EC事業に特化して化粧品や健康食品の開発・販売をおこなっている北の達人コーポレーション(以下、北の達人)。これまでは高成長と高収益により、2017年から株価は急騰。一時は時価総額1,500億円規模まで上昇した。現在は時価総額700億円ほどであるものの、売上高80億円の企業としては立派な企業価値。ネット通販に特化した化粧品や健康食品の販売は、広告宣伝費を効果的に使ったマーケティングに業績が左右される。今後の北の達人の業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2020年12月4日時点)
- 株価:510円
- 時価総額:719億円
- 予想PER:52.2倍
- PBR:14.89倍
- 予想配当利回り:0.58%
- 自己資本比率:83.5%
- 会計基準:日本基準
■北の達人の業績は?
北の達人の2021年2月期の第二四半期の売上高は45.9億円(前年同期比△9.2%減)、営業利益は10.3億円(前年同月比△25.9%減)と減収減益となった。減収減益の要因として、「新規獲得件数の大幅な減少により減収減益」と説明されていて、定期販売の順調な積み上がりができていないと思われる。化粧品や健康食品といえば、定期販売による安定的な売上がベースになるため、北の達人の解約率(未公表)が気になるところだ。
前年同期比で業績は悪化していると言っても、北の達人の営業利益率は22.4%(前年同期は27.5%)と高い。売上総利益率は75.4%と製品の製造原価自体はかなり低く、粗利の高いビジネスモデルとなっている。北の達人や育毛剤「ニューモ」で業績が急拡大しているファーマフーズなどは広告宣伝を効率的に活用したマーケティング戦略が業績の大きく貢献している。
北の達人の2021年2月期の第二四半期までの6か月間で投入した広告宣伝費は13.6億円。この広告宣伝費を削るともう少し営業利益が積み増しできそうに見えるものの、化粧品や健康食品のネット通販事業では広告宣伝費を削ると一気に売上高が落ちる可能性がある点に注意が必要だ。
■北の達人の商品は?
北の達人は化粧品や健康食品などを販売している。たとえば、機能性表示食品の「カイテキオリゴ」という食品。便秘傾向車の便通を改善するという効果がある製品だ。「カイテキオリゴ」はモンドセレクション(食品、飲料、化粧品などの技術的水準を審査するベルギーの民間評価企業)で最高金賞8回、金賞1回を受賞している。
北の達人の「ディープパッチシリーズ」は美容用マイクロニードルスキンパッチの売上世界NO1としてギネス世界記録に認定されている。
■北の達人、マーケティングに全力!
北の達人の業績はマーケティングにかかっている。北の達人は化粧品や健康食品を販売しているものの、資生堂やコーセー、明治などのような信頼されるブランドを構築できていない。北の達人は商品ごとのマーケティングに力を入れ、機能や効果などをしっかりアピールできて販売につながっている。たとえば、「カイテキオリゴ」は便秘傾向者への改善策として提供、「アイキララ」や「ディープパッチシリーズ」は目元やほうれい線、眉間などの毛穴ケアがメイン。年齢とともに、しわの増加や毛穴が開くことを改善ニーズにこたえる製品だ。
北の達人が運営する直販サイト「北の快適工房」をみると、各製品ごとに非常に縦に長い製品説明(図、写真を多用)が行われ、消費者の改善したいポイントにこたえる商品説明の作りになっている。
■北の達人の株価の行方は?
北の達人の時価総額は約700億円。北の達人は営業利益が20%を超える高い収益性であるものの、成長性がほとんどなくなり足元は前年同期比でマイナス。成長性の停滞は株価躍進には大きなマイナスだ。売上高80億円、営業利益20億円の規模でいまの時価総額700億円も割高感があると考えることができる。化粧品や健康食品はブランドを構築するか、マーケティングで製品特性を訴えて販売を伸ばすか大きく2つに分かれる。ブランドを構築できない場合は、固定の顧客が少なく、新規顧客獲得が鈍化すると一気に売上高が下がってしまう。
2020年10月28日上場したプレミアムアンチエイジング(4934)や売上急増のファーマフーズなど注目を集めており、北の達人に株式のマネーが戻ってくるか難しい。ここから前年比+20%を超える成長に持っていければ株価の一段高は見えてくるかもしれない。とにかく成長性の改善が必要だ。
以 上