「まるっとシリーズ」のラストワンマイル、業績急回復の中身は?

 引越しにともなう電気、ガス、インターネット、宅配水、水道などの面倒な手続きを窓口1本で解決する「まるっとシリーズ」を展開しているラストワンマイル(LASTONEMILE)。100種類以上の商材を取り扱っており、いわゆるサービス提供会社に「送客」することによって稼ぐビジネスモデル。ラストワンマイルの業績が急回復しているが、その中身はどうなっているのか?

「まるっとシリーズ」のラストワンマイル、新生活ライフラインサービス提供!(2022年1月30日投稿)

■基本情報(2023年4月14日時点)

  • 株価:2,004円(10年来高値:3,020円)
  • 時価総額:56億円
  • 予想PER:134.6倍
  • PBR:4.53倍
  • 予想配当利回り:0%
  • 自己資本比率:30.2%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:818人(2022年8月31日時点)

■ラストワンマイルの業績は?

 ラストワンマイルの2023年8月期の第二四半期の売上高は48.3億円(前年同期比+8.5%増)、営業利益1.2億円(前年同期は△2.5百万円の赤字)と増収黒字転換となった。ラストワンマイルの売上総利益率は+60.2%(前年同期は+60.8%)、営業利益率は+2.4%(前年は赤字)。

 ラストワンマイルの売上総利益は前年の27.1億円→29.1億円と+2.0億円増加、販管費は前年の27.1億円→27.9億円と+0.8億円の増加にとどまったことにより、差し引きで営業利益が大きく増加した。しかしながら、売上規模をもう少し伸ばさないと、利益率が大きく伸びない構造だ。限界利益率が見えないものの、売上規模が増えれば、営業利益率が一気に増加する可能性がある利益構造と言える。

■ラストワンマイルのストック売上高比率

 ラストワンマイルは不動産企業などのハウスメーカーなどに紹介手数料を支払うことで引越し予定者の情報を入手している。その引越し予定者に対して、「まるっとシリーズ」の電気、ガス、水道などの変更手続きを請け負っている。そのときに各企業に「送客」することで、フローとストックの両方の手数料を得るビジネスモデルをおこなっている。

 現在のラストワンマイルのストック売上比率は45.8%と50%台が見えてきた。このストック売上高比率が増えることにより、安定的に収益を上げることができる。

■プレミアムウォーターとの提携

 宅配水事業を行っているプレミアムウォーターホールディングスは2023年2月、ラストワンマイルに対して公開買付(TOB)を実施して、1株あたり788円で取得。その結果、プレミアムウォーターの持ち株比率は39.7%まで上昇している。

 もともと、ラストワンマイルは株主数が少ない企業であり、一気に需給バランスがかわり、現在は2,000円を超える株価まで上昇している。

■ラストワンマイルの販管費は?

 ラストワンマイルの売上総利益率は約60%。売上規模が上昇すると、売上総利益はどんどん増加することがわかるものの、販管費に含まれる費用が固定費か変動費か判断する必要がある。

 ラストワンマイルの2022年8月期の業績をみると、売上高65.4億円、売上総利益39.7億円、販管費40.0億円、営業損益△32百万円。売上総利益率は+60.7%、販管費比率は61.2%となっている。有価証券報告書に販管費の大口が記載されておりみて見ると、給与手当6.9億円(固定費)、支払手数料17.4億円(変動費)であることがわかる。支払手数料だけを変動費として考えると、実質的な売上総利益率は+34%前後であることが見えてくる。

 2021年8月期には売上高83億円あったものの、営業利益は2.2億円にとどまっており、ラストワンマイルはそれほど利益がでる利益構造ではないだろう。

■ラストワンマイルの株価推移は?

 ラストワンマイルの時価総額は約56億円。実質的にはプレミアムウォーターの子会社になっており、いかに宅配水(家庭用飲料水の宅配)を拡販するかがメインのテーマになっているように見える。

 すでにラストワンマイルの株価は1年前の安値から3倍以上に上昇しており、大手企業の傘下に入ったことでプレミアムが付いた形だ。ただ、株価指標的には割高感があるため、様子見が無難ではないだろうか。

(画像1)ラストワンマイルの株価推移

以 上

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