コロナワクチン予約システムの全研本社、業績好調も株価は上場来安値水準に!

  1975年設立で子ども向け英会話教室「ワールド学院」を日本全国に展開したり、メディア事業、コンテンツマーケティング事業などIT事業を展開している全研本社。子会社のサイシードが開発したコロナワクチン予約システムが2021年3月より提供開始し、2022年6月期の上期だけで8億円の売上計上で波に乗る全研本社。いっぽう、株価は上場来安値を更新中。全研本社の業績と株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2022年5月2日時点)

  • 株価:738円(10年来高値:1,568円)
  • 時価総額:87.7億円
  • 予想PER:7.0倍
  • PBR:0.76倍
  • 予想配当利回り:1.08%
  • 自己資本比率:80.1%
  • 会計基準:日本基準

■全研本社の業績は?

 全研本社の2022年6月期の第二四半期の売上高は38.8億円(前年同期比+36.9%増)、営業利益12.9億円(前年同期比+205.7%増)の増収増益。全研本社の売上総利益率は+65.8%、営業利益率は+33.4%(前年同期は+14.9%)と好調だ。

 いまの業績だけみると極めて収益性の高い、成長企業であるものの、子会社のサイシードが開発したコロナワクチン予約システムの売上高が約8億円ふくまれており、その特需要因の貢献が大きい。コロナワクチンもいずれは需要が消えるため、この特需を株式市場はプラスで見るよりも、特需後の業績悪化を株価が織り込んでいる形だ。

■全研本社の事業内容は?

 全研本社は1975年設立の老舗企業。1970年代に子ども向け英会話教室の「ワールド学院」を全国に展開し、その語学事業を会社分割してゼンケンオール社として2005年6月にヘラクレスに上場。2008年10月に経営陣によるMBO(マネジメントバイアウト)で上場廃止している。

 現在の全研本社は、売上高の約8割はIT事業。残り、語学事業、不動産事業などあるも、いまはIT企業と言ってよいだろう。利益の約9割をIT事業が稼いでいる。IT事業はAI事業(主にコロナワクチン予約システム)、メディア事業、コンテンツマーケティング事業の3つに分かれ、AI事業が大きく伸びている。

■全研本社のIT事業とは?

 メディア事業はいわゆるWEBメディアを運営。SEO(検索エンジン最適化)や「街コンポータル」「健康美容EXPO」など、さまざまなメディアを展開している。おそらく、広告収入や送客ビジネス(アフィリエイト)などが収益と思われる。

 コンテンツマーケティング事業は、顧客の商品・サービス拡大を図るソリューション提供ということでコンサルティングを提供していると思われる。SEO対策やWEB記事作成などのデジタルマーケティングを組み合わせてサービスを提供している。語学事業は法人向け語学研修や留学斡旋事業、日本語教育事業をおこなっている。

■全研本社の株価の行方は?

 全研本社の時価総額は約90億円で、売上高74億円、営業利益17億円という事業規模、収益性を考えると割安だ。投資家が積極的に全研本社の株を買えない理由は、コロナワクチン予約システムの特需剥落後の業績悪化を想定しているからだ。

 コロナワクチン予約システムの売上高は2022年6月期の上期で約8億円と公表されているものの、利益額は公表されていない。今期のIT事業の営業利益は大きく伸びており、コロナワクチン予約システムの売上高が剥落したら前年比でマイナスになると見込まれる。

 ただし、全研本社の2021年12月末時点の現預金は46.5億円、土地60億円と約100億円くらいの換金できる資産をもっている一方、有利子負債は約10億円ほどと少ない。現在の時価総額はほぼ現預金と土地で説明できる価値であり、それほどリスクはないのではないだろうか。

■心配なコロナ特需剥落

 正直、コロナ特需で業績が好調である一方、株がそれほど買われていないケースも少なくない。全研本社と同様に特需剥落後の業績悪化を懸念しているからだ。たとえば、新型コロナウイルス検査キットのミズホメディーは驚異的な利益を出しているものの株価はさえない。2022年5月現在、東京都など無料のPCR検査を実施しており、おそらく、ミズホメディーの業績に大きくプラスで作用することは明らかであるものの、予想PER6倍弱、予想配当利回り5%超と割安で放置されている。コロナ特需が終わると、一気に業績悪化となることが見えているからだ。

新型コロナウイルス検査キットのミズホメディー、超特需で利益急増!(2022年1月30日投稿)

(画像1)全研本社の株価推移

以 上

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