「楽楽精算」などクラウドサービスやIT人材事業を展開しているラクス。2021年3月期の業績は好調で営業利益は前年3倍の規模まで増加。決算発表後の2021年5月14日には前日比+13%を超える大幅な株価上昇となった。これから5年間の中期経営計画を発表し、年平均25%を超える売上規模の拡大をめざす。ラクスの業績と株価の行方はどうなるのか?
クラウド経費精算のラクス、前年比+30%を超える成長つづく!(2021年2月13日投稿)
■基本情報(2021年5月14日時点)
- 株価:2,035円(10年来高値:2,670円)
- 時価総額:3,688億円
- 予想PER:ー(未定)
- PBR:47.03倍
- 予想配当利回り:0.1%
- 自己資本比率:68.4%
- 会計基準:日本基準
■ラクスの業績は?
ラクスの2021年3月期の売上高は154億円(前年比+32.6%増)、営業利益39.0億円(前年比+232%増)の増収増益となった。ラクスの売上総利益率は+67.3%(前年は+66.0%)、営業利益率は+25.3%(前年は10.1%)と改善がつづく。
ラクスは経費精算や交通費精算などの「楽楽精算」を中心としたクラウドサービスを展開していて、損益分岐点を超えると爆発的に営業利益が増えるビジネスモデルとなっている。売上総利益率は+60%を超えており、売上高が増えれば増えるほど営業利益の伸びが大きくなる構造になっている。2021年3月期の売上高は+32.6%増加していて、広告宣伝費を抑制したこともあり利益は大幅増となった。
■ラクスの実績のポイントは?
ラクスの2021年3月期の決算をみると、①売上高の大幅増、②広告宣伝費の抑制、が大きなポイントだ。①売上高については、クラウド事業についてはクラウドメールのメールディーラー(Mail Dealer)を除いて前年比+20%を超える成長となっている。特に請求書発行システムの「楽楽明細」が前年から売上高が2倍以上の伸びとなっている。新型コロナウイルスの影響もあり、請求書発行などの効率化や電子化を目的に導入する企業が増えた。
もう一つの②広告宣伝費の抑制については、前年は広告宣伝費22.5億円を投入していたものの、2021年3月期は11.1億円に抑制したことにより費用減にともなう増益要素なった。ラクスは集中的に広告宣伝費を投入してトップライン(売上高)を積極的に伸ばす戦略を取っているものの、中期経営計画の最後の年には広告宣伝費を抑制して利益を出している。
■これからの中期経営計画については?
2021年5月13日の決算発表と同時に中期経営計画(2022年3月~2026年3月)の5カ年計画を発表した。これからの5カ年計画では年平均成長率を25%~30%を目指していく。決算動画の中村社長の説明によると「できるだけ30%を目指していく」とコメント。2026年3月期には純利益100億円以上を目指す方針だ。
もうひとつのポイントはM&Aを活用していくこと。すでにM&Aのチームを作っていて、国内のクラウドサービスの買収の計画を進めているところ。決算動画の説明によると、5カ年計画の25%~30%にM&Aによる増加は入っていないとのこと。M&A分が上振れ要素として積み上げる方針だ。なお、M&Aの資金は手元現金、借入、増資の順に検討していくため、増資の可能性は低いことも株価にプラス要素。
■ラクスの株価の行方は?
ラクスの時価総額は約3,700億円。株価指標的には割高であるものの、前年比+30%を超える売上高の伸びが高く評価されている。クラウドサービスのなかには、たとえば弁護士ドットコム、HENNGEなど売上規模が小さいものの成長率が鈍化している。これらの企業の株価は下落傾向となっている。いっぽう、ラクスは成長率が鈍化せずに売上規模も150億円を突破。そのため、広告宣伝費の抑制により、いつでも利益を出せる利益構造になっている。
ラクスの株価は上がり続けるのだろうか?ここ最近のラクスの株価は下落がつづいていた。理由は米国を中心としたハイテク株(グロース銘柄)の株価調整だ。米国の長期金利が上昇するとグロース銘柄の株価は下落要素となるため、ラクスも少なからず影響を受ける。最近ではfreeeやマネーフォワードなども大きく下落した。ラクスの事業は成長がつづくと見るも、株価自体は金融緩和と財政出動の影響を大きく受けるため予想はむずかしい。ラクスの株価にとってプラスなのは、決算説明資料にあるとおり増資の優先度が低い点だ。手元現金→借入→増資の順に検討していくと公表している。
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以 上