京都中心の不動産管理会社の長栄、割安放置の株価の行方は?

 京都府を中心に不動産管理・賃貸の事業をおこなっている長栄。1988年4月設立の企業で、従業員数は248名。東証2部に2021年12月24日に上場した老舗企業。管理戸数は25,173戸(2021年10月末)で全体の約85%は京都府にある物件。2022年3月期の売上高84億円、営業利益20億円、営業利益率+25%と高収益であるものの、予想PER5.0倍、予想配当利回り6.22%と割安に放置されている。長栄の事業内容と株価の行方はどうなるのか?

■基本情報(2022年4月1日時点)

  • 株価:1,686円(10年来高値:1,799円)
  • 時価総額:75.3億円
  • 予想PER:5.0倍
  • PBR:0.87倍
  • 予想配当利回り:6.22%
  • 自己資本比率:16.0%
  • 会計基準:日本基準

■長栄の業績は?

 長栄の2022年3月期の第三四半期の売上高は62.1億円、営業利益14.0億円。長栄の売上総利益率は+36.4%、営業利益率は+22.7%と高い。長栄は2021年12月に新規上場したため、前年同期比でのデータを公表していないものの、会社概況の説明資料をみると、2020年3月までは売上高、営業利益ともに伸びており、2021年3月期に前年比で売上高・営業利益ともに若干下落となった。おそらく、新型コロナウイルスの影響により学生や海外からの渡航者減などが何らかの影響あったのではないだろうかと推測する。

 ただし、経常利益率が+20%前後になったのは、2019年~2021年であり、上場後に利益率が一気に下がるケースがあるので注意深く業績をウォッチする必要はある。

■長栄の事業内容は?

 長栄は不動産管理事業(2.0万戸)と不動産賃貸事業(自社物件:4.6千戸)を行っており、不動産を管理などのノウハウで安定的に収益を生み出す事業モデルとなっている。長栄の不動産賃貸事業の84.8%は住居用となっており、ホテル運営なども事業内容に入っているものの、住居用賃貸がメインとなっている。

 長栄のセグメント別業績をみると、不動産管理事業の売上高は28.7億円、利益3.6億円、不動産賃貸事業の売上高は38.4億円、利益11.9億円となっており、不動産賃貸事業が業績の柱になっていることがわかる。

■心配な自己資本比率について

 長栄は高収益企業であるものの、心配になるのは16.0%という自己資本比率だ。上場後の2021年12月末の財務諸表をみると、有利子負債は約380億円(社債、借入金)、現預金は88億円となっており、約300億円ほど純負債が残る形。9か月間のP/Lを見ると、支払利息が4億円計上されており、有利子負債は年利1%以上で借り入れているものと思われる。

 今後の金利上昇がどうなるかわからないものの、仮に金利が1%上昇すると年間で約4億円くらいの利益が悪化することを想定しておくことが必要だ。もう一つ気になるのは、老舗企業であるものの、利益剰余金が70億円ほどしかなく、好業績だったのはここ数年間だけの可能性がある点だ。予想配当利回りが6%を超えていて目を引くものの、有利子負債がここまで大きいと、本来は負債返済を優先すべきではと考えてしまう。

■長栄の株価推移は?

 長栄の時価総額は約80億円。予想PERや予想配当利回りを見るかぎり株価は割安であるものの、上場時に財務諸表をよく見せるケースが多いため、慎重に業績や事業内容を見る必要がある。過去にJASDAQ上場のプリントネットは上場時に好業績を発表していたものの、上場直後から収益が大幅悪化。株価は5分の1以下に下落した事例もある。電子決済システムを提案するジィ・シィ企画も同様の決算状況となっている。

 直近の業績は好調であるものの、B/Sの利益剰余金とうまくバランスが取れていない老舗企業が上場するケースがあるので、財務諸表をしっかり見極める必要がある。そもそも、不動産賃貸事業は安定した事業分野であるものの、営業利益が+20%も出ることに若干違和感はある。

(画像1)長栄の株価推移

以 上

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