「楽楽精算」などクラウドサービスを展開しているラクス。20期連続増収をつづけている成長企業の1社。2018年度から始まった成長投資の成果として、2021年3月期は成果を最大限発揮する年度となり、前年比3倍を超える営業利益の見通しだ。2022年3月期より中期経営計画(5年)に入り、再び成長投資を加速させる予定。ラクスの今後の業績と株価の行方はどうなるのか?
「楽楽精算」のラクス(3923)、業績予想発表によるポジティブサプライズ!株価上昇(2020年7月23日投稿)
■基本情報(2021年2月12日時点)
- 株価:1,973円(10年来高値:2,670円)
- 時価総額:3,575億円
- 予想PER:131.4倍
- PBR:57.7倍
- 予想配当利回り:0.08%
- 自己資本比率:71.5%
- 会計基準:日本基準
■ラクスの業績は?
ラクスの2021年3月期の第三四半期の売上高は110億円(前年同期比+31.4%増)、営業利益27.9億円(前年同期比+204.8%増)の増収増益となった。ラクスは月次で前年同月比を公表しているため、大幅な増収はポジティブサプライズとはならなかったものの、マイナス要素はまったくない決算発表となった。ラクスの売上総利益率は+66.7%(前年同期は+66.2%)、営業利益率は+25.2%(前年同期は+10.9%)と高い収益性がつづいている。
■ラクスの営業利益の変動は?
ラクスは前年にくらべて+30%を超える売上規模の拡大をつづけており、+23.4億円の増益要因となった。事業規模の拡大にともない人件費が+13.3億円増えたものの、前期では積極的に実施していたテレビCMなどの広告宣伝費(△8.9億円)を削減した。
■今後のラクスの計画は?
ラクスは2022年3月期より新しい中期経営計画を開始する予定だ。最初の4年は成長投資を強化し、最終年にあたる2026年3月期に今年と同じように成長の成果を刈り取る見込みだ。成熟した旧来の企業であれば四半期ベースでの結果が求められるものの、ラクスは創業者が健在の若い企業。中長期の視点で経営できるのが強みのひとつ。
来期からの成長投資とは、どのような内容なのだろうか?具体的な中期経営計画は現在策定中で公表されていないものの、M&Aなどによる事業領域拡大(クラウドの新サービスの追加)と広告宣伝費の投入(「楽楽明細」「楽楽精算」への投資)が想定される。
■ラクスの株価の行方は?
ラクスの株価推移を見ると、下落トレンドに転じているように見える。ラクスの時価総額は3,500億円を超えており、年間の営業利益36億円前後では満足できないところまで到達している。もちろん、成長事業をおこなっており、今後の利益の伸びを考慮すべきだが、いまの株価は数年後には営業利益100億円前後の会社になっていることが期待されている水準まで上昇している。
2021年5月頃に発表される年度決算発表の前に、2022年3月期以降の中期経営計画が発表される可能性はあり、株価に大きく影響しそうだ。もうひとつ、ラクスの業績を考えると、東証一部への上場市場の変更の発表も考えられる。マイナス要素としては、増資の可能性だ。ラクスの資本金と資本剰余金は合計して約7億円しかない。ここ最近、クラウドサービス企業を中心に増資が多い。たとえば、医療系ITサービス企業のJMDC、ソフトウェアテストのSHIFT、ネットショップサービスのBASEなど株高を活用した増資がつづいている。ラクスの財務は健全であるものの、M&A資金など成長投資の増資の可能性はゼロではないだろう。
以 上