多角経営でエアトリ経済圏を拡大するエアトリ、投資事業は絶好調!

 オンラインによる旅行事業(Online Travel Agent、OTA)や訪日旅行事業(WiFi事業)、IT関連事業、投資事業などを多角的におこなっているエアトリ(旧エボラブルアジア)。2007年5月設立、従業員数は952名。オンライン旅行会社というイメージだったものの、投資事業が非常に好調で、経営手腕が非常に高い。エアトリの業績と株価の行方は?

■基本情報(2022年9月30日時点)

  • 株価:2,849円(10年来高値:4,595円)
  • 時価総額:631億円
  • 予想PER:34.6倍
  • PBR:7.32倍
  • 予想配当利回り:0.35%
  • 自己資本比率:34.9%
  • 会計基準:IFRS基準
  • 株主数:9,481人(2021年9月30日時点)

■エアトリの業績は?

 エアトリの2022年9月期の第三四半期の売上高は85.5億円(前年同期比△39.8%減)、営業利益17.4億円(前年同期比△43.2%減)の減収減益。セグメント的にはオンライン旅行事業の売上高が大きく減少しているものの、PCR検査関係の事業を切り離した影響と思われる。これについて、決算説明資料を見ても、くわしい解説がなく、投資家としては状況をうまくフォローできないだろう。

 エアトリは旅行事業が厳しいなか、新型コロナウイルス感染対策の一環として、法人顧客向けPCR検査・抗体検査の予約代行サービスを提供。ピカパ化メディカルサービスを活用して、提携検査医療機関に検査を頼むもの。

 エアトリの売上総利益率は+60.0%(前年同期は+39.9%)、営業利益率は+20.4%(前年同期は+21.6%)と大きく変動している。PCR関係の事業がなくなり、事業構造が大きく変化した影響と思われる。

■エアトリの事業内容は?

 エアトリはオンライン旅行事業を基盤に多角経営をおこなっている。エアトリ経済圏という楽天経済圏に似た名称を活用しており、オンライン旅行事業、訪日旅行事業、メディア事業(子会社に、まぐまぐ)、ITオフショア開発事業(子会社に、ハイブリッドテクノロジーズ)、投資事業に分かれる。

 オンライン旅行事業は、いわゆる旅行比較サイト。いわゆる、「じゃらん」「Agoda」「エクスペディア」「一休」「楽天トラベル」などのようなもの。ホテルに予約する必要があり、「エアトリ」でも検索したものの、他のサイトよりも1.5倍くらい高い。企業としては利益が大きく出るものの、ネット検索したらコストの優位性がないことがわかるので、状況をよく知らない人が使っているのかもしれない。ただ、企業としては高収益事業として戦略は間違っていない。

■エアトリは投資会社か!?

 エアトリの事業で注目すべきは投資事業だ。すでに投資したうち、11社が上場している。メンタルヘルステクノロジーズ、ハイブリッドテクノロジーズ、ラストワンマイル、ロボットペイメント、ヘッドウォータース、まぐまぐ、サイバーセキュリティクラウド、AI CROSS、ブランディングテクノロジー、ピアラ、和心。

 ハイブリッドテクノロジーズと、まぐまぐ、は上場関連会社としてエアトリの決算に算入されている。これまで総投資額は34億円、累計79社に投資している。

 エアトリは事業提携も多く、数多くの企業と資本・業務提携をおこなっている。まさにエアトリ経済圏の基盤を確実なモノにするため、経営能力が高い企業。新興企業だけでなく、JALや阪急交通社など老舗企業とも業務提携している。

■エアトリの財務状況は?

 エアトリの2022年6月30日時点のB/Sをみると、現預金は92億円、M&A関連資産(のれん、使用権資産、無形資産など)は約40億円となっている。事業形態として、棚卸資産はほぼない。いっぽう、有利子負債は約65億円ほどとなっており、それほど悪い状況ではない。

 エアトリは投資企業の上場などで利益を得て、将来の上場見込みのある企業に再投資する循環をつづけている。

■エアトリの株価は?

 エアトリの時価総額は約630億円。コロナショックのあった2020年3月は時価総額100億円くらいだったので、現時点でも6倍ほど上場している計算になる。ただ、コロナショック時は新型コロナのリスクがどのようなものか全くわからず、旅行やイベントなどの人と接触のある行動が一切否定された時期であり、将来的な見通しがまったく見えないなか、旅行会社の株を購入する人は非常に少なかっただろう。

 これからはGo toトラベルに続く、全国旅行支援がはじまるため、旅行会社の株価は回復傾向。しかしながら、すでに先回りの資金が入っていて、ここからの業績回復は織り込み済みの可能性がある。むしろ、また新種のコロナが蔓延して、行動自粛になる可能性というかリスクのほうが大きいのではないだろうか。

 エアトリの創業者であり大株主である吉村氏はリユース事業を展開しているBuySell(バイセル)の筆頭株主であり会長。バイセルの時価総額は約900億円とエアトリを超える規模まで上昇している。事業投資については、エアトリの経営陣はきわめて優秀と判断できるだろう。株価の上げ方も熟知している。

出張買取を活用したリユース事業のBuySell Technologies(バイセル)、M&Aで成長!(2022年10月1日投稿)

 

 

 

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする