クラウドのID統合サービスのHENNGE、大型イベントによる広告宣伝費で減益に!

 クラウドサービスのID統合サービス「HENNGE One」を中心にビジネスを展開しているHENNGE(へんげ)。HENNGEの株価下落が止まらない。2021年5月12日に決算を発表したものの、年初来安値水準まで株価は下落。21年1月に1万円を超えた株価は半値の5,000円台まで下落している。売上規模が小さい割に成長率が+20%に満たないことが大きなマイナス要因だ。HENNGEの株価の行方はどうなるのか?

クラウドサービスのパスワード管理のHENNGE(へんげ)、成長鈍化か!?(2021年2月13日投稿)

クラウドサービスへのシングルサインオン提供のHENNGE(へんげ)、月次解約率は0.16%!(2020年12月29日投稿)

■基本情報(2021年5月14日時点)

  • 株価:5,240円(10年来高値:10,610円)
  • 時価総額:850億円
  • 予想PER:440倍
  • PBR:51倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:45.4%
  • 会計基準:日本基準

■HENNGEの業績は?

 HENNGEの2021年9月期の第二四半期の売上高は23億円(前年同期比+17.9%増)、営業利益△23百万円(前年同期は+1.3億円の黒字)と増収減益となった。HENNGEの売上総利益率は+83.1%(前年同期は+81.7%)と高い水準であるものの、売上規模がまだ小さく、十分な売上総利益額を稼ぐ水準にいたっていない。

 今回はHENNGE NOW!という大規模イベントを開催したことにより、2Qの広告宣伝費が+4.9億円(1Qは0.5億円)に急増したことが営業赤字の主な要因だ。かりに広告宣伝が前四半期並みであれば、営業利益は+4.1億円となり大幅な増益となっていた。

■HENNGE NOW!とは?「HENNGE One」の進捗は?

 HENNGE NOW!は2021年2月15日から6日間にわたって行われたオンライン上のデジタルイベント。2021年1月~2月にテレビCMやウェブ・交通広告を積極的に開催して約4.9億円の広告宣伝費を投入したHENNGEにとっての一大イベントだ。実際の参加者は約1万人。動画再生数は2.9万回。正直、広告宣伝に4.9億円を使っているものの動画再生数が2.9万回というのは少なすぎる気はする。

 イベントとしてはID統合サービスである「HENNGE One」を導入してもらうことを最終目的としたイベントだ。「HENNGE One」の導入社数は1,813社(前年同期は1,548社のため+265社導入)、契約ユーザー数は200万人。「HENNGE One」の年間売上規模は約43億円。平均月次解約率は0.18%と低い。導入企業はビズリーチ(ビジョナル)、ヤマハ発動機、ユニ・チャーム、DeNAなど従業員数300名以上の企業が多い。

■ID統合サービスのシングルサインオン(SSO)は必要なのか?

 そもそもID統合サービスである「HENNGE One」は本当に必要なサービスなのか?ID統合サービス=シングルサインオンは脱パスワードのサービスで、1つのパスワードでさまざまなクラウドサービスを利用できるもの。世の中にはパスワード管理の「パスワードマネージャ」というサービスも存在する。

 たとえば、「1Password」や「LastPass」、「Googleパスワードマネージャ」「iCloudキーチェーン」「Microsoft Authenticator」など。シングルサインオンではなくパスワードマネージャという分野が大きく伸びる可能性がある。そのときにはシングルサインオンの需要を取り込んでしまう可能性は十分ある。シングルサインオンのメリットは企業が一括してセキュリティ管理できる点であるが、パスワードマネージャもセキュリティ管理には力を入れている。

 シングルサインオン(SSO)の競合他社としてはOneLogin(ワンログイン)というサービスがある。全世界100か国以上で2,000社が使用。OneLoginはNECや丸紅情報システムズ、サーバーワークスなど多数の企業が日本国内の導入サービスを行っている。競合製品の伸びは「HENNGE One」にとって大きな脅威ではないだろうか。

■HENNGEの株価の行方は?

 HENNGEの売上高は約50億円、営業利益3億円のレベル。売上高は2桁成長しているものの、成長性と収益性を考えると時価総額850億円は高過ぎる。おそらく、株価は反発を繰り返しながら適正水準まで下落していくと思われる。そもそも、約1年間で株価は安値から約7倍まで急騰したものの、利益水準はそれほど大きな伸びはない。過度な期待が株価に織り込まれた結果、いまはその期待が株価から抜け落ちていく過程だと思う。当面は様子見が無難だ。

 HENNGEは新サービス「CHROMO(クロモ)」を2020年8月にスタート。地域住民との双方向コミュニケーションを実現するツールであるものの、いまの段階では売上寄与は少ない。「HENNGE Workstyle」という2019年2月にサービスを開始しているが売上寄与はほとんどないと思われる。

(画像1)HENNGEの株価推移

以 上

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