「BUYMA」のエニグモ、戦略投資により広告費増に伴い営業利益は大幅減!

 海外から個人が売主になれるマーケットプレイス「BUYMA」を運営しているエニグモ。「BUYMA」の会員数は10.5百万人と右肩あがりに伸びているものの、アクティブ会員は2022年1月期の136万人をピークに2023年1月期は125万人と10%程下落。BUYMAの取引高も632億円と前期の676億円から大きく下落している。今後のエニグモの業績と株価の行方はどうなるのか?

マーケットプレイス「BUYMA(バイマ)」展開のエニグモ、年間売上高は70億円突破!(2021年7月4日投稿)

■基本情報(2023年5月2日時点)

  • 株価:422円(10年来高値:1,823円)
  • 時価総額:180億円
  • 予想PER:23.9倍
  • PBR:1.65倍
  • 予想配当利回り:2.36%
  • 自己資本比率:79.7%
  • 会計基準:日本基準
  • 株主数:8,328人(2023年1月31日時点)

■エニグモの業績は?

 エニグモの2023年1月期の売上高は68.7億円(前年比△7.7%減)、営業利益11.4億円(前年比△61.8%減)の減収減益となった。エニグモの売上総利益率は+79.4%(前年は+80.7%)、営業利益率は+16.6%(前年は+39.0%)と売上規模減と販管費増により営業利益率は大幅に悪化した。

 エニグモの売上総利益は前年61.4億円→54.5億円と△6.9億円の悪化、販管費は31.7億円→43.2億円と+11.5億円の増加となり、差し引きで18.4億円の営業利益減となった。

■エニグモの業績悪化の要因は?

 エニグモの業績悪化の要因は、円安による「BUYMA」の割高感やインフレによる需要減が要因とエニグモは理由付けをしている。加えて、販管費が大幅に増えたことが利益減の要因だ。販管費増については、TVCMと人財強化と会社は説明している。

 テレビCMは売上下落による対策的な要素が強く、テレビCMを打っても売上高が前年割れをしていることを考えると、適切な説明とは言えないだろう。広告宣伝費は前年の14.3億円→21.7億円と7.4億円の大幅な増加となっている。また、人件費も12.2億円→15.3億円と+3.1億円の増加となっている。

従業員数の推移をみると、前年の103名→115名と+12名の増加を行っている。しかしながら、3.1億円も販管費が増加していることの説明にはなっていない。

■ネットビジネスで怖い需要の消失!

 エニグモはこれまで海外から個人が「BUYMA」というプラットフォームで販売できるマーケットを構築し、うまく機能してきた。しかしながら、Amazonなどの他のECが充実した商品を販売するようになると、わざわざ「BUYMA」で購入する必要がなくなるかもしれない、という需要消失のリスクがある。

 たとえば、クックパッドが急激にマーケットの存在感を失い、早期退職を募集して事業の縮小化を実施している。ほかにもネットビジネスでは数年前まで絶好調だったものが、いきなり需要が減少してしまうケースがある。

業績悪化のクックパッド(cookpad)、そもそも業績拡大に興味がない?(2022年8月14日投稿)

■エニグモのKPIの整理

 エニグモで問題なのは「BUYMA」のアクティブ会員が136万人→125万人と大きく減少していることだ。それに伴い、総取扱高も676億円→632億円と大きく落ち込んでいる。これが一過性の減少か、ニーズの消失か現時点では見極めがつかない。

 エニグモとしては認知度の向上などテレビCMを打つことで打開しようとしたものの、現時点では上手く作用していない。2022年12月にはパーソナルショッパー(「BUYMA」上の売主)とコラボレーションして企画を実施しているものの、効果はまだまだ出ていない。

■エニグモの財務状況は?

 エニグモの2023年1月31日時点の財務状況をみると、現預金は103億円と豊富な現預金を持っている。いっぽう、有利子負債はゼロで、顧客からの預り金は20.8億円となっており、ネットキャッシュは約80億円となる。

 エニグモのキャッシュフロー計算書をみると、営業CFは△3.2億円のマイナス、投資CFは△7.9億円のマイナス、財務CFも△14.2億円のマイナスとなり、現預金の増減は△25億円の減少となっている。まだまだキャッシュリッチな会社であるものの、25億円の現預金の減少は大きい。

 キャッシュフローの中身をみると、営業CFはやはり利益減と法人税等の支払い△8.5億円が大きく影響している。投資CFは投資有価証券に7.5億円投資した影響が大きい。また、財務CFは自社株買いの△10億円が影響している。

 これまでエニグモは営業CFと投資CFの合算であるフリーキャッシュフローが大きくプラスとなり株価は右肩あがりに上昇してきたものの、現在はフリーキャッシュフローが大きくマイナスになっている。

■エニグモの株価推移は?

 エニグモの時価総額は約180億円。一時は時価総額500億円を超えていたものの、ここ数年で一気に下落。コロナ禍で特需があったと言えるものの、コロナ前の株価上昇前よりも株価がさがっている状況だ。

 今後は業績が回復しても、簡単には株価は急騰しないかもしれない。すでに8,000人以上の株主が保有しており、多くが含み損を抱えている状態で、株価の上昇を抑制する売りがでるだろう。

(画像1)エニグモの株価推移

以 上

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