「楽楽精算」のラクス(3923)、業績予想発表によるポジティブサプライズ!株価上昇

 クラウド型の経費精算、メール、販売支援など「楽楽」シリーズを展開するラクス。2020年7月14日に通期連結業績予想の修正を発表。2021年3月期の売上高は147億円(前年比+26.4%)、営業利益32.9億円(前年比+2.8倍)の予想を上回る予想を発表。翌日の株価はストップ高。コロナ禍のなか、営業利益が+2.8倍となり、営業利益率22.4%(前期の営業利益率は10.1%)と大幅改善となることが好感された。今後の株価の行方は?

■基本情報(2020年7月22日時点)

  • 株価:2,439円
  • 時価総額:2,210億円
  • 予想PER:94.4倍
  • PBR:42.56倍
  • 予想配当利回り:0.13%
  • 自己資本比率:73.8%
  • 会計基準:日本基準

■株価上昇はいつまで?成長が止まらない!

 ラクスについては、2020年5月4日に「「楽々」シリーズを展開するラクス(3923)、株価成長はどこまで続くのか?」という投稿を書き、株価が高すぎると考えていたものの、予想に反して当時から株価は大幅上昇。ラクスの株価は1,675円(2020年5月1日)→2,439円(2020年7月22日)と+45.6%の上昇。現在の時価総額は2,000億円を超えているため、今期の業績予想でも説明ができない株価になっている。しかしながら、これから数年の成長を考慮した株価と考えると妥当な株価かどうかが重要だ。その点をもう少し考えていきたい。

■ラクスの業績を改めて見る!

 ラクスの7月14日発表の業績予想にはビックリした。売上高が伸びていることは月次報告で理解していたものの、営業利益が前年比で2.8倍も増えるとは完全に予想していなかった。ラクスのクラウド事業は堅調に伸びているものの、2020年3月期は前年比で増収減益の実績。ここで増収減益になった要因は人件費と広告宣伝費の増加。ラクスは連結ベースの従業員数は1,100名を超える大企業。これまでのように効率的に稼ぐことも容易ではなくなってくるはず。

 とくに、クラウド事業については、「楽楽精算」の導入社数は6,000社を超え、売上規模の拡大により、年間2ケタの成長をつづけるのが難しくなってくると考えるのが一般的な考え方だ。そのなかで、大々的なテレビCM投入により広告宣伝費が12.7億円(2019年3月期)→22.5億円(2020年3月期)と+9.8億円の費用増となった。

 ラクスの業績予想の内訳はわからないものの、広告宣伝費22.5億円から少なくとも10億円程度は削る計画だと思われる。事業が大きくなった後で、広告宣伝費を大きく削減し、売上規模の2ケタ成長(ラクスの場合は年間+30%程度)を維持できるのか疑問は残る。一時的には広告宣伝費の削減は業績にプラスになるものの、今後の新規顧客の受注が伸び悩むリスクも存在する。このバランスをどうとるのかが重要な経営判断となる。

■ラクスの株価推移は?今後の株価の行方は?

 ラクスの2021年3月期の第一四半期の決算発表は8月13日(木)の予定。売上高は月次が公表されていて、売上高34億円(前年同月比+33.6%)前後になることはほぼ確実。2021年3月期の業績予想の営業利益率22.4%を考えると7.5億円前後になる予想だ。2020年3月期の年間の営業利益が11.7億円だったため、3カ月間で7億円ほど稼げる体質になっているのであれば素晴らしい。これでも予想PERは90倍を超えており、相場状況の変化によっては株価の急落も起こりえるので注意が必要だ。

 ラクスの事業は競合他社がいないわけではない。経費精算では大手企業向けに展開するコンカーが強い。中小企業向けではBearTail社の展開する「Dr.経費精算」がある。新規参入する会社も見込まれる領域のため、ラクスの強気の予想は現実になるのか?見極めが重要だ。

以 上

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