサービスとの差別化などどうするのか?CaSyの事業内容を理解してみたい。

■基本情報(2022年9月9日時点)

  • 株価:1,001円(10年来高値:2,098円)
  • 時価総額19億円
  • 予想PER:28.2倍
  • PBR:9.76倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:48.6%
  • 会計基準:日本基準

■CaSyの業績は?

 CaSyの2022年11月期の第二四半期の売上高は6.2億円、営業損失△8百万円。上場したばかりで前年同期比対比は公表されていない。決算説明資料をみると、2Q単期として売上高3.2億円(前年同期比+11.2%増)、売上総利益1.1億円(前年同期比+8.3%増)と前年同期比+10%前後の成長率であることがわかる。

 CaSyの売上総利益率は+33.9%とそれほど低いわけでもない(高いわけでもない)。CaSyの売上規模は年間15億円程度と、これからの成長性がどこまであるか見極めが必要だ。なお、現時点では年間売上高14.6億円(前年比+25.3%増)、営業利益66百万円の黒字を予想している。

■CaSyの事業内容は?

 CaSyは家事代行(お掃除、お料理代行)のオンラインで完結できるマッチングサービス・プラットフォームとしてサービスを提供している。ただし、サービスの状況を見ると、現時点ではCaSyが必死にキャストと呼ばれる家事代行してくれるスタッフと顧客を集めている段階だ。現時点ではマッチングサービスというより、人材派遣会社という位置づけのほうが近いのではないだろうか?

 家事代行サービスを希望する顧客には1時間あたり3,000円前後の費用を徴収し、キャストには時給1,500円を提供している。キャストには業務委託と準社員の2つの形態がある。準社員は時給1,300円となっている(ベアーズ、ダスキン、タスカジ、スマイルプラスなどの競合他社の経験者を大募集している)。準社員は半年ごとの契約更新で、社会保険、雇用保険なども加入となっている。

■家事代行サービスの成長性は?

 CaSyの決算説明資料によると、他国との比較で日本ンお家事代行サービスの利用率が3.5%と低いこと、2025年までに2~5倍くらい市場が拡大することを強調している。共働き世帯数が増加傾向であることも強調しているが、この傾向は2000年代から変わらないトレンドである。

 いまのCaSyの事業内容をみると、①キャストを効率的に集められるか、②顧客を効率的に集められるか、にかかっている。正直なところ、キャストの時給が1,500円であると、1回あたり2~3時間程度の委託では、顧客先までの移動時間を考えると魅力的な仕事とは思えない。つまり、稼げない。

 顧客にとっても、1回6,000~9,000円くらいの家事代行サービスは、パワーカップル世帯でないと負担できる金額ではないように思う。なお、交通費も顧客が負担する。CaSyもキャストが増えれば、管理コストが増加するため、メルカリ、ラクマのような中古品マッチングや、ホテルマッチングサービス、ネット通販などの仲介事業というよりも、家事代行に特化した人材紹介会社のような位置づけに思えてならない。

■競合他社の状況は?

 家事代行サービスの競合他社としては、ダスキン、タスカジ、スマイルプラス、ベアーズなど少なくない。ダスキンを除いて、ほとんど規模が小さく、決算公告をしておらず業績面での状況が見えない(株式会社であれば決算公告は義務となっている)。

 家事代行サービスではないが、ベビーシッターのマッチングサービスを行っているキッズラインは決算公告を公表しており、2020年度は約3,800万円の利益となっているものの、利益剰余金は△4,200万円の累積赤字となっている。家事代行サービスやベビーシッターサービスは市場規模がそれほど大きくなく、まだ利益のでる規模まで成長していないというのが実態だ。

 ベビーシッターよりも家事代行サービスは競争が激しく、他社と差別化を図りながら利益がでるかは悩ましいところ。

■CaSyの資金調達と財務状況は?

 CaSyの2022年5月31日時点のB/Sをみると、現預金は2.8億円、有利子負債は70百万円と少ない。在庫を抱えるわけではないので、利益のでる規模まで成長するとキャッシュの回転は良くなりそうだが、現時点で営業CFは赤字となっている。

 2022年2月22日に東証マザーズに上場し、公募増資1.6億円を実施。既存株主による発行済株式の売却により約1.7億円を売却している。上場の目的としては、資金調達というよりは知名度向上の点やベンチャーキャピタルの出口戦略の点が大きかったのだろう。

■CaSyの株価の行方は?

 CaSyの時価総額は約19億円。最初は面白い事業内容と思ったものの、競合他社が多い点、人材派遣会社と変わらない点、市場規模の拡大が見えない点、から少し成長性に落胆する点があった。競合他社にどのようにして打ち勝つか、いまのところ戦略が見えないし、明確な差別化の点が見えない。

 心配な点は、販売管理費が売上高以上に増加率が大きく、2022年11月期の業績未達になる点だ。すでに時価総額は20億円を割っているが、ここから時価総額15億円前後まで下落する可能性は十分ありえる点に注意が必要だ。

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