サイボウズ「kintone」に連携する業務アプリのトヨクモ、高い成長性つづく!

 2010年8月にグループウェア事業を展開するサイボウズの100%子会社として設立され、サイボウズ「kintone」の連携サービスをクラウドで提供しているトヨクモ。社名のトヨクモは「豊雲野神」という雲を神格化した存在とクラウドの日本語「雲」から名付けられたようだ。2014年3月に経営陣がMBOを実施して、親会社のサイボウズより70%の株式を取得している。現在、サイボウズは12.7%のみトヨクモ株を保有している。トヨクモの業績と株価の行方はどうなるのか?

グループウェアのサイボウズ(4776)、クラウド関連売上は70%突破!コロナ禍で伸びる(2021年1月2日投稿)

■基本情報(2021年2月19日時点)

  • 株価:2,433円(10年来高値:5,595円)
  • 時価総額:247億円
  • 予想PER:117.4倍
  • PBR:21.08倍
  • 予想配当利回り:0.2%
  • 自己資本比率:67.9%
  • 会計基準:日本基準

■トヨクモの業績は?

 トヨクモの2020年12月期の売上高は11億円(前年比+43.9%増)、営業利益2.5億円(前年比+152%増)の大幅な増収増益となった。トヨクモの売上総利益率は+86.6%(前年は+83.4%)、営業利益率は+22.5%。トヨクモは、継続課金モデルのクラウドサービスを展開しており、売上規模が増えれば高い売上総利益率により爆発的に利益が増えるビジネスモデルとなっている。現時点での売上規模は年間10億円と小さいものの、将来的な成長性と収益性により時価総額200億円を超える水準の株価となっている。

■トヨクモの提供しているサービスは?

 トヨクモは災害時などの「安否確認サービス」とサイボウズ「kintone」に連携したサービス(クラウド型ソフトウェア)を提供している。ビジネスとしてはBtoB。トヨクモはもともとはサイボウズの子会社で、現在でもビジネス上で密接な関係となっている(サイボウズはトヨクモの約12%の株式を保有)。サイボウズの事業が伸びており、自然体でもトヨクモの事業には追い風が吹ている。

 心配されるのはサイボウズとの関係だ。いまはサイボウズと良い関係を築けているものの、何かがキッカケで関係が崩れた場合、これまでと変わらず安定的に「kintone」の連携サービスを提供できるか不安な点が残る。

■攻める広告、テレビCM開始!

 トヨクモは2019年12月期よりテレビCMをスタートして知名度の向上に努めている。トヨクモは年間売上高が10億円レベルの規模でありながら、年間2億円を超える広告宣伝費を投入中だ。そのうえで、営業黒字を維持している。

■2021年12月期(次期)の見通しは?

 トヨクモは成長のスピードを加速させている。2021年12月期は売上高14.3億円(今期は11億円)、営業利益3.1億円(今期は2.5億円)を計画している。サイボウズと同じようなビジネスモデルであり、テレビCM投入のタイミングなど成功パターンが見えていると思われる。サイボウズ「kintone」の顧客数が増えており、トヨクモの連携サービスを導入する可能性の高い顧客規模が増えていると言える。

■トヨクモの株価の行方は?

 トヨクモの時価総額は約250億円。ほぼ同じ規模のクラウドサービスを展開しているrakumo(ラクモ)の時価総額は120億円ほどとトヨクモは2倍の評価となっている。サイボウズの株価も好調なため、トヨクモの株価は相場よりも高く評価されているかもしれない。トヨクモにしろ、rakumoにしろ、売上規模は10億円の企業であり、時価総額100億円、200億円は将来の成長をしっかり織り込んだ株価となっていることを忘れてはならない。

 トヨクモが3年~5年後、売上高50億円~100億円、営業利益10億円~20億円に成長していた場合、いまの時価総額を超えている可能性は十分ありえる。いっぽうで、成長性が鈍化したときは一気に売られる可能性はある。もうひとつ、2020年3月のコロナショック後、クラウドなどITサービス企業の一部の企業は積極的に海外投資家に買われており、予想PER100倍を超える会社も少なくない。相場の流れが変わった場合、トヨクモは事業の成長速度は変わらないものの、相場の動きで大きく売られる可能性があることに留意が必要だ。

 トヨクモのひとつの可能性としては、サイボウズによる持分の買い増しだ。サイボウズが事業戦略として、トヨクモの持分法適用会社や連結子会社を考える可能性はゼロではない。そのときに第三者割当増資またはTOB(公開買付)などの手法がとられるはずだ。後者のTOBであれば、株価にはプラスになる可能性が高い。

(画像5)トヨクモの株価推移、下落がつづく

以 上

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