ファッション通販サイト「SHOPLIST.com by CROOZ」を中心に多角的に事業展開しているCROOZ(以下、クルーズ)。売上高は増収を続けているものの、営業利益は赤字から脱却できず、株価は長期低迷している。クルーズは、すべての事業を子会社化し、純粋持株会社に移行ずみ。「20XX年までに時価総額1兆円以上」という超長期的目標をかかげているものの、現在の時価総額は約140億円。株価上昇の前提となる、成長性と収益性の大幅な改善の施策はあるのか?
■基本情報(2020年7月17日時点)
- 株価:1,091円
- 時価総額:141億円
- 予想PER:未定
- PBR:1.56倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:29.8%
- 会計基準:日本基準
■クルーズの事業内容は?
クルーズは、ファッション通販サイト運営のSHOPLIST事業、インターネットコンテンツ事業、広告代理事業、投資事業、メディア事業など複合的に事業を行っている。そのなかでも、全体の約7割の売上高を占めるのがSHOPLIST事業だ。事業規模330億円のうち、SHOPLIST事業が約250億円を占め、残りの事業がそれほど成長していないのがクルーズの現状。
SHOPLIST事業以外では、たとえば、StudioZという子会社がスマートフォンゲームを企画・開発したり、SEVENWOODS INVESTMENTという子会社がベンチャー企業への投資を実施している。ただし、SHOPLIST事業以外は決算説明資料などで事業内容の多くが語られておらず、実情がわからない。決算説明資料で事業の進捗などが説明されていないと、個人投資家としては今後の成長性などを判断する材料がほとんどなく、3か月ごとの決算短信で業績を把握することしかできない。業績に自信のある企業が簡素なIR(投資家情報)にとどめるケースはあるものの、時価総額1兆円を目指す企業としては不十分。
■クルーズの業績は?
クルーズの2020年3月期の売上高は340億円(前年比+12.3%)、営業利益△1億円(前年は△10億円の赤字)と増収減益。クルーズは積極的な新規事業やM&Aをおこなっており、売上高は伸びているものの収益がでる事業まで育つにいたっていない。ファッション通販サイトの「SHOPLIST」は新型コロナウイルスの影響によるEC(ネット)需要の高まりで追い風はあるものの、競合がひしめく分野。たとえば、ZOZO(ゾゾ)、アマゾン、ロコンドなどのモール型のファッションECサイトが競合だ。
「SHOPLIST」で不明な点は、クルーズの売上高が約250億円であるものの、本サイトでの商品取扱高が開示されていない点だ。たとえば、2020年3月期のZOZOの決算説明資料を見ると、商品取扱高が3,451億円、売上高は1,255億円と開示されている。ロコンドの2020年2月期の商品取引高は183億円、売上高は86億円。クルーズ自身が在庫をもって販売しているのか、ZOZOやロコンドのように仲介中心なのか、クルーズのビジネスモデルが見えない点は不安な要素。財務諸表を見るかぎり、在庫に相当する資産が計上されていないことも気なる点だ。
なお、クルーズの2020年3月期の決算説明資料は15ページ。ZOZOは41ページ、ロコンドは34ページと資料ボリュームで競合他社に大きく負けている。ZOZOやロコンドよりも事業が多岐にわたるクルーズは、より説明が求められてもよいはず。自社の事業に自信がある企業は決算説明資料のページ数が多くなる傾向があり、クルーズのページ数の少なさには注意が必要だ。
■クルーズの株価推移は?今後の行方は?
クルーズの株価推移を見ると、2014年2月に7,380円(時価総額約1,000億円)をつけてから、下落トレンドがつづいている。すでに最高値の7分の1の株価となっている。売上高自体は毎年成長しているものの、営業利益が赤字のため、M&Aなどで成長しているように「見えるだけ」と考えざるえない。クルーズの事業のなかで好調な、期待できる事業があれば、決算説明資料で紹介してほしい、というのが個人投資家の意見ではないだろうか。
以 上