「北欧、暮らしの道具店」というネット上でのEC販売をおこなっているクラシコム。2022年8月に東証グロースに上場。2006年9月設立で従業員数は77名。新規上場により約11億円を調達し、今後の人件費と広告宣伝費に充当予定。クラシコムは単なるネットショップやEC通販とは異なり、ストーリーをつくって売る仕込み。今後の業績と株価の行方は?
■基本情報(2022年10月21日時点)
- 株価:998円(10年来高値:1,962円)
- 時価総額:73億円
- 予想PER:11.8倍
- PBR:3.17倍
- 予想配当利回り:未定
- 自己資本比率:77.5%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:不明(まだ有価証券報告書を提出していない)
■クラシコムの業績は?
クラシコムの2022年7月期の売上高は51.6億円(前年比+13.9%増)、営業利益8.4億円(前年比+8.0%増)の増収増益。クラシコムの売上総利益率は+43.8%(前年は+45.3%)、営業利益率は+16.3%(前年は+17.2%)。成長性・収益性ともに悪くなく、株価が安値で放置されている印象だ。16期連続で増収・増益を達成している。
■クラシコムの事業内容は?
クラシコムは「北欧、暮らしの道具店」というEC通販にてD2C商品(オリジナル商品)を販売している。その事業を支えるコンテンツを作成しているのが特徴だ。
「北欧、暮らしの道具店」では、キッチン、食器、生活用品、ファッション、コスメなどアパレルや雑貨を販売している。イメージ的には無印良品やニトリのようなイメージだ。しかも、価格はかなり高価格帯になっている。普段、ユニクロ、GU、ニトリなどで買い物をしているボリュームゾーンではなく、お金に余裕があるパワーカップルやオシャレな30~40代の独身層をターゲットにしているような商品が売られている。
D2C商品=オリジナル商品は50%となり、自社開発した商品を高価格帯で販売する事業モデルが出来上がっている。年間購入者数は18万人前後であり、それほど顧客を獲得できているわけではない。言い換えると、まだまだ伸びる余地がある。
味の素、カンロなど大手とのコラボレーションとしてブランドソリューションを提供している。スマホアプリの累計ダウンロード数は210万を超え、YouTubeチャンネルの登録者数は53万人。アプリ経由の注文数は全体の57%となっている。
■ただのネット通販にとどまらない!
クラシコムはただのEC通販に事業戦略はとどまらない。オリジナルドラマやミュージックビデオ、インターネットラジオなどを展開し、ストーリーで販売するプロセスエコノミーの事業モデルを構築している。価格は高いものの、共感できるストーリーを提供しているブランドなので買いたい、という戦略だ。
プロセスエコノミーであり、同社はこの資源をカルチャーアセット(コンテンツ、ブランド、データ)と呼んでいる。ただモノを販売するのではなく、カルチャーなどの価値を提供しているという感じだ。
■もともとのスタートは?
クラシコムの「北欧、暮らしの道具店」は2007年に北欧食器などを扱うECショップとしてスタート。現在は北欧以外のものを多く取り扱っているが、サイト名は変更していない。2015年からオリジナルブランド、2017年にアパレル、2020年にコスメをスタート。
従業員の8割が自社チャネル経由で応募してきた元顧客というロイヤリティの高さ。採用倍率は200倍。現在はファッション(価格単価は1万円前後)が全体の55%、雑貨・日用品(価格単価は5,000円前後)が39%を占める。
■クラシコムの株価の行方は?
クラシコムの時価総額は約74億円。正直、これからかなり伸びそうなグロース銘柄。たんなるECショップに対して、顧客がどんどん増えて、結果的に上場してしまったというカルチャーアセットを持っており、コアな企業力・事業能力・商品力がきわめて高い会社。目に見えないブランド価値が高い。しかも収益力も高い。
少し心配されるのはブランドの一時的な盛り上がりによる収益増であるかの見極め。たとえば、カバン・財布などの分野で上場しているスタジオアタオ(ATAO)は高価格帯で収益を伸ばしていたものの、ファンが少しずつ離れていったのか前年割れの売上高がつづいている。なお、スタジオアタオはネット販売が約6割、店舗販売が約4割とクラシコムとは販売構成が異なる。
いずれにしろ、EC通販のなかでも結果的に規模が大きくなって上場したというケースで、クラシコムの成長性には引き続き期待したい。
以 上