価格改定のサイボウズ、SaaS型で利益率を一気に改善か?今後の業績は?

 「kintone」や「サイボウズOffice」などのグループウェアを中心にビジネスを展開しているサイボウズ。1997年8月設立、連結従業員数1,276名(2023年12月末時点)のSaaS型(サブスクモデル)のグループウェア事業を展開。業績は好調で、2024年11月より価格改定を実施し、20~30%くらい値上げをする。この結果、大きく業績改善に寄与すると思われる。

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■基本情報(2024年6月7日時点)

  • 株価:1,842円(10年来高値:3,800円)
  • 時価総額:972億円
  • 予想PER:43.2倍
  • PBR:7.51倍
  • 予想配当利回り:0.81%
  • 自己資本比率:59.9%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:18,624人(2023年12月31日時点)
  • 事業価値:911億円

■サイボウズの業績は?

 サイボウズの2024年12月期の第一四半期の売上高は69億円(前年比+14.0%増)、営業利益13.1億円(前年比+5.8%増)の増収増益。サイボウズの売上総利益率は+91.8%(前年は+91.3%)、営業利益率は+19.0%(前年は+20.4%)と高い水準を維持している。

 サイボウズの売上総利益は前年の55億円→63億円と+8億円の増加、販管費は前年の43億円→50億円と+7億円の増加となり、営業利益は+1億円の改善となった。サイボウズは販管費の内訳を開示しており、広告宣伝費が前年の7.5億円→10.4億円と+2.9億円の増加、研究開発費も+1億円となっている。ある意味、積極的に販管費を増やしており、営業利益はコントロールされた結果と見ることができる。

■サイボウズの事業状況は?

 サイボウズは1997年8月設立のITサービス企業としては老舗。すでに従業員数は1,300名規模まで増えており、グループウェアによる情報共有とチームワークをITのチカラで解決を目指すサービスを提供している。

 サイボウズの主要サービスは、中小企業向けグループウェアの「サイボウズOffice」(契約社数:2.5万社)、ノーコードまたはローコードで業務システムが構築できる「kintone」(契約社数:3.3万社)、中堅・大企業向けのグループウェア「サイボウズGaroon」、そして、メール共有システム「Mailwise」の4つ。

 ノーコードによるDXの内製化、リスキリングなどがキーワードになり、サイボウズのサービスが企業のITを支える仕組みだ。

■2023年12月期の実績は?

 サイボウズの2023年12月期の実績は、売上高254億円、営業利益33.9億円、営業利益率+13.3%。2005年~2008年くらいはM&Aで事業買収をして一気に拡大したものの、結局、グループウェアに事業集中することになった。9社買収して8社を売却。結果として、クラウドの移行にともない、順調に利益がでる形となった。

 2024年12月期の業績予想は、売上高287億円、営業利益31億円を目指す。普通の企業であれば、前年比を増益するということを業績目標にするものの、サイボウズはあまり株価への影響を考えていないように見える。結果として、ラクス、Sansan、マネーフォワードなどのITサービス企業とくらべて株価が低い。

 なお、サイボウズの従業員の平均年齢は35.3歳、平均勤続期間5.7年、平均年収664万円となっている。IT企業としては、妥当な水準だ。

■サイボウズの売上高構成は?

 サイボウズの2023年12月期のIR資料に売上高内訳を開示している。もっとも売上高が大きいのは「kintone」で133億円(前年比+21.6%増)、「サイボウズOffice」が47億円(前年比+7.4%)、「Garoon」が34億円(前年比+16.6%)となっている。なお、「kintone」はサブスクリプション比率が100%、解約率は1.28%と低い。

■サイボウズの販売チャネルは?

 サイボウズは代理店販売(パートナー販売)が全体の62.9%となっている。パートナー社数は約450社。アプリケーション連携は350以上となっている。

■サイボウズの財務状況は?

 サイボウズの2024年3月末時点の財務諸表をみると、現預金は60億円、有形固定資産は42億円、投資有価証券17億円となっている。負債をみると、有利子負債はゼロ。契約負債(前受金)が38億円となっている。

 なお、サイボウズは2023年1月にリコーを割当先とする自己株式の売却で約45億円の資金調達をしている。結果として、有利子負債の約45億円をそれにより返済している。財務的にはきわめて健全だ。結果として、リコーのサイボウズへの出資比率は3.3%となる。

■サイボウズの株価推移は?

 サイボウズの時価総額は約1,000億円。経費精算大手のラクスの時価総額は約3,200億円(売上高483億円、営業利益90億円)。以前はサイボウズのほうがラクスより規模が大きかったものの、一気に成長性で抜かれてしまった。

 しかしながら、サイボウズは2024年11月の価格改定で、2025年12月期には一気に利益率の改善が起こるだろう。営業利益50億円は見えるはずだ。

以 上

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