EV充電器、半導体関連の新電元工業!未来を支える技術

 半導体関連のダイオード(一般整流ダイオード、ブリッジダイオード他)や電気自動車(EV)向けの充電器、自動車向けの電装部品を製造・販売している新電元工業。1949年8月設立、連結従業員数5,268名(2022年5月20日時点)の半導体、電装製品のメーカー。あまり認知度は高くないものの、電気自動車向けの充電器でも期待される企業のひとつ。新電元工業の業績と株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2022年6月3日時点)

  • 株価:3,250円(10年来高値:10,700円)
  • 時価総額:336億円
  • 予想PER:7.1倍
  • PBR:0.58倍
  • 予想配当利回り:4.0%
  • 自己資本比率:42.4%
  • 会計基準:日本基準

■新電元工業の業績は?

 新電元工業の2022年3月期の売上高は922億円(前年比+14.6%増)、営業利益55.6億円(前年は△10.8億円の赤字)と増収黒字転換となった。新電元工業の売上総利益率は+20.2%(前年は+14.2%)、営業利益率は+6.0%(前年は赤字)。半導体などデバイス関係の事業をしているものの、粗利(売上総利益)がそれほど高い事業モデルではない。また、売上総利益率が14.2%→20.2%と大きく変動していることは珍しい。

■新電元工業の事業内容は?

 新電元工業はそれほど知名度の高い企業ではないものの、従業員数は連結ベースで5,000名を超える規模。半導体の電気を制御するダイオードをメインに製造しており、自動車向けの構成比率が50%を超えている。その次に産業機器(工場設備、機械他)が20%前後、家電が15%前後となっている。

 去年は自動車向けが半導体不足などの影響が新電元工業にも波及し、結果として営業赤字となった。自動車はガソリン車から電気自動車に世の中のニーズが変化していくため、新電元工業として電気自動車で伸びることができるかが重要なポイントになる。ガソリン車でエンジンが必要だったものが、電気自動車ではモータに置き換わるため、淘汰される製品がでてくることは見えている。

 新電元工業は自動車、産業機器、通信市場においてエネルギー効率の追求をする製品を供給しており、あたらしい世界でも生き残る製品を作っている。脱炭素社会の実現に向けて、エネルギーの低損失、機器の小型化・高品質化は必須で、そのサポートをする製品をつくっている。

■期待される電気自動車(EV)需要!

 新電元工業が期待されるのは電気自動車向けのEV充電器だ。競合他社としてはNEC、GSユアサ、菊水電子工業、日東工業、ニチコン、日立製作所など数多くの企業がEV充電器の市場に参入している。

 電気自動車がガソリン車よりも普及する世界になったときに、世の中でどこでも電気自動車に電気を供給(チャージ)できるインフラが必要になるため、どこかで一気にEV充電器の需要が爆発すると見られている。

■新電元工業の中計は?

 新電元工業は2024年度には売上高1,180億円、営業利益率6.6%(78億円)を第16次中期経営計画で目指している。営業利益率がそれほど高くないことが悩ましい。2023年度は売上高1,080億円、営業利益57億円(営業利益率+5.3%)を目指す。

 新電元工業の中計をみると、それほど詳しい戦略が記載されておらず、EV充電器などの拡大をどのくらい織り込んでいるかわからない。DX推進、稼ぐ体質づくり、市場投入のスピードアップなど抽象的なワードが並ぶものの、具体的にどの製品でどのくらいの規模になるかは開示されていない。

■新電元工業の株価推移は?

 新電元工業の時価総額は約340億円(売上高920億円、営業利益56億円)。事業規模や収益額をみると、もう少し高くなっていたもおかしくないものの、自動車部品メーカーとして見られている。結果として、株価は低迷中だ。半導体銘柄やEV充電器メーカーとして見られた場合は、500~800億円くらいの株価になっていてもおかしくない。

 EV充電器を製造している菊水電子工業は時価総額100億円(売上高92億円、営業利益9.0億円)、日東工業は時価総額920億円(売上高1,330億円、営業利益86億円)、シンフォニアテクノロジーは時価総額420億円(売上高950億円、営業利益75億円)。

電気自動車向けEV充電設備の日東工業、次世代の標準となるか?(2022年5月29日投稿)

 新電元工業の問題点は収益性だ。売上総利益率が+20%前後と低く、商品がコモディティ化し競争が激しくなっている可能性がある。EV充電器は期待が高いものの、競合他社が多すぎて、それほど収益が出ない可能性もあり、注意が必要だ。

(画像1)新電元工業の株価推移

以 上

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする