2021年11月に米国のENS(Expert Network Service、エキスパートネットワークサービス)大手のColemanを約118億円で買収したビザスク。190か国52万人超のアドバイザーデータベースを保有して、グローバルに顧客をサポートできるのが強み。サービスもスポットコンサル、オンラインサーベイから国内事業会社向けに多角的にサービスを拡充。事業領域の拡大によりコンサルティング企業とは異なる立ち位置を築いている。今後の株価と業績の行方は?
エキスパートネットワークサービス(ENS)のビザスク、Coleman(コールマン)買収で事業規模拡大!(2022年8月28日投稿)
■基本情報(2022年11月4日時点)
- 株価:1,823円(10年来高値:7,120円)
- 時価総額:166億円
- 予想PER:ー(赤字予想)
- PBR:15.11倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:57.6%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:4,015人(2022年2月28日時点)
■ビザスクの業績は?
ビザスクの2023年2月期の第二四半期の売上高は41.4億円(前年比+2.5倍)、営業利益1.5億円(前年同期は△96百万円の赤字)と大幅増収と黒字化となった。ビザスクは売上総利益を開示しておらず、取扱高、営業収益、調整後EBITDA、営業利益などを開示。
ビザスクの取扱高は61.5億円と前年同期から+2.3倍、売上高は+2.5倍、調整後EBITDAは+1.4倍となった。この成長はオーガニックな成長ではなく、米国のColeman(コールマン)の買収の効果が大きい。
2023年2月期の業績予想は、取扱高127億円、営業収益(売上高)84.7億円、営業利益(のれん償却前)6.1億円、営業利益(のれん償却後)△2.0億円と下方修正をしてきた。米国をはじめとした利上げの影響や円安による海外アドバイザーへの支払いのマイナス影響などを織り込んだ形だ。
■ビザスクの事業状況は?
ビザスクは取扱高に対する営業収益の割合をテイクレートと呼んでおり、現在のグローバルENSのテイクレートは71%前後で推移している。顧客から100万円の業務委託料をもらい、アドバイザーには30万円の業務委託費を支払っている計算になる。正直、このテイクレートはこれ以上の改善は難しく、むしろ、同業他社との競争が激しくなってくると料率が悪化する恐れがある。良質なアドバイザーを確保するためには必要な経費だ。
もう一つの事業である国内事業会社向けのコンサル事業のテイクレートは55%前後で推移している。こちらは業績予想の修正で57%→55%に修正をしている。
ビザスクの課題は、とくに広告費などを大量に投入しているビジネスモデルではなく、人件費負担が重い点だ。ビザスクの連結ベースの従業員数は541人。事業規模を拡大しなければ、なかなか利益のでる構造にはならないだろう。また、のれんやPPA(技術関連資産、顧客関連資産等)の買収コストが財務諸表に計上されており、将来的に減損するリスクがあることに留意が必要だ。
■ビザスクの財務諸表は?
ビザスクの2022年8月31日時点の財務諸表をみると、現預金が33.2億円計上されているものの、Coleman買収関連のコストが約130億円ほど資産計上されている。有利子負債は40億円ほどとそれほど負担があるわけではないものの、事業規模以上にバランスシートが膨らんでいることに注意が必要だ。
なお、ビザスクは運がよく、グロースの資金調達状況がよいタイミングで第三者割当増資により95億円を調達。これを原資にColemanを買収している。ただ、第三者割当増資に応じた株主は半値以下まで株価がさがっている。
■ビザスクの株価推移は?
ビザスクの時価総額は約170億円。すでに上場後の高値から3分の1くらいまで下落している。2021年11月に金融投資家であるIXGS Investmanet IV,L.P.が約75億円の第三者割当増資に応じているものの、現在は大きな含み損を抱えている。
2021年11月の増資の仕組みは株価が3,724円でA種類株(特別な株券)から普通株に転換され、結果として、発行済株式数は2021年2月の912万株→1,232万株に大きく株数が増えており、この要因により株価が大きく下がっている一因となっている。下のチャートをみるとわかるが、ここ2年間で投資したほとんどの投資家が含み損を抱えている。なかなか株価の上昇を期待するのは難しいだろう。
以 上