スマートフォンなどの内臓カメラの画像処理ソフトや車載・IoT向けソフトウェア事業を展開しているモルフォ(morpho)。技術力はあるものの、マネタイズがうまくいかず赤字がつづいている。モルフォは画像処理技術とDeep Learning(人間の脳の仕組みをまねた機械学習)を用いた画像認識技術に強みを持つ。モルフォの業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2021年9月10日時点)
- 株価:1,205円(10年来高値:11,080円)
- 時価総額:65億円
- 予想PER:赤字予想
- PBR:1.36倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:94.2%
- 会計基準:日本基準
■モルフォの業績は?
モルフォの2021年10月期の第三四半期の売上高は12.3億円(前年同期比△20.9%減)、営業損失△6.7億円(前年同期は△34百万円の赤字)と減収赤字悪化となった。モルフォの売上総利益率は+52.1%(前年同期は+72.3%)と悪化傾向となった。販管費は前年同期は11.6億円であったものの、今期は13.1億円と増加している。
モルフォは有利子負債がゼロで、現預金を39億円ほど持っているため、当面は先行投資を優先すると思われる。バイオ銘柄やゲーム銘柄と同じように将来の成功のために当面は先行投資に注力しつづけると思われる。
■モルフォの事業内容は?
モルフォはスマートフォンなどの内臓カメラの画像処理ソフトウェアなどに特許を持ち、そのロイヤリティや開発費を主な収益源としている。2015年12月にはトヨタ系のデンソーと資本業務提携を実施し、デンソーはモルフォの約5%の第三者割当増資を引き受けている。なお、デンソーは合計12.3億円の増資を引き受け、1株あたり約4,700円でモルフォ株を買った計算になる。現在の1株1,200円で考えると、4分の1程度まで株価が下がった計算になる。
2020年12月にはデンソーはモルフォのAI学習環境システムを用いて、高度運転支援システム向けの画像認識を開発したと発表。デンソーとの車載関係の共同開発は円滑に進んでいると思われるものの、いまだモルフォの業績にはプラスの要素としては出ていない。
■モルフォの将来の成長は?
モルフォは現在の車載・スマートフォン向けの画像処理・画像認識ソフトウェアだけでなく、スマートファクトリー、社会インフラ、映像監視、PC/タブレット向けなどに事業領域を拡大していく方針を発表している。モルフォの保有特許数は160件、累計ライセンスう数は35億件を超える。これほど特許を保有していても、売上高は20億円を超えることができず、営業黒字に持っていくことができていない。
モルフォはマネタイズがそれほど上手くないというのが大きな弱点。スマートフォンの世界トップ10社のうち7社に技術を提供しており、モルフォはグローバルに活動している。それでも、十分な収益を上げることができていない。
■競合他社の台頭にも注意!
モルフォの画像処理技術はどこまで他社と差別化をはかることができるのか?ニューラルポケットはエッジAIカメラという分野でマーケティング、セキュリティ(顔認証、侵入検知、通行人数計数)、モビリティ(物体認識、交通量解析)などのサービスを展開。サブスクリプション型の収益モデルを成長している。
クラウドからエッジに!?ニューラルポケットのエッジAIの行方は?(2021年9月11日投稿)
AI・ロボティクス・ビックデータ解析などのオプティムは「OPTiM AI Camera」で社員食堂などの混雑状況などを解析したりできる。オプティムは年間売上高90億円、営業利益20億円と高収益の企業で、時価総額は約1,000億円まで株価は上昇している。
AI・IoT・ロボティクスのオプティム、IT技術で新しいビジネスを創り出す企業!(2021年5月30日投稿)
オプティムやニューラルポケットにかぎらず、画像解析や画像認識の分野はキヤノン、東芝、日立など大手企業も開発研究しており、モルフォがどこまでリードできるか見えないのが正直なところ。ただし、あまりにも時価総額が低くなれば、他社に売却するという選択肢もでてくるかもしれない。
■モルフォの株価推移は?
モルフォの時価総額は約65億円。一時は500億円を超える時価総額まで上昇したものの、この数年は下落トレンドがつづいている。結局、需給バランスが崩れて、なおかつ赤字の場合は株価が反発するのは難しい。まずは、営業利益が黒字に展開するまで様子見が無難かもしれない。現在は安値の可能性はあるものの、株価浮上までに数年単位で待つ必要が出てくるかもしれないので手出し無用だ。
以 上