プリント基板のオーダーメイド(設計、製造、部品実装)をワンストップで提供しているピーバンドットコム。ECサイト「P板.com」を運営しており、従業員33名の少ない人員で事業を回している会社だ。現在、東証一部に上場しているものの、時価総額が約30億円の同社にとってプライム市場に移ることは難しそうだ。ピーバンドットコムの業績と株価の行方はどうなるのか?
■基本情報(2021年9月3日時点)
- 株価:697円(10年来高値:1,839円)
- 時価総額:33億円
- 予想PER:18.8倍
- PBR:2.78倍
- 予想配当利回り:1.14%
- 自己資本比率:80.6%
- 会計基準:日本基準
■ピーバンドットコムの業績は?
ピーバンドットコムの2022年3月期の第一四半期の売上高は4.6億円(前年同期比+1.7%増)、営業利益48百万円(前年同期比+18.2%増)の増収増益となった。ピーバンドットコムの売上総利益率は+34.6%(前年同期は+34.7%)、営業利益率は+10.5%(前年同期は+11.6%)と営業利益率2ケタとなっている。
ピーバンドットコムの時価総額が50億円未満である理由は将来の成長性に疑問点があるからだ。ここ数年、しっかり営業利益は出しているものの、売上規模はそれほど大きな変化をしておらず、年間売上高25億円を突破することができていない。いかに成長率を伸ばすことができるかがピーバンドットコムの株価の行方を左右している。
■ピーバンドットコムのビジネスは?
ピーバンドットコムのビジネスモデルは、ECサイト「P板.com」で集客して、国内外の30社のメーカーに製造を委託するファブレスな事業モデル。受注型の設計・製造モデルで、ピーバンドットコムの棚卸資産はほとんどない(2021年6月末時点で23百万円)。
ピーバンドットコムはこの事業モデルを「GUGENプラットフォーム」と呼び、ワンストップサービスでリジット基盤、フレキシブル基盤、メタル放熱基板などを提供している。ピーバンドットコムが主力にしているプリント基板(緑色のパソコンやスマートフォンの中に入っている基盤)は、モバイル翻訳機、タブレット、デジタルカメラ、スマートフォン、美容機器などで使用されており、これから需要がますます増えていくものと思われる。
これから5Gの時代になり、プリント基板の需要は右肩あがりで増えていきそうであるが、ピーバンドットコムの業績はそれほど伸びていないのはなぜか?ピーバンドットコムは受注型のビジネスモデルを築いたものの、競合他社も少なくない。インターネットを検索すると、「P板.com」と同じようなサイトもいくつかでてくる。
■足元の業績が伸びていない理由は?
いま世の中は電子部品不足である。ピーバンドットコムの需要も高まっているのではないだろうか?プリント基板などに使用するコンデンサなどの電子部品の供給が逼迫しており、ピーバンドットコムの売上も部品不足で遅延していたり、失注していると思われる。
そもそも、プリント基板は利昌工業、住友電工、メイコー、フジクラ、シライ電子工業など数多くのメーカーが製造している。ピーバンドットコムのユーザーの半分は中小企業で、小口案件中心となっていると思われる。大手・中堅企業は自社でプリント基板の設計を行い、自社生産または外注工場(EMS)に製造発注することになる。
このプリント基板のECサイトというビジネスモデルは面白いものの、爆発的に「P板.com」の需要が増える可能性はそれほど高くない。
■ピーバンドットコムの株価の行方は?
ピーバンドットコムは株価指標的には割安だ。しかしながら、競合他社や製品特性を考えると、新製品への参入や新しい仕組みがなければ右肩あがりの業績は現時点ではむずかしい。ただし、しっかり利益を出しており、自己資本比率も高いため、ナンピンで買い集めて、上昇したときに売り抜けるという戦略も面白いかもしれない。
以 上