タレントマネージメントシステムの「カオナビ」を展開しているカオナビ。これまでは労務管理システム（給与計算、年休管理など）は数多くの企業が手掛けているものの、人材情報の一元管理、スキル管理、モチベーション管理など人材データベース管理をメインとするシステムはそれほど見かけなかった。この分野ではカオナビが一歩リードしている状況だ。カオナビの株価と業績の行方はどうなるのか？
■基本情報(2022年1月7日時点）
- 株価：2,493円(10年来高値：7,330円）
- 時価総額：287億円
- 予想PER：1,103倍
- PBR：27.49倍
- 予想配当利回り：0%
- 自己資本比率：31.7%
- 会計基準：日本基準
■カオナビの業績は？
カオナビの2022年3月期の第二四半期の売上高は20.7億円(前年同期比+31.3%増）、営業利益99百万円（前年同期は+1.6億円）と増収減益となった。カオナビの売上総利益率は+72.6%（前年同期は+75.2%）と高い水準であるものの、販管費の増加により売上総利益の増加を相殺した形だ。
カオナビはラクス、freee、Sansanなどと同じサブスクリプション型のストック売上をメインとしており、いかに毎月、新規顧客を積み上げていくかが重要だ。いま営業利益を出すよりも、足元は売上規模の拡大を目指すべき段階であることは間違いない。
■カオナビの事業内容は？
カオナビはタレントマネージメントプラットフォームという人材データ管理のクラウドサービスを提供しているソフトウェア会社。具体的には人材情報を一元管理できる、異動による組織図の自動作成、評価運用の効率化、採用活動のシステム化、人材のスキル管理などの機能を有している。
競合他社としては一般的な労務管理システム、たとえば、ラクスの「楽楽労務」などあるも、最近ではスタメンの「TUNAG（ツナグ）」、ビジョナルの「HRMOS（ハーモス）」、プラスアルファコンサルティングの「タレントパレット」などが競合だ。
これまでは会計システムの会社の時価総額が大きく伸びてきたものの、これからは人材マネジメントシステムの会社の株価も伸びていく可能性は高い。会計システムではラクス、freee、オービックビジネスコンサルタント、TKCなど数多くの企業が大きな市場で戦っている。人材マネジメントはこれからの新しい市場という位置づけで考えてもよいかもしれない。
■カオナビの事業状況は？
カオナビの解約率は1%を割っており、一度導入すると顧客満足度が高く、なかなか解約されない。利用企業数は2,214社とスタメン（約380社）、ビジョナルの「HRMOS」（約900社）、プラスアルファコンサルティング（約600社）にくらべて、頭一つ抜けている状況だ。
カオナビのPBRは約28倍と自己資本にくらべて株価が非常に高騰しているように見えてしまう。しかしながら、カオナビは資本金自体が少なく、あえて利益を抑えて成長投資にお金を回しているので、実態の企業規模よりもPBRが高くなってしまうことに留意が必要だ。
カオナビの販管費の中身をみると、広告宣伝費に年間約５～６億円くらい使っており、現状の営業利益に＋５～６億円くらいが実態の実力と考えても良いかもしれない。
■カオナビのストック売上高は？
カオナビのストック売上高比率は89.1%。２年前は80%を割っていたものの、段階的にストック比率が上昇している。カオナビの従業員数は196名、毎四半期少しずつ従業員が増えている状況だ。
カオナビのシステムを導入している企業は大手も少なくない。トヨタ自動車、一休、Sansan、マネーフォワード、カドカワ、ファミリーマート、本田技研工業など。このタレントマネージメントの分野では出荷社数シェアは４年連続１位。市場シェア28.8%となっている。タレントマネージメントに関するシステム導入率は12.6%と言われており、これからまだまだ市場自体が伸びる可能性を秘めている。
■カオナビの株価推移は？
カオナビの時価総額は約300億円。PBR28倍を見ると、株価指標的には割高感があるのは事実。しかしながら、サブスクリプション型の事業をしているソフトウェア会社と売り切り・買い切りのフロー型のビジネスをしている会社と同列にくらべることはできない。
カオナビの成長がこれから数年から10年くらい続くのであれば、５年後くらいには売上高100億円を超える事業になっている可能性はある。その時、営業利益30億円くらいになっている可能性はある。しかしながら、いまはグロース銘柄の株価が大きく調整しており、カオナビもその流れに巻き込まれる可能性があることを忘れてはならない。
以 上