日本最大級の法律相談ポータルサイト運営の弁護士ドットコム、販管費の増加が負担!

 弁護士、税理士などの情報サイトやハンコレスな電子契約サービスの「クラウドサイン」を展開している弁護士ドットコム。時価総額は700億円を超えるものの、株価は高値から5分の1くらいまで下落。期待値が先行しすぎて実態と株価がマッチしてきているというのが現状だろうか。今後の弁護士ドットコムの株価と事業の行方は?

クラウドサインの弁護士ドットコム、ストック売上高で成長つづく!(2022年6月11日投稿)

電子契約「クラウドサイン」の弁護士ドットコム、月間サイト訪問者数は減少気味!(2021年5月9日投稿)

■基本情報(2022年10月28日時点)

  • 株価:3,240円(10年来高値:15,880円)
  • 時価総額:723億円
  • 予想PER:95.9倍
  • PBR:27.1倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:71.9%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:11,262人(2022年3月31日時点)

■弁護士ドットコムの業績は?

 弁護士ドットコムの2023年3月期の第二四半期の売上高は40.5億円(前年同期比+27.2%増)、営業利益3.7億円(前年同期比△18.1%減)の増収減益。弁護士ドットコムの売上総利益率は+84.0%(前年同期は+84.0%)、営業利益率は+9.2%(前年は+14.3%)。

 売上総利益は34億円(前年は26.7億円)あるものの、販管費が30.3億円(前年は22.2億円)と前年から+8億円ほど増加したために営業利益は減益となった。販管費の増加の要因をみると、人件費と広告宣伝費、販売手数料など全般的に増加している。言い換えると、広告宣伝費を前年よりも増額しており、広告宣伝費にお金を突っ込まないと成長性を維持できない段階に来たかもしれない。

■弁護士ドットコムの事業の構成などは?

 弁護士ドットコムの「弁護士ドットコムニュース」の月間サイト訪問者数は1,410万人と2019年度くらいからほぼ横ばい。伸びていない。個人の有料会員数(プレミアムサービス利用料:月額税込330円)は18.8万人と回復傾向にあるものの、右肩あがりで伸びているわけではないことは注意が必要だ。なお、金額ベースに換算すると月間56.4百万円(税抜)の売上高になる。年間で約6億円くらいの事業規模だ。

 弁護士サービスでは「弁護士ドットコムライブラリー」という弁護士向けのサービスを展開しており、その有料登録弁護士数は5,181名(全体の登録弁護士数は22,241名)となっている。だいたい、全体の4分の1くらいが登録しているイメージだ。気になるのは登録弁護士数はなだらかに増加しているものの、有料弁護士登録者数はほぼ横ばいである点だ。おそらく、それほどビジネスにつながらなかったり、低価格の顧客しかつかめないのかもしれず、登録弁護士の入れ替わりが予想される。

■期待されるクラウドサイン!

 クラウドサイン(CLOUDSIGN)の売上高は堅調に伸びており、2023年3月期の第三四半期は10.1億円(前四半期は9.1億円)と順調に増加している。ただ、現在の事業規模は年間40億円くらいであり、いまの時価総額700億円の期待に応えられる規模まで成長できるか疑問は残る。

 電子署名や電子サインは、会社間で使われるケースがメイン。ただ、いまだに押印する文化が残っており、まだまだ電子署名・電子サインの浸透には時間がかかりそうだ。相手先の都合もあり、大手企業などでも併用しているケースが多い。いっぽう、社内のハンコレスはマイクロソフトのTeamsの承認機能やPowerAppsを活用したワークフローで代用されるケースが多い。クラウドサインのライバルとしては、AdobeやDocuSign(ドキュサイン)などが代表だ。

■弁護士ドットコムの財務状況は?

 弁護士ドットコムの2022年9月末時点の財務状況をみると、現預金は13.3億円保有している。有形固定資産はほとんど保有しておらず、ソフトウェアは約6.5億円の計上となっている。SaaS(サブスクリプション型)のビジネスで見られる前受金(先払いのサービス料)は2.0億円くらいしかなく、もちろん、有利子負債はゼロ。財務状況は健全であるものの、時価総額700億円はほぼ将来の成長を反映した数値と考えてよいだろう。

■弁護士ドットコムの株価推移は?

 弁護士ドットコムの時価総額は約700億円。すでに高値から5分の1くらいまで株価は下落している。正直、まだ株価は実態よりも成長を過度に織り込み過ぎていると言えるだろう。弁護士ドットコムの支えはクラウドサインであるものの、最近は迫力ある成長感を示すことができていない。

 時価総額500億円くらいまで下がる可能性は十分あり、相場次第では今の株価から半値になる可能性もあるだろう。弁護士ドットコムは株主数が1万人を超える人気の高い銘柄であるものの、配当も株主優待もなく、含み損を抱えている個人投資家が多く、なかなか上値は重いかもしれない。

(画像1)弁護士ドットコムの株価推移

以 上

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