1~5億円規模のM&Aを重ねながらデジタルマーケティングやデータ活用などを中心に事業を伸ばしているクロス・マーケティンググループ(以下、クロスマーケティング)。DX推進の世の中の後押しを受けて、需要が拡大しているデジタル活用領域。クロスマーケティングもチャンスが多いなか、しっかり顧客の需要をつかんでいる。今後の業績と株価の行方は?
■基本情報(2022年8月19日時点)
- 株価:908円(10年来高値:1,330円)
- 時価総額:181億円
- 予想PER:9.9倍
- PBR:3.11倍
- 予想配当利回り:1.32%
- 自己資本比率:43.9%
- 会計基準:日本基準
- 株主数:3,142人(2021年6月30日時点)
■クロスマーケティングの業績は?
クロスマーケティングの2022年6月期の売上高は249億円(前年比+31%増)、営業利益25.2億円(前年比+38%増)の増収増益。クロスマーケティングの売上総利益率は+41.5%(前年は+40.5%)、営業利益率は+10.1%(前年は+9.6%)と改善傾向となった。
クロスマーケティングの売上総利益は103.4億円(前年は77億円)で、販売管理費は78.2億円(前年は58.8億円)のため、売上総利益の伸びのほうが大きいため、+7億円の増益となった。ようやく営業利益率が+10%を超え、収益率の高い利益モデルであることが見えてきた。M&Aを活用した規模拡大がうまく作用しているケースだ。
■クロスマーケティングの事業内容は?
クロスマーケティングは①デジタルマーケティング(売上高100億円、利益6.5億円)、②データマーケティング(売上高84億円、利益24.7億円)、③インサイト(売上高64億円、利益12.7億円)の3つのセグメントに分かれている。利益面では全社費用としての調整額として△18.7億円が計上される。一番規模の大きいデジタルマーケティングは実質的には赤字かもしれないが、その他の事業で利益を稼いでいる構造だ。
クロスマーケティングの事業内容は、マクロミルなどのネット調査会社と同じネット調査など顧客企業のマーケティング支援をしている。また、顧客のマーケティング支援としてコンサルティングを提供している。生活者のデータを収集し、分析・理解し、顧客支援をするサイクルで利益を生み出しているのがクロスマーケティングだ。ネット上のアンケート対象者(パネル)は752万人を保有する。
ただ、これだけだとコアとなる事業内容がよくわからずボンヤリしている。顧客のマーケティング支援のシステムの受託開発や運用なども行っている。
堅調に伸びるマクロミルの業績、営業利益率10%超を継続!(2022年8月17日投稿)
■クロスマーケティングをより知る!
クロスマーケティングは2003年4月に東京都で創業。クロスマーケティングの従業員数は連結ベースで1,420名。当初からリサーチ・調査関連の事業を行っており、VOYAGE GROUPと業務・資本提携をしている。簡易集計アプリケーション「REAL CROSS」という調査集計ソフトを開発・提供している。
2008年10月に東証マザーズに上場。ここからM&Aを活用して各社の事業や子会社を増やしている。ネットエイジアと資本業務提携、ネットマイルと業務提携、イーシーリサーチの子会社化、サイボウズ・メディアアンドテクノロジーから事業譲受、楽天リサーチと業務提携、Japan Publicity,Inc.からマーケティング事業譲受、ドゥ・ハウス子会社化、スキップ子会社化などM&Aがはげしい。
■クロスマーケティングの財務状況は?
クロスマーケティングの現預金は55億円、有利子負債は28億円と健全だ。IT・情報通信関係の領域で、しかも、設備投資がほとんど不要なビジネスモデルをしており、有形・無形の固定資産もそれほど多くない。そのため、営業CFがプラスで設備投資がなく、キャッシュがしっかり計上される仕組み。
特徴的なのは「のれん」も3.8億円しか計上されておらず、違和感のある財務諸表ではないことだ。顧客にとってネット調査などマーケティングを専門家に委託することが一般的で、かつ、委託料が適正かどうか見えないのかもしれない。言い換えると、業界的に付加価値が高いのだろう。同業他社のマクロミル、インテージHDなども利益率は高い。クロスマーケティングは規模はまだ小さいながらも高い利益率を誇っているのが特徴だ。
■クロスマーケティングの株価は?
クロスマーケティングの時価総額は約180億円。2020年3月のコロナショックで株価が大きく下がったときは1株あたり210円、時価総額は約40億円前後まで下落。そこから株価は4倍以上も上昇している。一時、6倍くらいまで上昇している。
クロスマーケティングの2023年6月期の業績予想は売上高280億円、営業利益30億円、当期純利益18億円、1株あたり当期純利益90円を計画。この成長がつづくことを株価が織り込むと、予想PER20~30倍で時価総額は300~500億円くらいまで上昇しておかしくない。同業他社のマクロミル(時価総額450億円)、インテージHD(時価総額600億円)を意識してもおかしくないかもしれない。
以 上