「マッハバイト」「転職会議」など仕事探しをベースにした「送客ビジネス」を展開しているリブセンス。リブセンス社長の村上太一氏は、2011年11月に最年少の25歳1か月で東証マザーズに上場して注目を集めたことでも有名だ。リブセンスは2019年に「DOOR賃貸」を17.5億円でキャリアインデックスに売却、2020年3月に新卒就活生向けの情報サイト「就活会議」をポートに15億円で売却している。事業縮小が続くなか、新規事業のマッチングアプリ事業「knew」は成功するのか?
■基本情報(2021年9月24日時点)
- 株価:225円(10年来高値:3,255円)
- 時価総額:63億円
- 予想PER:ー(業績予想は未定)
- PBR:2.01倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:78.6%
- 会計基準:日本基準
■リブセンスの業績は?
リブセンスの2021年12月期の第二四半期の売上高は19.5億円(前年同期比△17.3%減)、営業損失は△6.7億円(前年同期は△4.0億円)と減収・赤字悪化となった。リブセンスの売上総利益率は+86.0%(前年同期は+90.4%)と高い水準。リブセンスの課題は事業規模に見合った売上高を計上できていないこと。
いかに売上高を増やす新規事業を成功させるかが、リブセンスの今後の株価の上昇への転換を決めることになる。これまでの就職会議とDOOR賃貸の事業売却により現預金は約30億円と豊富にある。もちろん、有利子負債はゼロだ。リブセンスはソフトウェアの開発も販管費に計上していると思われるため、ソフトウェア仮勘定のような将来的に費用になる無形資産の計上もゼロだ。
■リブセンスの事業モデルは?
リブセンスはインターネット検索を活用したIT企業だ。「マッハバイト」や「転職会議」などを中心に顧客企業や広告主にバイト希望者や転職希望者を「送客」するビジネスモデルで成功している。
リブセンスは「マッハバイト」やキャリアインデックスに売却した「DOOR賃貸」でもバイト採用者や入居者にはお祝い金を出すという独自の取り組みをしている。このお祝い金を出すことにより、従来の広告料(掲載料)主体のバイト募集サイトや賃貸募集サイトと一線を画し、成功報酬型という事業モデルを築いてきた。
送客ビジネスのポート(7047)、「キャリアパーク!」など領域特化型ビジネス展開!(2020年9月22日投稿)
■リブセンスの事業状況は?
リブセンスは赤字がつづいている。「マッハバイト」「転職会議」「転職ナビ」ともに新型コロナウイルスの感染拡大により売上高が減少。リブセンスは売上高が減少しているにもかかわらず、従業員の削減はしていない。広告宣伝費は四半期ベースで約3~5億円を投入しており、大きな負担となっている。
リブセンスは売上規模と販管費の金額がうまくマッチしておらず赤字に陥っているのが現状だ。新規事業などで売上を伸ばすか、従業員を整理して販管費を圧縮するかの選択が必要だ。リブセンスは新規事業による売上拡大の戦略を取っている。なお、2021年6月末のリブセンスの従業員数は367名(正社員262名、臨時従業員105名)。
■期待の?リブセンスの新規事業「knew」!
リブセンスがプレリリースした新規事業は提案型マッチングサービスの「knew」というもの。いわゆるマッチングアプリだ。「まるで親友からの紹介」というキャッチフレーズのマッチングアプリだ。
リブセンスによると2026年にはオンライン恋活・婚活のマッチングサービス市場は1,500億円を突破すると見ている。リブセンスのデータ基盤やこれまでのマッチングノウハウを生かすことで、「knew」は市場シェアを取れるとリブセンスは考えている。
上場企業を含めて婚活支援などのマッチングアプリを運営しているのは、イグニスの「with」、ネットマーケティングの「Omiai」、サイバーエージェントの「タップル」、エウレカ(未上場)の「Pairs(ペアーズ)」など。決して、マッチングアプリ市場はブルーオーシャン(未開拓の市場)ではない。なお、イグニスは2021年6月にMBOにより上場廃止(非公開化)している。
マッチングアプリ「with」のイグニス!株価は絶好調、VR事業の展望は?(2020年8月29日投稿)
マッチングアプリ「Omiai」のネットマーケティング、会員情報流出でピンチに!(2021年5月23日投稿)
■リブセンスの株価推移は?
リブセンスは2013年7月に上場来高値をつけた。当時の時価総額は600億円を超えていたものの、現在は10分の1以下まで株価は下落。グロース銘柄の成長が見えなくなると、徹底的に株は売られる構造がリブセンスのチャートに表れている。リブセンスに投資していた人はアベノミクス相場の恩恵をまったく得ることができていない。
正直、マッチングアプリ「knew」に期待するのは難しいと個人的には感じる。マッチングアプリは競合他社が多く、いかに女性利用者を増やすかがマッチングアプリ利用増のキーとなる。リブセンスが他社と差別化して成功する理由はいまのところ見つからない。成功の兆しが決算に出てから投資しても遅くはないかもしれない。
そもそも、マッチングアプリを成功させようと思うと広告宣伝の投資が大きくなり、当面は赤字が拡大する可能性がある。婚活・恋活市場はコロナ禍のなかでそれほど活発ではないとも言われており、リブセンスとしてはアフターコロナ後の市場反発の流れに乗りたいのかもしれない。
以 上