AI自動翻訳の子会社であるロゼッタを持ち、もともとはロゼッタが上場していたMetaReal(以下、メタリアル)。メタバース・サービス、プロ翻訳サービスのGLOVAなど翻訳関係に力をいれている会社。従業員数は2022年2月末時点で206名。翻訳以外ではVRやXRの開発も行っている。
■基本情報(2023年4月28日時点)
- 株価:1,345円(10年来高値:4,995円)
- 時価総額:143億円
- 予想PER:35.9倍
- PBR:13.16倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:25.9%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:13,273人(2022年2月28日時点)
■メタリアルの業績は?
メタリアルの2023年2月期の売上高は42.9億円(前年比+3.2%増)、営業利5.2億円(前年比+460.6%増)の増収増益。メタリアルの売上総利益率は+64.9%(前年は+63.1%)、営業利益率は+12.0%(前年は+2.2%)と大きく改善している。
メタリアルの前年の売上総利益は26.2億円から27.9億円と+1.7億円の増加。販管費は25.3億円→22.7億円と△2.6億円の減少したことにより、合算して+4.3億円の利益改善となった。メタリアルの販管費の内訳をみると、22.7億円の半分を占める人件費が12.8億円→11.7億円と+1.1億円の削減となっている。そのほかは全般的に削減したため、△2.6億円の削減となった。
■メタリアルの事業内容は?
メタリアルはもともとロゼッタとして上場しており、AI翻訳として有名な企業だ。メタリアルの主力事業はMT事業というAI自動翻訳で、2023年2月は売上高29.1億円(前年は29.3億円)、営業利益6.3億円(前年は3.8億円)となっている。
ロゼッタの収益モデルはAIを活用した機械翻訳で、インターネットを通じてサービスを提供している。主なサービスは超高精度AI機械翻訳「T-400」で収益モデルとしては初期導入費と月額利用料によるもの。よって、メタリアルの事業基盤のメインであるAI翻訳はサブスクリプション型のストック型収益であり、安定して収益をあげることができるのが特徴だ。
最近ではDeepLというAI機械翻訳のサービスが人気であり、ロゼッタよりもDeepLを採用する企業のほうが多いのではないだろうか?
■人間翻訳のHT事業とは?
メタリアルの主力事業は機械翻訳のMT事業(ロゼッタ)であるものの、HT事業として人間翻訳でも事業を展開している。人間翻訳は子会社のGLOVA(グローヴァ)がメインだ。HT事業の売上高は13.7億円、営業利益は2.7億円と利益をだしている。
メタリアルで事業の足を引っ張っているのはメタバース事業だ。売上高は10百万円、営業損益は△4.3億円の赤字となっている。
■生成AIのMetareal AIプロジェクトとは?
メタリアルは現状の翻訳事業(MT事業とHT事業)とメタバース事業に時間的な差があることを認識しており、その間を埋める事業としてMetareal AIというプロジェクトを立ち上げている。
いわゆるChat GPT(Generative Pre-trained Transformer、生成可能な事前学習済み変換器)を活用したサービスだ。顧客企業向けの専用のChatGPTを開発して収益を上げる予定だ。ただ、同じようなサービスを提供する企業も多く、メタリアルに競争力があるか疑問点は残る。
■メタリアルの財務状況は?
メタリアルの2023年2月末時点の財務状況をみると、現預金は25億円、ソフトウェア6.5億円が大きな資産となっている。いっぽう、有利子負債は17億円、前受金(ストック収益の前受)は8.6億円となっている。財務的には健全であるものの、前受金が前年の10.0億円→8.6億円と△1.4億円の減少となっていることが気になる。将来的な収益が減っているのではないだろうか。
また、メタリアルの利益剰余金をみると、△14.5億円のマイナスとなっており、これまで赤字を重ねてきたことがわかる。2023年2月期もP/Lをみると営業利益は5.2億円のプラスであるものの、最終的な当期利益は29百万円と非常に小さく、ほとんど純資産は増えていない。
キャッシュフロー計算書をみると、営業CFは+5.1億円、投資CFは△1.6億円、財務CFは△2.2億円となり、現預金は+1.3億円の増加にとどまる。つまり、それほどキャッシュを生み出すことはできていない。
■メタリアルの株価推移は?
メタリアルの時価総額は約140億円。2023年2月期の営業利益が大きく増加しているので期待をもって業績や決算資料をみたものの、キャッシュを稼ぐ構造になっておらず、いまだストック収益の機械翻訳に頼っている構造は変わらない。過去の有利子負債の返済も重く、当面は配当を出すこともできないだろう。当面は様子見が妥当ではないだろうか。
以 上