HRテックのビジョナル、ビズリーチと戦略的人事クラウド「HRMOS」で攻める!

 人材関連のプラットフォームビジネスの「BIZREACH(ビズリーチ)」や戦略的人事クラウドサービスの「HRMOS(ハーモス)」を展開しているビジョナル。積極的な広告宣伝費の投入により表面上の利益額はそれほど大きくないが、広告宣伝費を絞ることでいつでも大きな利益を計上できる事業構造になっている。ビジョナルの今後の業績と株価はどうなるのか?

人材サービス「ビズリーチ」運営のビジョナル、株式市場の期待に応えられるか?(2021年4月29日投稿)

■基本情報(2021年7月21日時点)

  • 株価:5,680円(10年来高値:7,490円)
  • 時価総額:2,037億円
  • 予想PER:522倍
  • PBR:9.36倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:66.8%
  • 会計基準:日本基準

■ビジョナルの業績は?

 ビジョナルの2021年7月期の第三四半期の売上高は206億円、営業利益31.1億円。ビジョナルの売上総利益率は+85.3%(2020年7月期は+84.1%)、営業利益率は+15.1%(2020年7月期は+8.4%)と改善傾向となっている。

 ビジョナルの売上総利益は175億円もあるものの、販管費が145億円発生しており、営業利益は31.1億円にとどまっている。ビジョナルの販管費の大口内訳を確認するには年度の有価証券報告書を確認する必要がある。しかしながら、ビジョナルは上場してから年度決算を一度も公表していないため、まだ年度の有価証券報告書を提出したことがない。その代わりに株式売出届出目論見書をみると、2020年7月度の販管費196億円のうち、主要なものは広告宣伝費76.4億円、給料手当45.9億円と公表している。

 つまり、ビジョナルは広告宣伝費をコントロールすることで年間で50~60億円くらいは営業利益を増加させる余力があるということだ。

■ビジョナルの事業内容は?

 ビジョナルの主要事業は人材プラットフォーム事業の「BIZREACH(ビズリーチ)」。テレビCMでビズリーチを見かけることも少なくないだろう。2021年7月期の第三四半期のビズリーチ事業の売上高は167億円で全体の約8割を稼いでいる。問題はこのビズリーチ事業の成長性が鈍化している点だ。決算説明資料によると、コロナ(COVID-19)が売上高に大きく影響していると説明されている。

 ビズリーチは求職者(会員ユーザ)と採用企業・ヘッドハンターを結び付けるプラットフォームを提供している。採用企業やヘッドハンターから利用料と成功報酬や理論年収の一部を受け取るビジネスモデルとなっている。利用料は固定であるものの、成功報酬などは転職市場が活況になると取引高が増える仕組み。ここにコロナが大きく影響しているというわけだ。

■次の事業の柱となる「HRMOS」とは?

 ビジョナルが力を入れているのは戦略的な人材活用を実現するクラウドサービス「HRMOS(ハーモス)」だ。採用管理や従業員管理ができるクラウドサービスだ。2021年7月期の第三四半期の売上高は8.5億円と規模は小さい。人事・労務管理のクラウドサービスは、ジョブカン、SmartHR、ラクスの「楽楽労務」、プラスアルファ・コンサルティングの「タレントパレット」など競合商品も少なくない。「HRMOS」の利用企業数は897社(前年同期比+11.2%増)、平均解約率は1.4%と低い。

■ビジョナルの株価推移は?

 ビジョナルの時価総額は約2,000億円。ビジョナルの売上総利益率やビジネスモデルをみると、同じようなクラウドサービス企業にくらべると割安感がある。たとえば、ラクスは時価総額5,500億円、freee(フリー)は約5,000億円。しかしながら、ビジョナルの大きな問題は主力のビズリーチの成長率が鈍化している点だ。

 成長性の鈍化がコロナによる一過性のものか見極める必要がある。年間で70億円以上も広告宣伝費を投入していて成長性が鈍化することはマーケット規模の限界がきている可能性がある。もし、前年比でマイナスに落ち込んだ場合は、たとえ利益が出ていても時価総額1,000億円ちかくまで下落する可能性があるので注意が必要だ。

(画像1)ビジョナルの株価推移

以 上

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