給与計算などアウトソーシング事業のペイロール、積上型ビジネスの行方は?

 主に1,000名以上の企業規模をメインターゲットに給与計算や年末調整、マイナンバー管理などのフルスコープ型アウトソーシングを請け負っているペイロール(PAYROLL)。企業の人事・総務部門と従業員のあいだに入って業務を請け負うビジネスモデルを展開している。2021年6月22日に東証マザーズに上場し、従業員数はパートを入れて約900名(決算説明資料上は580名)。ペイロールの業績の行方は?

■基本情報(2021年10月1日時点)

  • 株価:924円(10年来高値:1,440円)
  • 時価総額:165億円
  • 予想PER:15.2倍
  • PBR:1.46倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:53.4%
  • 会計基準:IFRS基準

■ペイロールの業績は?

 ペイロールの2022年3月期の第一四半期の売上高は17.8億円(前年同期比+8.2%増)、営業利益1.3億円(前年同期比△44.9%減)の増収減益となった。ペイロールの売上総利益率は+25.7%(前年同期は+27.7%)、営業利益率は+7.4%(前年同期は+14.5%)と利益率は悪化している。

 給与計算の代行などのアウトソーシング事業はそれほど利益率が高いわけではなく、売上総利益率は25%前後となっている。ペイロールは毎期、第四四半期に年末調整業務の売上高が加算され、約10億円ほど売上高が上昇する売上構成になっている。つまり、1Q~3Qまではほぼ同じ売上高が計上され、4Qはその売上高にさらに年末調整売上が加算される構造になっている。

■ペイロールの事業内容は?

 ペイロールは企業規模1,000名以上の会社から給与計算などの代行(アウトソーシング)を請け負うBPO企業である。リテンション率という継続率は約98%と高く、新規受注を積み上げていくストック売上高に近いビジネスモデルになっている。

 事業継続(BCPプラン)として、作業するセンターは北海道、東京、四国(高松)、九州(長崎)の4つに分散されている。地震などの天災が起こっても、給与をかならず着金させる危機管理体制となっている。

 ペイロールの主要顧客はKFC、セールスフォースドットコム、カルビー、DeNA、東急ハンズ、鳥貴族、ファイザー製薬、大王製紙など大手企業も少なくない。現時点の受託している給与計算処理人数は約100万人。メインターゲットの従業員数1,000名以上の企業の従業員数は1,491万人のため、ここから、どれだけ顧客を積み上げられるか勝負となる。また、事業領域の拡大も大きな課題だ。

■ペイロールの沿革と「のれん」

 ペイロールはIFRS基準を採用しており、IFRS基準を採用している新興企業の多くはM&Aされて大きな「のれん」を計上しているケースが多い。ペイロールの財務諸表をみると、2021年6月末時点で110億円の「のれん」を計上しており、有利子負債は約60億円ほどある。

 ペイロールは1989年に設立され、1999年5月にインテリジェンスが筆頭株主となる。2001年12月にパソナがインテリジェンスより株式譲渡を受けて筆頭株主となる。2008年1月にベアリング・プライベート・エクイティが筆頭株主となり、2013年4月にジャフコが筆頭株主となる。2017年6月にクレアシオン・キャピタルが筆頭株主となり、2021年6月に東証マザーズに上場となった。

 これらの筆頭株主が変更になる過程で、ペイロール自身が借入をするLBO(レバレッジド・バイアウト)を使ってきたと思われる。ペイロールの収支が大きく悪化すると、「のれん」の減損となるので注意が必要だ。

■ペイロールの株価推移は?

 ペイロールの時価総額は約170億円。現在の業績見通しの売上高86億円、営業利益15億円を考えると割安感はある。ただし、売上総利益率が前年同期よりも下がっており、販管費が上昇しているので、本当に業績達成できるのか様子見が必要だ。

(画像1)ペイロールの株価推移

以 上

 

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