医療福祉関係の人材事業を展開し、最近は非医療福祉関係の事業を成長させているトライト(TRYT)。日本の高齢化社会への対応にともない、介護業界の改革が必要とされ、トライトは人材確保とICT(情報コミュニケーション技術)を提供している。65歳以上の人口増加と人手不足に解決策を提供する企業であり、成長市場にあると言えるだろう。
■基本情報(2024年5月24日時点)
- 株価:454円(10年来高値:1,133円)
- 時価総額:454億円
- 予想PER:8.2倍
- PBR:1.81倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:32.2%
- 会計基準:IFRS基準
- 株主数:13,216人(2023年12月31日時点)
- 事業価値:728億円
■トライトの事業状況は?
トライトの2024年12月期の第一四半期の売上高は118億円(前年比+11.2%増)、営業利益△6.5億円(前年は△1.8億円の赤字)と増収赤字幅悪化となった。トライトの売上総利益率は+59.2%(前年は+61.1%)と高い。
トライトの売上総利益は前年の65.2億円→70.1億円と+4.9億円の増加、販管費は前年の67.2億円→77.1億円と+9.9億円となり、差し引きで△5.0億円の営業利益悪化となった。しかしながら、人材紹介事業は4月に売上高が集中するため、トップラインである売上規模が確実に成長していることはプラスであり、第二四半期にどのような営業利益になるか期待したい。
■トライトの事業内容は?
トライトは医療福祉分野の人材紹介(仲介)と人材派遣がメインの事業となっている。社会のう時として、医療福祉事業者は今後も右肩あがりに増えていく予想となっており、特に介護人材の不足が顕著になると見込まれている。
トライトのキャリアアドバイザーは約1,680名(2024年3月末時点)で、離職率は21%前後となっている。意外に離職率が高い。なお、トライトグループの従業員数は7,512名、トライト単体では255名となっている。平均年齢は35.3歳、平均勤続年数は2.7年、平均年収は640万円。それほど給与水準が低いわけではない。
2024年3月末時点の人材派遣者は約2,220名で、平均派遣単価は66万円。これはストック売上となっている。
■期待される介護事業所向けのICT
トライトは介護事業者向けのICT(Information and Communication Technology(情報通信技術))にも力を入れている。子会社のブライト・ヴィ―社が「ケアデータコネクト」という技術を用いて、介護記録を入手する仕組みを提供している。
たとえば、バイタル情報(体温、血圧など)、ナースコール、映像センサー、ベッドセンサーなどから「ケアデータコネクト」を通じて情報を収集するもの。なお、NTT東日本と連携している。
■現在の事業価値は?
トライトの事業価値は約730億円(時価総額+有利子負債ー現預金で計算)。2024年12月期の予想EBITDAは110億円のため、EV/EBITDA倍率は6.6倍となる。成長性がこのまま前年比+10%超で推移するならば割安感はある。いっぽうで、成長率の悪化またはEBITDAの未達があると、株価のさらなる下落があるかもしれない。
■トライトの財務状況は?
トライトの2024年3月末の財務諸表をみると、現預金は22億円、のれん520億円、有形固定資産は115億円。のれんが大きい。負債は、有利子負債が約300億円となっている。有利子負債の返済を優先すると考えると、配当はまだ先になるかもしれない。
■トライトの株価推移は?
トライトの時価総額は約450億円。株価指標的には割安感あるものの、約300億円の有利子負債を考慮して財務状況をみる必要がある。今期の業績予想をみると、前年比+15.6%を計画しており、第二四半期でこれを上回る成長ができるかどうかがポイントだ。トライトは成長市場にあるものの、今後も成長していくということを数値で示せるかどうかが重要だ。
また、エス・エム・エス(SMS)との事業の違いなど分析が必要だ。
医療・介護分野の人材仲介サービス展開のエス・エム・エス(SMS)、つづく高収益!M&A活用(2020年10月31日投稿)
以 上