大阪名物の串カツを提供している串カツ田中ホールディングス(以下、串カツ田中)。株価は2,000円前後と安定して推移しており、それほど悲観的な株価ではない。業績は2022年1月の蔓延防止等重点措置の適用で売上高は減少したものの、4月以降は回復傾向が続いている。串カツ田中の業績と株価の行方は?
■基本情報(2022年7月15日時点)
- 株価:1,955円(10年来高値:7,480円)
- 時価総額:184億円
- 予想PER:19.6倍
- PBR:11.96倍
- 予想配当利回り:未定(前期は1株あたり10円)
- 自己資本比率:22.8%
- 会計基準:日本基準
■串カツ田中の業績は?
串カツ田中の2022年11月期の第二四半期の売上高は48.8億円(前年同期比+109.6%増)、営業損失は△2.8億円(前年同期は△12.3億円の赤字)と大幅増収と赤字幅の縮小となった。経常利益は+9.0億円と休業や時短に対する助成金(雇用調整助成金や感染拡大防止協力金)+10.6億円のおかげで黒字となっている。
串カツ田中の売上総利益率は+64.3%(前年同期は+59.8%)と高いものの、店舗運営費用(アルバイト人件費、店舗家賃ほか)を販管費に計上しているため、営業利益が黒字になる売上総利益は稼げていない状況だ。
■串カツ田中のビジネスモデルは?
串カツ田中は、全国で314店舗の串カツ店を展開しているものの、約半分の150店舗はフランチャイズ店(FC店)となっている。残りの164店舗を直営で運営している。そのため、単純な居酒屋ビジネスというよりも、ロイヤリティなどのサービスフィーを受領する収益があることも忘れてはならない。
2022年11月期の第二四半期の売上高は48.8億円であるものの、内訳をみると、直営店売上高が36.8億円、FC店に対する売上高が8.3億円、FC店舗のロイヤリティが1.8億円となっている。ロイヤリティについては原価ゼロでそのまま利益になると考えて問題ないだろう。
■串カツ田中の財務状況は?
串カツ田中の財務状況は、2022年5月31日時点で現預金29.2億円、有利子負債は約38億円となっている。自己資本比率が20%台であるものの、ネットの有利子負債は約10億円とそれほど厳しい状況ではない。
コロナ前の2019年11月の決算短信をみると、自己資本比率は50.2%と高い。しかしながら、2019年11月の業績は、売上高100億円、営業利益6.0億円、経常利益7.8億円と実は今のほうが業績はよい(2022年11月の予想は、売上高118億円、営業損失△2.1億円、経常利益13.0億円)。
コロナ前の2019年11月末の店舗数は273店舗だったものの、2022年5月末時点では314店舗と+41店舗の増加。コロナ禍でも積極的に投資をしている。自己資本比率の悪化をよく見ると、手元現預金を厚く持っておくために有利子負債を増やした結果、総資産が大きく増えたために比率が下がったのが大きな要因だ。
■足元の売上高は好調!
串カツ田中にかぎらず、居酒屋関係の2022年4月以降の業績は好調だ。2022年4月は前年同期比+40.1%増、5月は+112.0%増、6月は+133.1%増と倍増している。ただし、2019年度と比べると現在で80%~90%くらいまで回復した状態だ。海外からのインバウンドが戻ってこないと、2019年度を上回るのは難しいかもしれない。
■串カツ田中の株価推移は?
串カツ田中の時価総額は約180億円。最悪期は脱却しており、助成金に支えられた結果、致命的な事業縮小などもない。反対に、このコロナ禍で基盤を整備し、店舗数は300店舗を突破。コロナが収まると一気に拡大していく可能性もある。
ただ、注意が必要なのは助成金がなくなると、実態の低収益の状態が見えるようになり、営業利益率はせいぜい5%前後が限界ではないだろうか。そうなったときに株価があがるかというと難しいかもしれない。中長期で1,000店舗体制を構築することが目標であるものの、売上高は300億円、営業利益15~20億円が「あるべき姿」の業績像ではないだろうか。
以 上