回復基調のカクヤスグループ、旅行支援などで業務用の酒類販売が反発!

 業務用や家庭用(宅配)、店舗販売などの酒類販売を展開しているカクヤスグループ(以下、カクヤス)。コロナ禍での営業自粛要請などで店舗向け(業務用)の酒類販売は低迷していたものの、なんとか回復傾向にのった。2019年度からの四半期別では過去最高の四半期売上高と営業利益を計上。今後のカクヤスの業績と株価の行方は?

酒屋のカクヤスグループ、飲食店の自粛営業で業績悪化か!?(2022年2月13日投稿)

■基本情報(2023年2月17日時点)

  • 株価:1,330円(10年来高値:2,370円)
  • 時価総額:127億円
  • 予想PER:62.0倍
  • PBR:6.37倍
  • 予想配当利回り:1.5%
  • 自己資本比率:5.4%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:2,260人(2022年3月31日時点)

■カクヤスの業績は?

 カクヤスの2023年3月期の第三四半期の売上高は847億円(前年同期比+32.2%増)、営業利益1.1億円(前年同期は△25.7億円の赤字)と増収黒字転換となった。カクヤスの売上総利益率は+21.4%(前年同期は+21.3%)と大きな変化はない。

 カクヤスの売上総利益は181億円(前年同期は137億円)と+47億円の増加。販管費は162億円→180億円と+18億円の増加し、売上総利益から販管費を差し引いた結果、+27億円の増益となった。

 カクヤスの業績を1Q~3Qの累計でみると実態がわかりにくい。2023年3Qだけをみると、売上高は309億円、売上総利益70億円、営業利益7.9億円とここ4年くらいのなかで過去最高の売上高、売上総利益、営業利益を出している。

■カクヤスのKPIを見ると?

 カクヤスの業績KPIをみると、家庭用(宅配)はコロナ前を大きく上回る+22%くらいで推移している。居酒屋などでの懇親会や飲み会の機会が大きく減り、宅飲みの機会が増えた構造的な状況がわかる。いっぽう、居酒屋などの業務用は回復基調であるものの、コロナ前の△7%くらいまで回復。一時は△30%まで下落していたので、酒類販売というより居酒屋の営業回復が見てとれる。

 ただ、カクヤスの売上構成比をみると、居酒屋向けの業務用が全体の65.1%で、家庭用の宅配は18.4%、店舗販売は14.9%となっている。カクヤスの業績回復には居酒屋などのリアルな飲食店の売り上げ回復が必須である。

 なお、業務用の拠点は合計48拠点、家庭用拠点は190拠点となっている。

■カクヤスの課題は?

 カクヤスの課題としては人手不足や飲食店の売り上げ回復が大きな課題だ。カクヤス自体の人手不足だけでなく、顧客である居酒屋のアルバイト・パートの人手不足の回復が急がれる。東京都内では、人手不足で持ち帰りしか営業していないお店も見られ、アルバイト不足の深刻さがわかる。

 また、「資本力強化」の課題がある。決算説明資料をみると、利益の積み上がりだけでなく、中長期の視点や財務体質の強化の観点から、資本政策を検討とあり第三者割当増資などの可能性をにおわせている。

■カクヤスの財務状況は?

 カクヤスは2021年5月に食品卸大手の伊藤忠食品、三菱食品から第三者割当増資として22億円を調達している。カクヤスの2022年12月末の財務諸表をみると、現預金は42.6億円、商品58.0億円。いっぽう、有利子負債は約110億円と非常に有利負債が多い。利益剰余金は14.1億円とマイナスだ。

 カクヤスは2019年12月に東証二部に上場したものの、公募と引受証券で合計で約7億円しか資金調達をしていなかった。既存株主の売出として30.5億円を売却しているものの、カクヤスに資金が入るのではなく、既存株主が現金化をしただけだ。

■カクヤスの株価推移は?

 カクヤスの時価総額は127億円。上場公開時の初値は140億円だったので、それほど株価は下落していないように見えるものの、第三者割当増資の22億円を考慮すると、約40%くらいは下落している計算になる。

 ただ、カクヤスは四半期ベースで過去最高益を出しており、海外からのインバウンドが順調に回復すれば、営業利益25~30億円くらい計上できるのではないだろうか。PER15倍で計算しても、時価総額は300~400億円くらいの価値はある。ひとつだけ懸念されるのは新たな増資。自己資本比率が低く、経営陣としては業績が回復したタイミングで増資したいだろう。

(画像1)カクヤスの株価推移

以 上

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