ウェブやSNSの「キーワード解析」という分野で事業展開しているCINC。2014年4月設立、従業員数は87名。2021年10月に東証マザーズに上場。デジタルマーケティングという分野で日本語キーワードのビッグデータと機械学習技術を組み合わせた調査・分析プラットフォームを展開しているIT企業だ。
■基本情報(2022年9月16日時点)
- 株価:1,519円(10年来高値:4,120円)
- 時価総額:51億円
- 予想PER:34倍
- PBR:3.55倍
- 予想配当利回り:0%
- 自己資本比率:74.6%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:2,415人(2021年10月31日時点)
■CINCの業績は?
CINCの2022年10月期の第三四半期の売上高は13.2億円(前年同期比+41.6%増)、営業利益2.1億円(前年同期比+30.0%増)の増収増益。CINCの売上総利益率は+72.4%(前年は+71.1%)、営業利益率は+16.1%(前年は+17.6%)と高い水準となっている。
■CINCの事業内容は?ソリューション事業とは?
CINCはソリューション事業とアナリティクス事業の2つにセグメントを分けている。ソリューション事業は、「Keywordmap(キーワードマップ)」というSaaS型(クラウド型のサブスクリプションモデル)のサービスを提供している。
「Keywordmap」は月額固定料金。日本語のキーワードを分析して、顧客のウェブサイトや競合他社のSNSの動向を分析するツールだ。Googleの検索エンジンがビジネスの重要な成功のカギになっており、その攻略をするためのツールとしては重宝される存在だ。ニーズの高いキーワードを掘り当てて、そのキーワードを中心としたコンテンツを作成していく道具を与えるもの。
また、「Keywordmap for SNS」はTwitterの運用・調査プラットフォームとして提供している。ビッグデータからユーザーの反響を把握し、その反響をSNS(Twitter)に展開していくもの。いずれは、Instagram(インスタグラム)など他のSNSにも横展開されていくものと思われる。
なお、ソリューション事業の顧客数は508社(Keywordmap:385社、SNS:123社、両方導入:26社)。ソリューション事業のストック売上高比率は97%を維持しているものの、年換算売上高は現時点で8.9億円にとどまる。つまり、まだ規模がかなり小さい。
■CINCのアナリティクス事業とは?
CINCのアナリティクス事業は「Keywordmap」シリーズを活用した顧客へのコンサルティング事業だ。たしかに顧客にツールを提供しても、必ずしも使いこなせるわけではないので「先生」としてのコンサルタントが必要になる。
顧客対象としては、オウンドメディア(自社メディア)、Web広告の運用など幅広い業界へのアプローチが可能だ。Twitterだけでなく、YouTubeは2022年5月に「Vid Analytics」という視聴ニーズ分析ツールを投入している。
「Keywordmap」シリーズの導入実績としては、広告代理店向けが36%(NTT DATE、クラウドサーカスなど)、事業会社向けが64%(KDDI、DODA、Retty、ウォンテッドリーなど)。
■セグメント別の損益は?
CINCのソリューション事業の売上高は6.5億円、経常利益1.5億円(前年同期比+70.0%増)。アナリティクス事業は売上高6.9億円、経常利益65百万円(前年同期比△15.0%減)。
セグメント別にみると、アナリティクス事業は売上高は伸びているものの、経常利益が前年割れしている点が気になる。また、アナリティクス事業はストック型の収益モデルではないため、CINCの弱点としては、確実に売上高が積み上がっていく事業モデルではない点だ。ITサービス事業では、SaaS型のストック型ビジネスは高株価を維持しやすいものの、フロー型の事業は高株価を維持しにくい現状がある。
■CINCの財務状況は?
CINCは東証マザーズ上場時に9.3億円の公募増資を実施。なお、上場初値の時価総額は131億円だったため、初値で買った株主は半値以下まで株価がさがっている状況だ。
CINCの2022年7月31日時点の現預金は14.8億円、有形固定資産はほとんどなく、在庫も保有する必要がない。いっぽう、有利子負債は約2億円となっている。すでに利益剰余金がプラスのため、事業立ち上げてから利益の蓄積がある状況だ。
■CINCの株価推移は?
CINCの時価総額は約50億円。しっかり利益がでているIT企業のなかでは極めて安い株価で放置されている。デジタルマーケティングと将来的に広がりが期待できる領域であり、将来が楽しみな銘柄のひとつ。年平均成長率が+20%を超えていくならば投資する価値はありそうな株価だと思われる。
いっぽう、心配な点はフロー型事業のアナリティクス事業が落ち込むリスクがある点に注意が必要だ。事業価値としてはSaaS型の「Keywordmap」シリーズを展開しているソリューション事業の事業規模に注視すべきだ。
たとえば、デジタルマーケティングの分野ではクロス・マーケティンググループが売上高249億円、営業利益25億円で時価総額180億円。また、分野は少し異なるが顧客体験をデジタルで支援するプレイドも評価は高い。プレイドの業績予想は売上高72億円、営業損益△12.1億円、時価総額は230億円。
デジタルマーケティング支援のクロス・マーケティンググループ、最高益更新つづく!(2022年8月20日投稿)
CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」展開のプレイド、グーグル出資の期待ベンチャー企業!(2021年5月5日投稿)
以 上