工場を持たないファブレスで広告宣伝費を大量に投入して定期購入者数を増やす健康食品・サプリ事業をおこなっているファーマフーズ。事業規模は拡大しているものの、明治薬品の子会社化などの特殊要因を除くと、低成長に陥っている。むしろ、広告宣伝費の投入をやめると一気に売上高が下がる危機がある。ファーマフーズの業績と株価の行方は?
育毛剤「ニューモ」足踏み、ファーマフーズの業績の行方は?(2022年2月6日投稿)
ニューモ育毛剤好調のファーマフーズ、9カ月間の広告宣伝費は190億円に!(2021年6月1日投稿)
■基本情報(2022年6月3日時点)
- 株価:1,483円(10年来高値:3,820円)
- 時価総額:431億円
- 予想PER:10.7倍
- PBR:4.67倍
- 予想配当利回り:1.34%
- 自己資本比率:23.4%
- 会計基準:日本基準
■ファーマフーズの業績は?
ファーマフーズの2022年7月期の第三四半期の売上高は440億円(前年同期比+30.5%増)、営業利益9.3億円(前年同期比△64.6%減)の増収減益。ファーマフーズの売上総利益率は+80.0%(前年同期は+85.0%)、営業利益率は+2.1%(前年同期は+7.8%)と悪化傾向となっている。
ファーマフーズの今回の売上高440億円には子会社化した明治薬品の2021年8月~2022年4月30日までの売上高39.6億円が含まれている。その売上高を除くと約400億円となり、前年同期比は+30.5%ではなく+18.7%にとどまる。いっぽう、広告宣伝費は前年同期の194億円→262億円と+68億円増やしており、広告宣伝費による一時的な集客がなければ成長感の演出がむずかしいビジネスモデルとなっている。
■ファーマフーズの主張は?
明らかに製品力がなく、広告宣伝費に頼り過ぎている構造が見ているものの、ファーマフーズとしては翌期以降の成長のために広告宣伝費は必須とのスタンスだ。これまでは育毛剤ニューモの宣伝に力を入れていたが、いまは明治薬品のシボラナイトGOLDに積極的に広告宣伝している。これが今期の業績下方修正の要因としている。
シボラナイトGOLDの定期顧客件数は1.4万件(2022年1月末)→28.4万件(2022年5月末)と20倍以上の伸びを達成している、としている。この増加の背景として大量の広告宣伝費が必要という論理を示している。
2022年7月期の当初の業績予想は売上高606億円、営業利益57.7億円、当期純利益40.2億円だったものが、修正後は売上高609億円、営業利益3百万円、当期純損失△15億円と大幅な下方修正となった。
■ファーマフーズの財務状況は?
ファーマフーズの財務状況は悪化している。2021年7月末の自己資本比率は40.4%だったものが、2022年4月末は23.4%まで低下。有利子負債は約100億円増加の140億円、現預金は95億円とネットで借入超となった。また、商品残高が26億円→48億円と+22億円増加しており、売れ残りが発生している可能性が高い。
単純に前年期末から現預金を100億円使ってしまった状況だ。いったい何に使ったのか?主に、明治薬品の完全子会社化に約23億円、商品増に22億円、残り55億円くらいは広告宣伝費に使用していると思われる。
■ファーマフーズの株価推移は?
ファーマフーズの1年前にあたる2021年6月5日の株価は2,892円(時価総額:840億円)、現在は株価1,483円(時価総額:431億円)とほぼ半減している。ニューモの定期購入者も減少しており、どこかで広告宣伝費を投入しても売上規模が増えず、大きな赤字を計上するタイミングが訪れるはず。
いまだ時価総額は400億円を超えており、ここから株価半減は十分ありえるシナリオであることに留意が必要だ。同じ事業モデルで製品力のある北の達人コーポレーションは2022年2月期は売上高95億円、営業利益20.8億円の好業績を残しているものの、時価総額はファーマフーズより低い約290億円にとどまる。ファーマフーズの株価には引き続き、注意が必要だ。
北の達人コーポレーション、業績堅調も販管費増で営業利益は減少!(2021年10月16日投稿)
以 上